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キライ姫  作者: たまねぎ
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「前向きに検討してみます」は断ってんだよ、空気読め!


「友好国の王女であらせられるあなた様も、我が国の王子ジーニアス様の噂を耳にされた事がお有りになるでしょう」


まあね、いい噂聞かないよ。


「類い希なる頭脳をお持ちの次代の王としての資質を十分に有しておられる方ですが、他者との交わりを極端に厭われておられる」


それ、執政者として致命的じゃね。


脳内ツッコミをウッカリ言葉にしないよう私は口を引き結んだ。


「乳兄弟として幼き頃よりお側に仕える私でさえ、あの方の心にある強固な聖域に迎え入れて頂く事は叶いません」


幼き頃から引きこもってんの?


そろそろ医者に診せなよ!


「これまでだれ一人…父親であらせられるレデル王でさえ、あの方の心に寄り添える存在にはなれませんでした」


う~ん、父親と息子の関係ってそれでなくても難しいからね、城にたまに働きにくるおばあちゃんが言ってた。


親子の絆ってその他の人間関係の基礎になるもんだけど、ジーニアス王子の母親も彼を産んですぐ亡くなってるし色々あるんだろうね。


「ですが…私は庭園を散策されるお二人を見て確信を致しました。エラータ様こそが王子の心に触れる事の出来る方だと」


なんじゃ、その急展開な結論。


くっさい庭歩いただけでなんで年期の入った引きこもりと寄り添わなきゃならんのじゃ?


あんたん家の子なんだからあんたん家で面倒みてよ!


「あんなにも楽しげに…あの方が声を立てて笑っておられた。何時も何かに絶望し、苦しんでおられるあの方が満たされたお顔で…」


知らんがな!


そんなに笑ってて欲しいならくすぐってやれ!


「あなた様に出逢ってからのあの方はまるでもがれていた翼を取り戻したかのように…」


私がいくら目を見張るばかりの美少女だからってちょっと買い被りすぎじゃないの?


あれじゃね、浮かれ気分の旅先で出会ったから普段より良く見えるってだけでしよ。


旅行のお土産によくあるパターンだよ。


そんなに満たされて無いならお忍びで城下に遊びに行って欲求不満解消して来たら?


城の西にある一帯だったらお兄さんたちのムフフな遊びも出来るよ。


オススメは、西門の警備兵で『エロ皇帝のサイモン』て呼ばれてる奴がいるからソイツに訊けば詳しく教えてくれるよ!


「生まれ育った国を離れ隣国とはいえ他の国に嫁するのは不安に思われる事も御座いましょう。なれど我が国に、我が君のお側に寄り添って下さるのならば、必ずや心安らかな日々を過ごして頂けるようこの命に代えましても万全を尽くしてお仕え致します」


こんな肩のこる話し方する奴のうじゃうじゃいる国ヤダ。


まだレデル国の名物料理の話される方が心が動くよ。


「どうか御再考を!」


乳兄弟揃ってしつこいな。


飲んだおっぱいの中に何か入ってたの?


「王族同士の結婚は一個人の感情だけで決められるものではありません。父王と臣下を交えて話し合ってみましょう」


前向きに検討しますってやつだね。


ほとぼり冷めた頃に検討してみたけどヤッパリ駄目でしたと連絡。


決定責任者を曖昧にするのがコツ。


「どうか色良いお返事を…」


すがりつくような様子のカイル君は可哀想だけどアイツは無理だよ。


土下座せんばかり恐縮して、立ち去る私を見送るカイル君。


自分の殻に閉じこもってた主が初めて殻の外に興味を示した。


嬉しくってコレを切欠にまともな人間にしたい!と思ったんだろう。


こんなに下の者に心配かけてジーニアスは何をやっとんじゃ!


自分の下の者が与えられた職務に没頭出来るようにさり気なく配慮するのが上に立つ者の義務でしょ!


それを他国の王族に処罰覚悟で直談判させるまで追い詰めて!


自分の国の事じゃ無いとはいえ腹のたつ!!(怒)


あ~無理!やっぱアイツは無理!



さっきまでのルンルン気分が台無しだ!


口直しだ!口直しが必要だ!


私はとっときのパワースポットに向かった。




「ガキ!」「ドコ!」「グギャ~」「オウオウオウ」不穏な音と獣じみた声、近付くにつれ漂う汗と○○の入り混じった男共の香りが漂う。


スーハスーハーくんくんくんスーハー。


癒やされるわ~嗚呼~癒やされる~。(恍惚)


夏の暑さが治まって心地よい気候が続く季節が始まろうとしてるのに此処は常夏。


そう此処は汗だくの男達が蒸れる…いや群れるイバネス国軍上級兵士鍛錬場。


因みに先日私がデモンストレーションしてたのは国軍合同訓練場。


どんな違いが?を簡単に説明すると“合同訓練場”は騎士と兵士が一緒に訓練(実戦の為の練習)する所、“上級兵士鍛錬場”は上級の兵士だけで鍛錬(身体を鍛える)する場所。


“合同訓練場”では騎士の称号を持つ者達と持たない者達が、一緒に実戦の時の各々の部隊がとる動きの摺り合わせをする、真剣だけどちょっとおすまししてる(私の感覚)場。


“上級兵士鍛錬場”では給金目当てで兵士になっただけでなくより上を目指し、将来的には騎士の称号を貰ってのし上がるぜ!俺は一兵士で終わる男じゃねえ!の者達が頭おかしいんじゃないの?ってぐらい自分の肉体を鍛え捲る場。


うちの国の階級は物凄く柔軟なんだよね。


貴族の家に生まれたからって努力しないで遊んでると家名を剥奪されるし、平民に生まれても努力と才能があれば貴族になれる。


まあ高い身分になったらなったで義務だの責任だのが山ほど出来て大変なんだけどね。


巷では平民の身分が一番ラクなんて言われてる。


酒場で平民と貴族がケンカしたとして双方大した怪我が無かったら、平民は自警団の建物に連れていかれて、一日牢屋放り込まれて翌朝ガッツリ説教されて帰してもらえる。


でも貴族はそう簡単にはいかない。


日頃の言動や家の資産の状況、要するに普段から問題のある奴じゃないかどうか徹底的に調べられる。


これは全て例の『血まみれ王』の時代の名残。


国益にならない傲慢な貴族を徹底的に排除し、身分に関わらず才能と意欲のある人々を取り立てた『血まみれ王』の功績が、時を経た今もこの国を活気のある平和な国にしてる。


そんな我が国でビッグな夢を胸に抱き、成り上がり精神でギラつく男共をねっとりと鑑賞しよう。


ドゥフフ(涎)



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