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コンビニの前の証明写真をとるやつ

作者: 鞠目
掲載日:2026/07/07

 怪談を語るなんて普段しないもんですから、慣れへんところがあるかと思います。そこはまあ、温かい目で見てもらえたら嬉しいです。


 いきなりですが、おれ、子どもん頃アホやったんです。

 男の子はアホや言いますやん?

 あれを体現するいうか、自分で言うのもあれなんですけどほんまのアホやったんです。

 こんなん自慢にもならんけど、どれぐらいかと言うと、

 目を閉じて歩いてたら魔法の国に行けるかも! って思いつき、目を閉じて走って転ける。

 テレビで事件のニュースを見て、近所に犯人が来てると思ってチャリでパトロールする。

 カードゲームで欲しいカード当たらんかったら「おれはこの世界で一番不幸な男や」って本気で嘆く。

 みたいな小学生でした。

 因みに、中学生なってもアホでした。

 中国雑技団をテレビで見て、おれも似たことできるかな思ったんです。チャリで爆走した後、ハンドルで逆立ちしようと足を浮かせました。びっくりしましたね。やったら意外と浮くもんで。

 結果、当たり前ですけど道路で盛大に転けました。膝を軸にしてコマみたいにチャリが回りました。そんでジーパンに穴あきましたわ。

 やっぱり高校でもアホでした。

 台風の日に暴風の中チャリこいで登校したら先生に「休校や」言われました。「こんなに頑張ってきたのに!」って言ったらしばかれました。時代ですね。

 大学行ってもアホのままでした。

 アホでも大学は行けたんです。勉強は普通やったんで。ただ、アホやから、教授にはやっぱアホ言われてました。

 卒業旅行の日程と卒業論文の発表日が被ってもて、なんとかならんか言いに行ったら教授にブチギレられました。

 教授に何度アホ言われたか覚えてません。たぶん百は超したんちゃいますかね? それぐらいアホでした。


 そんなアホなおれですけどアルバイトはちゃんとできたんです。たぶん。

 学生時代にしてたんはコンビニのバイトで、割とそこそこ続けてたんですよ。

 前置き長なりましたけど、今日話すんは、そのコンビニの話です。


 バイト先のコンビニの前に証明写真撮る機械があったんです。

 撮ったことあります?

 おれ、あれ最初ダサいデザインのプリクラやと思ってて、ふざけて撮ったんが初めての撮影でした。全く絵も文字も書かれへんし、デコれへんしでがっかりしたんを覚えてます。金払って撮ったのに、指名手配犯みたいな写真なるとか詐欺や思いましたね。

 まあ、それを学校で話して馬鹿にされたんは言うまでもないでしょう。

 そもそもプリクラ一人で撮るやつおらんて言われた時は衝撃でした。


 話を戻しましょう。

 さっきも言いましたけど、バイト先の前にあったんですよ、証明写真撮る機械が。でも、そこはいつも人気でたいていカーテンが閉まってて、中の人の足が見えてました。

 いつ通っても足が見えるから繁盛してんな思ってたんです。けど、ある日店長にそれ言うたらそんなはずない言われたんですよ。

「あっこで撮影してるやつなんか見たことない。数年置いてるけど、売り上げ全然入ってこんから置いたん後悔してる」

 店長に嘘言うてる感じはありませんでした。 

 となると、中におる人は座っとるだけってことになる。これでピンときたんですよ、おれは。変なやつが撮影機の中で暇つぶししてるなて。


 どんなやつが中におるか見たろう。

 そう思った途端でした。

 撮影機に人が入らんようになったんです。

 悔しかったですね。もっと早よ見たら良かったなて。それを店長に言うたらそんな変な奴おらんわ、お前の見間違いじゃ言われました。

 そんなこんなしてるうちに半月ほど経った頃やと思います。

 バイト帰りに撮影機の前通ったら「こんばんわ!」て声かけられたんです。

 聞いたことない声でした。自分が声かけられたんかわからんかったけど、とりあえず撮影機の方見たら人がいたんです。

 喪服着た若い男の人でした。

 男の人はめちゃくちゃ笑顔で「お世話になってます!」て言うてきました。

 お世話もなにも知らん人やし意味わからんくて、おれは黙って突っ立ってしまいました。そしたら、


「ありがとうございます! ありがとうございます! ありがとうございます! ありがとうございます! ありがとうございます!」


 て、壊れたラジオみたいに同じ言葉を繰り返し始めました。

 笑顔やし、うるさいし、気持ち悪いしで、おれは逃げるように帰りました。

 走って家に帰ったんですけど、帰り道ではずーっと後ろから「ありがとうございます!」て叫んでるのが聞こえてました。

 嫌なもんですよ、コンビニからどんなけ離れてもずっと声が聞こえるって。結局、声は家に入るまで聞こえました。


 バイトは辞めました。

 変な人見たんもあるんですけど、もっと楽で時給のいいショッピングモールの警備の仕事見つけたんです。

 コンビニの店長とはバイトを辞めてから会ってなかったんですけど、こないだ数年ぶりに会ったんです。そんで久しぶりですーみたいな感じで話してた時に、そういや証明写真撮る機械まだ置いてるんですか? て聞いたんです。そしたら、置いてないて言われました。

 やっぱり売り上げならんからですかって聞いたらら、そもそもそんなもん置いたことないて言いよるんです。

 店の前に置いてるのに売り上げならん言うてたやないですかって言うても、店長は「知らん」の一点張り。あまりにも話が噛み合わなくて困ってたら、困り顔の店長に言われたんです。


「店の前のスペースには灰皿しか置いたことあらへん」


この物語はいでっち51号様の企画の参加作品です。

ある漫才師が語る怪談となります。

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― 新着の感想 ―
うーん。本当にバラエティーのトーク番組で芸人さんが話しているみたいでしたよ。 でも追いかけられたら怖いですよね。
これは……喪服の男の不気味さもですけど、まるで知らない内に並行世界にでも来てしまったかのような雰囲気が、とてもじわじわ怖さが来る感じでクセになりそうです(*´艸`) 楽しく読ませていただきました、あり…
喪服の男(怪異?)の行動が理解不能で不気味です(´;Д;`) 家に入る直前まで声が聞こえてたってことは、居場所もそいつにバレちゃってるのかなぁ……とか考えて、逃げられない恐怖を感じました。 最後の話の…
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