甘酸っぱいのはイヤぁぁぁぁぁぁ!!!
ぞわんゾワンぞわん、ぞわ~~~ん。
この感覚!
この感覚は……大好物スブュータァ(東方の国の料理)を食べてる時、入ってるパイリの実をうっかり口に入れちゃった時に感じる嫌悪感と同じだ!
ほんのり酸っぱくて素揚げした肉や野菜がゴロンゴロン入ってるその料理を、真っ白でツヤツヤのココンメの実を蒸したヤツに“どり~~ん”とかけてハフハフ食べるのがめっちゃ美味―いのだが、問題点が有る。
その料理に入れるパイリの実が甘いのだ!
酸っぱ辛いスブュータァは美味いが、温もったパイリの実は不味いんだよ!
料理長に入れるなって言っても「肉を柔らかくする効果があるから」って聞きやしない!!
入れる必要が有るならしょうがないって父上が放置するから毎回入ってるし、最近切り方が大きくなってきた!
パイリの実だけ残すと侍女達に好き嫌いは駄目って怒られるし、無視するとクールべに告げ口される。
何が「食べ物を粗末にするなんて貴き身分の方がされる事ではありません」だよ!
クールべの屋敷の料理人、スブュータァにパイリの実入れないじゃん!!
パイリの実はそれ単体でキンキンに冷やして厚切りにして食べるべきだよ!
…話がそれたが兎に角、私を食い入るように見つめてる目の前の王子に対して体の奥底から嫌悪感が湧いてくる。
嫌な事はサッサと済まそう。
最初に別の皿に集めて冷ましておいて、一気に口に放り込み水で流し込むのが私のやり方。
「ジーニアス様、初めましてエラータと申します。我が国にようこそおいで下さいました」
「……初めましてジーニアスと申します。…美しい名だ…エラータとお呼びしても良いでしょうか?私の事はジーニアスと読んで下さい」
美しい名?そ~か~?物語の女主人公を苛める嫌な女の名前っぽくない?
まあいいや、サッサと終わらせよ。
「もちろんですわ。ぜひエラータとお呼び下さい。どうか滞在中はごゆるりとお寛ぎ下さいね、ジーニアス。では父上お邪魔を致しました。御前失礼致します」
ピュアでエレガントで儚く可憐な(つもりの)笑顔でその場を切り抜けた私は優雅な(つもりの)一礼をして部屋を出ようとした。
突然、二の腕を凄い力で掴まれ後ろに倒れそうになる。
なっ何?何でジーニアス王子が私の腕掴んでるの?
「自国からの旅でずっと馬車に乗っていたもので、外の空気が吸いたいのです。城の庭を案内して頂けませんか?」
食い込んでいた指の力を抜いてジーニアス王子が微笑む。
その微笑みは怖いぐらいに綺麗なんだけど、至宝の輝きの瞳と私を捕らえたまま離れ無い彼の手が、………もっと怖い。
因みに自分はあれにアレを入れない派です。




