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Worth  作者: XYM
フクロウ編
6/9

谷間とブラコン

店内はゴールドを貴重とした高級感に溢れていた

少し低めのテーブル

座れば埋まっていきそうなソファ

ドレスに包まれた美女の群れ

かしこまった服で酒を飲む客

俺たちはなんだ?コウタは少し恥ずかしくなった


席に着くとさっそく注文

ユウはボトルがあるから。と姉に

こっちに気付いたママさんに頭を下げるユウ


「ユウさん…アウェイです

ここすごいアウェイなんです」


「いや姉がいるんだからむしろホーム」


「人の家の姉いたらアウェイでしょ!

俺の話してるんすよ」


ユウは笑って


「じゃあ彼女でも見つけてホームにしろよ」


コウタはハッとなった

…なんという肉食系の脳みそ

この人に俺の脳内説明してもダメだ…


「ユウさんお酒強いんすか?」


「いや、全然」


「意外っすねーなんか強そう」


「酒があんまり好きじゃねーなぁ」


そうしてユウの姉が席に着くと


「水でイイ?」


ユウは頷いて姉に酒を作らせる

コウタの分はもう1人の子が作ってくれた


「マユミさん、そいつ童貞っす

食べちゃってください」


「そうなの~?ウフフ」


「ち、ちがいますよ」


そして姉が


「童貞っぽい顔だよねー」


…おい姉!どういう意味だ!

コウタはちょっとイラっとしたけど思った

…はっ!この人は女版ユウさんか!?

まさかドSまみれでさらにアウェイ!?


マユミと姉は2人に名刺を渡した

姉の名前はマイ

ユウとは年子の一個上、小柄で目がデカい

なんとなく似ているような気はしてきた

特に中身が一緒なのだ

マユミはマイの先輩にあたる人

まだまだヒヨッコのマイに教え込んでいるとか


こんな状況だから姉弟の話になってしまう

マユミもコウタも興味津々

ユウはあらかじめ

聞いたら後悔するよ?と言い

姉のマイもうんうんと頷く

それでも姉弟を除いた2人は興味津々だ


それなら…淡々とユウは語り出す


生まれは大阪であったこと

さらに兄と弟がいて4人兄弟であること

二歳で親が離婚して一家離散していたこと

弟は腹違いってこと…


このあたりでコウタやマユミは申し訳ない顔になった


「だから言ったのに(笑」


マイも笑っている

その後マイが話し出したのは親について


自分は親父を恨んでいること

母親も嫌いなこと

兄と弟が大好きなこと(ユウ照れる

結婚する気が全く無いこと…


やはり重い話でコウタは声が出せない

マユミは「良い兄弟がいて羨ましい」と

1人っ子で…とかマユミのターンになった

やっぱりどことなく暗い話大会みたいになってしまう


「おめーら暗いからさ!

ちょっとカラオケでも歌えよ!」


「あんたキャバクラじゃないのよ?

カラオケなんて無いわよ!」


その後ヤンヤヤンヤやり合う姉弟

少し空気が軽くなった

コウタはユウについてようやく知れた

ただのスロット上手い短気なお兄さんじゃ…

…短気?

朝のやり取りを思い出してコウタは喋り出す

「そういえばユウさんが朝キレて…」

諸々事情を説明してどう思います?といった話を振った


「そんなん遅刻する奴が悪いのよ」

まさかのマユミさん


「その前に仕事バックレるなんてクソよ」

と、お姉様


コウタは思った、ここはアウェイ

肉食獣のオアシスなのだ

俺の話は理解されない異国だ

ちょっとウーンとなっていると


「俺は自分でダメだと思ったけどね

そいつらがクソでも手は出したらダメだ」


「兄貴に言ったらなんて言うかな?」


「…殺してしまえとかかな」


コウタはこんな顔(・_・;

遺伝子だこれは、逆らえない血だ

あまり近づかないほうが良い一家だ


「コウタくんどっち見てるの?」


マイが呼びかけコウタが振り返ると

谷間が見えて釘付けに

深くにもドキッとした


「今度はどっち見てるの?」


コウタは目を逸らした

ドキドキドキドキ


…プロやな

童貞に色仕掛けつーか弟の後輩に色仕掛け

やり過ぎちゃうんか


そんな夜は過ぎていく

……


良い感じに出来上がった男2人

マイは呼ばれたら席を移る

ある程度すると戻る

コウタはマイを目で追いかけては


「綺麗な姉ちゃん良いな〜」


「お前谷間で惚れるなよ」


「ち、違います普通に綺麗っすよ

てか全然酔ってないじゃないすか」


「いや、まあこれくらいは…」


ボトル2本目

ユウの趣味で安い韓国焼酎を飲んでいる

おそらく場違いな注文なのだろう


「あのな、姉ちゃんはBカップだよ?」


「嘘でしょ?Eですよあれは」


…ふぅ~

ユウは溜息を吐きながら言った


「イイですか?

女はあらゆる技を持っています

乳を作るくらいなんて貧乳は朝飯前よ」


そこにマイが戻ってくる

席に着くなりコウタに向かって言う


「なんかコウタ乳ばかり見るねぇ

さてはお前オッパイ星人かぁ?」


「姉ちゃん何カップだっけ?」


「え?…Dです」


「嘘つくんじゃねーよ貧乳がよお!」


また姉弟の痴話喧嘩が始まった

まるでカップルのような仲の良さ

だんだん酒のせいか笑えてきたコウタ

もうアウェイ感はすっかり消えていた

そして帰る時間に


「すんませーん、チェックでー」


すると折られた皮の手帳のような物が渡された

開くと…会計 8万8千円


「!?

ユウさん!ボッタクリですよ!」


コソコソ話でユウに話しかける


「…お前恥ずかしいから話しかけるな」


テキパキと財布から札束を出して会計する

9万で渡して黒服に耳打ち

頭を下げた黒服は笑顔でまた来てくださいと言う


マイが外まで着いてきた

姉に見送られながらタクシーに乗り込む


「楽しかったっすねー

また来たいです、ここ」


「んーそりゃ良かった

姉ちゃんも楽しそうだったし」


少し間を置いてコウタが聞いた


「なんでそんなに仲良くなれるんすか?

普通もっと兄弟って遠慮てゆーか…

仲良くても限度があるとゆーか…」


「親のせいかなー?

クソ野郎だから兄弟でなんとかしなきゃ

そういうのがあるかもしんねー」


コウタは自分の家が普通なことを理解

世の中色んな人がいるもんだ…


「なんでスロットで食ってるんですか?」


「なんだ?酔ってるとよく喋るなぁ

二次会で俺の部屋でも行くか?」


「行きます」


フッとニヤつき運転手に行先を変えてもらう

外を見ると灯りの着いた東京ドームが見えた

ジャイアンツファンの親父を思い出す白いドーム

吐き気がするような感情は

タイガースファンだからでも

車酔いでも無かった

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