助けます
「僕が運ぶ。僕が運ぶよ。」
「えっ。」
とたんに僕に視線が集中する。
「このまま黒崎さんをここにおいてくわけにはいかないし。ポイントまでだけなら僕が運んでいくよ。だから、黒崎さんを僕の背中に乗せて。」
「・・・。」
(鳥峨家君・・・。)
「ねぇ、黒崎さん。それでもいい。」
僕はそう聞いた。
「・・・うん。」
「じゃあ、まずは黒崎さんをお前の背中に乗せなきゃな。」
僕は黒崎さんの前に座り、佐奈蕗たちが手伝って、黒崎さんを僕の背中に乗せた。乗った瞬間に黒崎さんの体重がのしかかった。さっき脅かされて、足だけじゃなくていろんなところに力が入らないのかもしれない。それか、僕に力が無さすぎるからか。まぁ体重は女子クラスに無い方だからなぁ・・・。
「よしっ。」
力を入れて、立ち上がる。ちょっとよろけたけど、そこは何とか踏ん張る。
「黒崎さん。今ここがどこだかわかる。」
篠原が聞いた。
「・・・。」
黒崎さんからの回答は何もない。恐怖で記憶も吹っ飛んだのだろうか。よっぽど怖かったんだろうな。無理して我慢していたんだろう。
「えーと。正しい道はこっちだから。」
薗田さんがそう言って先頭に立った。
「あっちかぁ。で、さっき6番目は通り過ぎたから、次は7番目。8番目に先生たちがいるって言ってたから、そこまで行けば大丈夫だ。」
黒崎さんも背負ってるし、山の中だから、僕があたらない位置にある枝とかにも気をつけなければいけない。それに、僕一人なら、石がゴツゴツしているところも通れるけど、今はそういうわけにもいかない。
歩いていると、黒崎さんは僕の胸あたりで組んでいる手を強く絞めるような動作をした。
「・・・どうしたの。」
と聞いてみた。
「・・・あ・・・ありがとう。」
黒崎さんは言いづらそうに僕の耳元でささやいた。
「優しいんだね。」
「・・・。」
(鳥峨家君。カッコいいよ・・・。それよりも、恥ずかしいところ見せちゃったなぁ・・・。)
「鳥峨家君。今日あったこと。最初のところだけでいいから忘れてくれない。」
「えっ。」
「あっ。なんでもない。ごめんね、わけわかんないこと言っちゃって。」
「・・・。」
忘れてほしくても忘れられないよ。こうやって黒崎さんが僕の背中にいる時点で僕だって信じられていない。夢じゃないかと思っている。どうにかしなくちゃという一心で、こういう行動に出たけど、これで本当によかったんだろうか。そして、僕たちは先生のいるポイントに着いた。そこで、先生とバトンタッチして、僕たちはすぐ後を追って、林間学校に帰ったのだ。
こんな感じでいいのかなぁ・・・。