《番外編》勇者様の捨てたもの (Ⅲ)
シリアス&ネタバレ注意!
自分に“勇者”になる資格があるのだと知った時、一筋の光明を見た心地がした。
私を導く光は既に優しく降り注いでいたのに。
私は神が私に与えた聖なる力を捨て“勇者”になった。
捨てしまったのだ!彼女が尊いと言った力を!
私は寝台に投げ出していた腕を上げ自分の手を見た。
かって私は癒やしの力を持っていた。
この手のひらから生み出される光が傷を直し病を癒やした。
その力にどれほどの価値が有るというのか?
私はそう考えていた。
だから交換したのだ、秘技をもちいて破壊の力に。
小さな擦り傷を直す程度、止まらない咳を止める程度の力は思いのままに物を切り裂き、他者の命を簡単に奪う大きな力に変わった。
その圧倒的な変化に私は有頂天になった。
そして傲慢になった。
自分の欲の為に他者を傷付ける事を恥とし、傍らに静かに寄り添う幸福にただ満足する価値観を捨て去った。
魔王討伐の旅は魔王を倒す事が目的では無く、倒そうとしたと対面を整える言い訳の為に送り出されたのだと気付いても、無責任な思惑を超えて成功し帰還してみせ鼻を明かしてやると豪語できるほどに。
旅立つ前から感じとった違和感の正体を私は早々に気付いた。
“旅の仲間”は私を含めて四人。
魔法術士のキャサリン、
女司祭のエリー、
剣士のディオナル、
そして私、
余りに少ないその人数。
距離を置きついてくる後方支援の小隊は、我々の支援が目的なのでは無く逃げ出さないよう監視するために付いて来るのだと気付いたのは“仲間”の実力が無い事に気付いたのと同時だった。




