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Worth  作者: XYM
フクロウ編
2/9

明朗会計

「ありがとうございましたー!

またのお越しをお待ちしております!」


蝶ネクタイの店員が客を見送る

扉が開くと漏れるユーロビートの音楽

その奥にユウはいた

「この子はどうなんすかね?

やっぱ…人気無いのかなぁ?」

「最初良かったんだけど…

でも礼儀はあるし後で伸びるかも」


スーツ姿で少し強面の中年と資料を眺めながらの会談

名前と出勤回数と出勤時間、遅刻や欠席の回数が書いてある


「うわぁ…ひでー遅刻回数やな…」


「ん?ああ先週でクビにしたよそいつは」


「当然っすね…こりゃナメてる」


「いくらピンサロってもね、これ仕事。

社会のマナーは無いとね

仕事ナメないでもっと男の舐めて欲しいね(笑)」


店長の小ボケに愛想爆笑し席を立つ


「じゃあ自分行きますね

明細だけコピーさせて貰います」


「せっかくだし遊んでいきなよ

ユウちゃんなら女の子の分だけで良いし」


「えー?悪いっすよ」


「めっちゃニヤニヤしてるやん

じゃあサユリさんちょうど空いたし」


「…⁉サユリさん…⁉

あぁ…もうちょっと時間あるかなぁ?」


「決まりで(笑)

サユリさーん四卓40分…」


奥に向かって叫ぶ店長の声はユーロビートにかき消された

ジャケットだけ脱いで角の四卓に腰を下ろす

タバコに火をつけ横を見ると69の体勢の男女が見えた

…ソファーで69はアクロバティックやな

飲み物を持ってきた店員に会釈、烏龍茶を飲む

一仕事終えた感が体を包む

ネクタイとシャツのボタンを緩めてタバコを消した


「お待たせしましたー!サユリです♡

スカウトなだけにスーツ似合うね!」


「二回目っすよそのセリフ(笑)」


「あーユウちゃんか!

髪が金だから違う人かと思ったよ」


「そういう問題じゃないっす

ちゃんと見て似合う言ってくださいよ(笑)」


「ごめんごめーん」


サユリは今日の衣装`チャイナドレス`で現れた

巨乳でスレンダーで綺麗な顔

一夜にして十数人相手するスーパーピンサロ職人

コスプレに興味ないユウも流石にこれにはヤられた


「チャイナ良いな〜ハマりますねこれ」


「服じゃなくて私が良いの!」


ユウは軽くしたためられると同時にキスをされた

自然にプレイを始めるサユリに頭は関心しきり

…これがプロやなぁ







なにそれ⁉



うお⁉




ふぐっ…



もうダメ…


◯〜◯〜◯〜◯〜


チリンチリ〜ン


「ありがとうございましたー!

またのお越しをお待ちしております!」


緩んだネクタイとはだけたシャツを直しながらフラフラと歩く

…あれが毎晩はもたんな…

ジャケットを羽織りタクシーに乗り込む

東口のどこどこと告げると走り出し、メールを送る


宛先 コウタ


本文 どんな感じか?


池袋の街並は長くネオンに彩られている

歌舞伎町が一角に集中するタイプとしたら

池袋は細長く駅に向けて光の道を作る


すぐに到着

3000円分の厚みを減らした右ケツポケット

取り出し1000円渡して釣りは要らないと言う

っても釣りは20円程度だが。


時間は21時過ぎたあたり

線路脇の道を通りビルに入りエレベーターで3階へ

カードを通し鍵を開けるとざわめきと散らかった風景が広がる


「これ今月分の◯◯店の明細っす」


お疲れーと手で挨拶する上司

事務所内は男だらけで所謂ギャル男が多かった

扉を出たすぐの階段の段差で電話する男

内容は仕事とは関係無いようだ


ユウの仕事は人材紹介業

…聞こえが良すぎるが巷ではスカウトと呼ばれる

街行く女の子に声をかけては仕事を紹介する

いずれも高収入の女を武器にする仕事だ

水商売に風俗にAV

どんなに不景気が叫ばれても需要は止まらない

事務所を後にし同僚とも挨拶を交わさず街に戻る

職場と言うには冷めすぎていた


携帯を見るとコウタからの返信がある


本文

鬼のヒキで現在5カチです!

流石っす


歩きながらフッと鼻で笑う

もう徒歩数十秒といった場所なので返信はしなかった

21:45時計に目をやり頭で簡単な計算をする

…八時間弱、時給1000円なら8000円か

ユウはそのままパチンコ店に入っていった


賑わうスロットコーナーにコウタはいた

こちらに気づかず真剣な表情、手元は急いでいるように見えた


「コウタ、ご苦労さん

閉店まで代わるからメシでも食ってこい」


「うわっ!スーツ⁉」


コウタは驚きながらも時給を受け取り席を開けた

ユウは席に素早く着くとこなれた動作でレバーを叩く

しばらく今の状況などを引き継ぐ会話をしコウタは店を出た

メダルを投入しレバーを叩きリールを停める

単純な動作だったが周りに比べてユウの動作は違いがあった

一連の動作が異常に早い

サクサクと進める内に大当りを射止める


23時閉店

ユウの頭上には7箱のメダルの山があり店員が運ぶ

計数器にぶち込まれたメダルがレシートになるまで数分かかった

7500枚

そう書かれたレシートを手に取り交換しに行く

コウタが現れ期待の隠せない顔で交換を待つ


「今日はまあ良かったからな

はい、これボーナスね」


「うおー!あざーす!あざーす!」



ユウはコウタに12000追加で渡した

合計2万円

時給とは別に勝った額の一割をコウタに渡したのだ


「明日は別にイベント無いから来なくていい

その代わり明後日は必ず6時には来い」


「了解です‼

ユウさんはいつも払いが良くて最高ッス!」


満面の笑みで家路につくコウタ

コウタはユウの台を代わりに打っていたのだ

ユウはスロットで良い台を掴むと代打ちを雇った

コウタとはパチンコ屋で知り合ったのが始まり

ある日、それはとても良い台を持っていた

外せない仕事があったので困っていたが

ウロウロしていたコウタに時給1000円で代わりに打てと持ちかけたら快諾

そこからこの関係になったのだ


250台の中にあるお宝は10台にも満たないだろう

その10台を取るのがプロである

スカウトはバイト、こっちが本業

ユウは東池袋にある自部屋まで徒歩で動く

勝ったから気前良くタクシーなんてならない

日払いの仕事で毎日気前良くなったらもたない

額の問題では無い

ユウにとっては仕事なのだから



5階建てのマンション

その3階にユウの部屋はあった

鍵を開けドアを開くと甘い香りが広がった

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