《番外編》勇者様の捨てたもの (Ⅱ)
相変わらずのシリアス注意!
《番外編》はちょっとネタバレ含みます。
「お前の捨てたモノは永遠に取り戻す事は叶わない」
魔王の不吉な予言が死の床についてなお私を縛る。
「哀れな奴だな…」
私の剣をその身に突き立てたまま魔王は私を哀れんだ。
欲望まみれの人間に殺される自分の死よりもなお、私の絶望に満ちた生は憐憫を感じるものだったらしい。
その通りだ。
優しく暖かい夢を見た後の凍える目覚めに私の魂は生涯鞭打たれ続けた。
「お前は後悔するだろう」
後悔しているとも全てを!血の涙を流し身を掻き毟って……。
何故あの時何故…ナゼ…どうしてあんな…?!
私は只…彼女に与えたかった。
与える物を何も持たない自分を変えたくて…それを得た途端に傲慢になった。
魔王を倒す為、旅立つ日も最後まで彼女は私を引き止め無かった。
「行ってらっしゃい!ヤバくなったら後ろを振り返らずに逃げてくんのよ!」
そう言って笑った笑顔。
まるで心浮き立つ冒険の旅に送り出すように私を見送った。
でも知ってる、彼女が夜毎泣きながら婚礼衣装を縫っていた事を。
ろうそくの灯りを頼りに、私を起こさぬよう声を殺しながら泣いていた。
「あんたは自分で自分の怪我治せるから安心ね!」
そう言いながらかき集めた金で薬を買い、山のように私に持たせた。
私の身を案じた思い、それでも明るく送り出した信頼と愛情。
私はそれを金貨に変え、他人の手に委ねて彼女に突き返した。