時の流れは絶えずして、わりと残酷
わかりにくかったかもしれませんが、前回の時点で主人公は成長してます。
お風呂で汗を流した私は鏡の前で侍女に髪を乾かしてもらっている。
鏡に映った18歳の私を見詰める。
我ながら育ったよね~。
18歳…前世で私が死んだ歳だ。
前世でのその歳の私は、両親と死に別れて天涯孤独で、男に捨てられ魔物に殺されて…可哀想すぎる。
ああ、思えば今の私って幸せだよね。
王族に生まれて多少不自由な事は有るけど、食べるのに困らずフカフカのベッドで眠れてそれに私に愛情を持ってくれてる家族が居る。
そして今の私はかなりの美少女だよ!勝ったね!人生勝ったね!
「いや、胸が育たなかったのがわりと負けですよ」
鏡に横から映り込んできたクールべが何時ものように駄目出しする。
「乙女心を読むんじゃねぇ!」
「乙女はそんな風に鏡見ながら勝ち誇った顔しません」
まったくこのオッサンは人にダメ出しする為に、湯上がりでくつろいでる所にまで押しかけ……ってちょっと待て!!!
「貴様、自国の王女が下着姿で居る部屋に入って来るとか、いくら何でもイカンだろ!」
そう私は今パンイチではないがキャミソールと短いペチコート姿。
殿方には決してお見せ出来ない格好だよ!
「何をいってるやら。下着姿どころかあなたのすっぽんぽんだって何回も見てるでしょうが」
「それは子供の時だろ!」
呆れ顔で溜め息をつくクールべに怒鳴ったところで平然としている。
「何度もおねしょの始末までした人の下着姿なんていまさら恥じらえないですよ」
実の父親だって私の着替え中は部屋に入ってこないってのにこのオッサンは!
「おねしょしたって侍女にバレたら怒られるからって夜遅くまで仕事してる私の所に来て…まったく何回あなたのおねしょパンツ洗わされたと思ってるんです?洗ってる横であなた下半身丸出しで歌を歌って…」
ぐぅ…うっすら覚えてる。
昔はこのオッサンの事優しいお兄さんだと思って懐いてたからなぁ。
「わかった、もういいから…」
「サッサと新しいパンツはけって言ってるのに聞かないから次の日お腹こわして、庭で遊んでる時トイレまで保たなくて野○を…」
「すみませんでした!どうか着替えるの見てて下さい!!」
見たきゃいくらでも見ろ!
「ああそれは駄目ですよ!それじゃ無くて薄緑のヤツの方が…」
なんでこのオッサンは私の着るドレスにまで口を出し始めたのか?
「せっかく作ったのに着ないと勿体ないでしょうが」
「ソレあなたに似合わないんですよ。だからあの紫の生地の方が良いって言ったでしょ!好きな色と似合う色は違うんだから」
この国の宰相なんて要職についているこの男、中身はただのオカン?
「たかが従兄弟に会うだけでなんで其処までめかし込む必要があるんだよ?」
文句を垂れる私にクールべはイヤミったらしく片眉を上げてみせる。
腹は立つけどイケメンだからこういう表情が様なるんだよねこのオッサン。
「血の繋がりが有るとはいえ隣国の世継ぎの君ですからね。それに隣国の王は最近病がちで近々退位されるんじゃないかって噂が流れてます。今は友好関係にある国ですけど新王の意向でその関係も変わらないとは言えないです」
わっわかってるよ!
だからちょっとでも好印象持ってもらって今の内から仲良くしとけってんでしょ!
結局クールべの選んだドレスを着た私はオッサンに髪を結われ(侍女がやろうとしたら駄目出ししまくった挙げ句、「ああもう、いいです!私がやります!」と本当にやり始めた《隠し芸》)、従兄弟の王子が父達と会っている部屋に追い立てられた。
次回アイツが登場!