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キライ姫  作者: たまねぎ
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過去の夢みりゃ汗がだらだら

飲酒・喫煙は20歳になってからですよ!あったりまえじゃないですか~☆ ヤベ(^_^;)

此処はどこだっけ?


随分懐かしい…あっ、前世で住んでた家だ!


誰か居る?


私だ私。


頬杖をついてぼんやりしてる…泣いてる。


呑んでるのは大切にとっといたワイン。


盛大に披露宴なんてとても出来ないけど、結婚式の後友達やお世話になった人達をよんで小さな宴会でもしようと思ってたから、その時にみんなに振る舞おうと思ってたやつだ。



二人の門出の為のワインは、私の心の痛みを紛らわすのに使った。


今の私と同じ18歳。


打ちひしがれてお酒を呑んでる。


端から見れば本人が思っていたより悲惨だよねコレ。


あんなアホの代わりなんていくらでもいるでしょ?


元気だせよ私!


おもむろに立ち上がった“私”が戸棚を探っている。


干し肉なら左の引き出しに……ってヤバい!


“私”の手にはあの首飾り。


駄目だって!早く暖炉にでもなげこんじゃえ!


待って!駄目だって!!!


外に出ちゃ駄目!魔物がっ!!


“私”に伸ばした私の手は“私”の体をすり抜ける。


“私”を追い越した私に降り注ぐ光。


外は今、夜の筈なのにこの光は?


そうだ今は夕暮れ、この光は私達を茜色に染める。


私達…“私”と彼。


私に背を向ける彼に向かい合っているのは“私”。


幸せそうに微笑んでる。


首飾りをプレゼントされて、嬉しかつた。


親の残した借金を返すために働き続ける彼が“私”の為に選んだ贈り物。


あの日夕陽に染まる彼が愛おしくて。


そうだ“私”は幸福だった。


そうだよね最後はムカつく振られ方したけど、彼は私を大切にしてくれてた。


男女の気持ちなんて変わる事はよくある。


せめてちゃんと別れ話ぐらいしてくれたら。


それなのにあんな…。


あんな…………?


「魔王を倒した英雄にはこれから王としてこの国を治めて頂きたい。アナタも一国民としてそう思うでしょ?」


金貨の詰まった皮袋を差し出してオッサンが言う。


立ち尽くす“私”の後ろ姿。


オッサン!もう少し言い方ってもんがあんだろうがぁ!!


宰相だか何だか知らねーけど、花嫁衣装縫いながら恋人の無事な帰りを待ってた“私”にいきなりぶつける話じゃねえだろ!


うちのクールべの方があんたよりよっぽどそういう事は上手くやるよ!


クールべの爪の垢煎じて飲め!


第一、いい歳したオッサンが人の別れ話にしゃしゃり出てくんじゃねえ!


別れ話ぐらい本人にさせんかい!


ご本人様はオッサンの後ろで顔を背けて立ってる。


腕に絡み付くのは王女様。


巨乳を彼の腕に押し付けてる。


あんたが巨乳好きとは知らなかったよ!


あ~そお!乳っすか!やっぱ乳っすか?

そんな男とっかえひっかえしてるって噂の頭と尻の軽そうな女でも乳さえデカけりゃ万事解決っすね!


なんとその尻軽女とくっ付けばこの国の王様になれちゃいます!


めでてぇメデてぇよ!!!


去って行く“私”は歯を食いしばって涙をこらえてる。


あ~あ…右足と右手同時に出ちゃってるよ。


あんたらコレ[人]としてどうなの?


特にテメェーだ!


別れ話も他人任せで他の女とイチャツクのに夢中って?!



ぶん殴ってやろうと彼を見た。


あれ…?なんでそんな表情してんの?


えっ?えっ?えっ?


あれ?


《モウ、オワッタコトデショ》


えっ?確かにそうだけど、でもコレ…。


《カレハキミヲステテ、キミハカレヲミカギッタ》


まあ…、見限ったね。


《コレハカコ。スギサッタジカン。モウキミハ“カノジョ”ジャナイ》


[過去]が消えて闇が広がる。


闇が[過去]を追い払ったようにもう何も見えない。


《モウ、イラナイデショ?》


そうだよ、もう立場も名前も違う。


あれ、そういえば“私”の名前何だっけ?


《オモイダスヒツヨウハナイ。ヒツヨウナノハ、イマノナマエダケ》


今?今の名前は…エラータ。


《ソウ、キミハ“エラータ”。ダイジョウブ、モウカナシマナクテイイ》


悲しまなくていい?そうだよもう終わった事。




目を開ければ私を見下ろすクールべの顔。



「うなされてましたよ」


辺りは薄暗い、そりゃそうだ天蓋の中だから……って!?


「貴様、うら若き乙女の寝室に何当然のように入って来てるんだ」


私が横たわる寝台にクールべは腰掛けている。


自国の王女の寝室に宰相職についてるとは言え、男が夜中に勝手に入って来るとか普通あり得んだろ!!!


「偶々部屋の前を通ったらうなされてる声が聞こえたから様子を見に来てあげたんですよ」


そんな時は普通侍女にでも知らせて様子見させるでしょ!


なんで自分で見に来るの?


部屋の扉の前に護衛の騎士だって立ってるよね?


何で着替えの時といいスルスル通しちゃうの?


普通止めない?


「なに意識しちゃってるんですか、自意識過剰ですね」


そういう問題じゃないでしょ!


「子供の時から何回もあったでしょこんな事」


「確かに…あったけど…」


子供の時から私の部屋の隣には侍女が待機してるけど、怖い夢みて泣いてると様子見にくるのって何時もこのオッサンだったな、なんで?


「随分寝汗かいてますね」


ホントだ寝間着が肌に張り付いて気持ち悪い。


着替えの寝間着と乾いた布をクールべが差し出す。


気の付くオッサンだ。


「こっち見ないでよ!」


「頼まれたって見ませんよ」


汗を吸った寝間着を脱いで布で体を拭く。


顔までビショビショだよ!


「もうイイですか?」


「振り返りながら訊くな!今ちょっと見ただろ!」


パンツをちょっと見た筈のオッサンは平然としてる。


「見てませんよ。早くコレ飲んで寝て下さい」


クールべの手にはカップが握られている。


あれ?着替えもそれもいつの間に用意したの?


まあいいや…。


コクンと飲んだそれはほんのり冷たくて果物の爽やかな香りが口の中で広がって、胸の奥にあった硬くて重い何かをするんと溶かして消した。


ふぅ~、これで嫌な夢をもう見ないで眠れそうだ。


あれ?嫌な夢ってなんだっけ?


ああそうだった!手切れ金を渡された時の夢だった!


ムカつくオッサンだった、アイツの子孫って今何してんだろ?


調べてイヤミのひとつでも言ってやろ!


横たわった敷布は取り替えたみたいにサラサラで快適だった。


「おやすみなさい。良い夢を」


こんな時だけは何時もクールべの声が優しく聴こえる。


「おやすみ」


部屋を出て行くクールべを薄目を開けて見ていたら、ふと気付いたんだけど…。


…まさか………私とクールべってデキテルと思われてないだろうね…?


まさか…だからいつでも部屋に入って来るの誰も止めないんじゃ?


明日絶対確かめなきゃ!!!



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