隠しても無駄
始業式の後に僕の席がその子よりも後ろだというのは分かった。それで、全員が帰った後名簿を見て、その子の名前を確認した。
「黒崎梓・・・へぇ・・・。そういう名前なんだ・・・。」
「梓のことそんなに気になる。」
声を掛けられて、あわてた。まさか、まだ帰っていない人がいる・・・。えっ。
「き・・・君は。」
「薗田安希。図星でしょ。あたしの前でウソを隠そうとしてもできないってことはまず最初に覚えておきなさい。」
「・・・。」
「なんでもお見通しなんだからね。鳥峨家君が梓に一目ぼれしたってことも。」
(えっ。そんなことまで。いったい薗田さんはどのぐらいの子とお見通しなのだろう。まさか、僕が黒崎さんに知られたくないと思っていることまでお見通しなのだろうか・・・。)
「そこまで心配しなくていいって。梓に話すわけじゃないから。」
「えっ。」
「今、僕の秘密も知ってるんじゃないかって思ったでしょ。」
「・・・。」
あたってる。なんなんだよ。まさか、この人のことか。記号問題百発百中の勘の鋭い女子。女子は勘がいいってよく言うけど、薗田さんは異常・・・。いや、ふつうなのか・・・。
「・・・ねぇ、薗田さんってエスパーなの。」
「エスパー・・・。かもね。まぁ、少なくとも頭が悪いってことにしといてくれていいけど・・・。話が脱線しちゃったけど、梓のことそんなに気になるなら、ちょっとだけ教えてあげようか。」
「いいよ。別に。」
「でも気になる。」
「・・・。」
あたっていすぎて怖いぞ。
「少しぐらい話してあげるけど・・・。」
「でも、黒崎さんだって聞かれたくないことっていうのもあるんじゃないかなぁ・・・。男子全員に聞かれたくないことだってあるだろうし・・・。そんなこといくら本人からじゃなくても聞けないよ。」
「あっそ。じゃあ、一つだけ。今まで梓は人のこと好きになったことないのよ。陰じゃモテたりしてるんだけど、そういうこと全部断るタイプだから。」
「・・・。」
「まぁ、頑張れば。あたしはうまくいくと思うし。」
「どうして。」
「鳥峨家君人がいいから。」
そう言われただけだった。ていうか合ってそんなに経ってないのに僕のこと結構よく分かる人だなぁ・・・。薗田さんの知っている範囲というものが気になった。
帰り道僕は薗田さんの言ったことが気になった。頭の中は黒崎さんの顔と薗田さんの言葉で埋め尽くされていた。なんでだ。黒崎さんって聞く限り、恋愛には興味なさそうだし、うまくいくとは思えない。しかし、薗田さんはうまくいくのではないかと思っている。いったいなんでそう思えるんだろう。今考えても仕方のないことかもしれない。答えが出るのはいつになるのだろう・・・。
何ですかこの能力。