八雲くんと夏目くん その2。
八雲くんと夏目くん その2。
八雲 「この前の小説を改稿したから読んでくれ!」
【夏目くん、またすごい勢いで原稿をめくる。】
夏目くん「おい、八雲」
八雲 「早。もう読んだの?」
夏目くん「なんでヒロインがさらに増殖してるんだよ。倍の12人ってなんだ。おまえは一体何がしたいんだ」
八雲 「おまえに書き分けができてないって言われたから、一人ひとり細かい設定を作っていたらどんどん違う性格の女の子ができて、最終的にはこうなった!」
夏目くん「なったじゃねえよ。減らすならともかく増やしてどうする。この三つ子設定も意味がわからん。必要性がどう考えてもわからん」
八雲 「考えるんじゃない! 感じろ!」
夏目くん「おまえはもっと考えろ。いいか、これだけヒロインが増えるってことは、一人ひとりに焦点をあてて話を進めるのは至極困難だ。全員均等に回るまでどれだけ時間がかかると思ってるんだよ」
八雲 「大丈夫だよ。2、3人セットで話を進めたらそんなにかからないよ!」
夏目くん「ヒロインなのになんでそんな雑な扱いなんだよ。それじゃその辺のクラスメイトの一人と変わらねえだろうが」
八雲 「じゃあどうしろっていうんだよ!」
夏目くん「減らせっつてんだろ」
八雲 「ええ~? せっかく考えたのに?」
夏目くん「おまえの文才じゃこのどれも似たり寄ったりのキャラの書き分けは無理だ」
八雲 「まだ書き分けできてない?」
夏目くん「できていないどころか、色々混ざっててわかんねぇ」
八雲 「おかしいな。俺にはわかるのに」
夏目くん「おまえに分かっても他人が分からなければ意味ないだろ。あと、ここの台詞、サラが主人公と二人きりで喋ってんのに、なんで主人公は違うヒロインの名前で呼びかけてんだよ」
八雲 「あれ? 間違えちゃった」
夏目くん「おまえも分かってねえじゃねえか」
八雲 「でもさ、もうちょっと直せばきっとよくなると思わない?」
夏目くん「そのポジティブさがどこからくるのか俺にはさっぱりわからん」
八雲 「じゃあ、やっぱり6人かなぁ」
夏目くん「だから、もっと減らせって」
八雲 「無理だよ! どの子にも深い思い入れがあるんだよ! 元の人数にするのだって断腸の思いなのに!」
夏目くん「ヒロインの名前間違えてたけどな」
八雲 「仕方ない。また整理するとするよ」
夏目くん「そうしろ。それと八雲」
八雲 「なんだよ」
夏目くん「毎回、印刷して持ってこなくてもデータを送ってくれたらいいぞ。紙がもったいない」
八雲 「! 分かってるけどっ! 印刷したほうがなんかこう「書いた!」って気持ちになるんだよ!!」
八雲くんは形にこだわる子だった。