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キライ姫  作者: たまねぎ
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泣き暮らすと思ったら大間違い!

たまにシリアスだいたいコメディで~

「勇者様と姫はこの度ご婚約されました」


はい?


ビックリして彼を見たら顔を背けてやがる!

その横には綺麗なお姫様がべっとり張り付いてるぞ。


「魔王を倒した英雄にはこれから王としてこの国を治めて頂きたい。アナタも一国民としてそう思うでしょ?」


そう言いながら宰相を名乗ったおっさんが皮袋を私に差し出した。


持ち上げるとかなり重たい。


そっと覗き込んだら金貨がタップリ入ってる!


なるほど手切れ金てヤツね。


もう一度私と目も合わさない彼の方を見てからおっさんを見た。


「はい!勇者様と姫様にはぜひ幸せになって頂きたいとおもいます☆」


満面の笑顔で言ってやった。


別れ話一つ自分で出来ないアホ男なんてこっちから願い下げだ!


「お二人ってとってもお似合い~キャハハ」


馬鹿っぽく言ってやったらおっさんは軽く引いてる。


ほんとお似合いだよ、身持ちが悪いって噂の女とバカ男だからね。


「じゃあお二人の邪魔しちゃ悪いんで私は失礼しま~す☆」


ジャラジャラ皮袋を揺らしながら部屋を出ていく私に誰も声を掛けなかった。



自分の家に帰り着くなり私がした事は、何ヶ月もかけて縫ったウエディングドレスを暖炉に放り込む事だった。


何度も何度も手直しして苦労して縫ったドレス。


裁縫は得意じゃなかったけど美形の彼の横に並ぶ為に…普通な容姿がちょっとでも綺麗に見えるように…デザインを何枚も書いて…。


涙と鼻水をテーブルの上にあった台拭きでゴシゴシ拭う。


馬鹿馬鹿しい!


あんな最低野郎に振られたからって泣いてたまるか!


メソメソ泣き暮らすなんて真っ平ごめんだ!


よし!気持ちを切り替えて、もう馬鹿に引っかからない人生設計を立てよう!


幸い資金はタップリとある。




考え事をする時は酒を呑んではいけない。


確か死んだ母がいってた。


思い出しても後の祭り、もうかなり酔っ払い。


国を出て新しい土地で何か商売でも始めようか…いや、右も左もわからない場所で慣れない事を始めるより、勝手のわかるこの土地で堅実に暮らそう。


そんな事をつらつらと考えながら呑んでいるとつまみが無くなった。


確か一昨日買った干し肉が残ってたはず…立ち上がった私の視界の隅にそれが映った。


小さな花の意匠の首飾りは貧しい彼が苦労して贈ってくれた物だ。


もらったとき嬉しかったな……。


馬鹿だよね…ほんと馬鹿。


魔王を倒したら褒美がタップリ貰えるからって、そのお金で大きな家を買おうって…私はこの小さな家で十分だったのに。


自分の夫が英雄で無くても良かった。


貧しいけれど働き者で心の優しいアナタを尊敬してたのに…。


魔王討伐なんて失敗すると思ってた。


確かにアナタは不思議な力を持ってたけど、それは敵を倒す力なんかじゃ無くて、病気の人や傷付いた人を癒やす清らかな力だったから。


アナタを送り出せたのは、少なくともアナタなら絶対に帰って来れると思ったから。


魔物に負わされた傷を自分で治せるでしょ?


生きて帰って来てくれたらそれで良かったの。


失敗したって誰が何を言っても私がアナタに失望する事なんか有り得なかったから。


それがまさかこんな風に失望させられるとはね。


首飾りを掴んだまま、私は庭に出た。


土にでも埋めてしまおう。


どこに埋めようか?


分かりやすい場所は駄目だ。


未練たらしく後で掘り返そうとしてももうどこに埋めたか分からない所に…。


月明かりの広くは無い庭でフラフラとさまよう。


そうだ、あのあたりに…、振り返った私の前には毛むくじゃらの醜い魔物の姿があった。


えっ?なんで?魔王を倒したんだから魔物はもう人間の前には現れ無いんじゃ?


そいつの鉤爪が自分に向かって振り下ろされるのを見ながら私はぼんやりと考えていた。



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