笑うトパーズ
ジェームズは、宝石のことなら宝石に関わる者が一番良く知っていると考え、屋敷からそう遠くないところまで歩いて行った。そして、メインストリートの中央にある宝石の老舗『エアリス・ジャーン』本店にたどり着いた。
幾分、古い宝石には呪いがあるという噂もあるが、この歳ではさほど怖くはなかった。
粉雪の舞う首都ロンドンは、今日もいつものように活気が溢れている。冬のメインストリートは、昨日の夜から降る雪によって、いくらか地面にも真っ白な雪が積もっていた。街行く人々はロングコートが目立ち。もうすぐクリスマスシーズン到来を知らせていた。
宝石店エアリス・ジャーンに入る際に、入り口回転式ドアから一人の女性が急いで駆けてきた。ジェームズは咄嗟に横へどいてやると、女性は立ち止まりかけこちらにお辞儀をした。
そんなハプニング以外はいつもの日常だ。
「失礼! 今、急いでいまして!」
その女性はよほど急いでいたようで、すぐにロンドン駅の方へと走って行ってしまった。
言葉の訛りからすると、どうやらフランス人だろう。どこか陰りがある痩せ細った顔だったが、とにかく美しい女性だった。
ジェームズは、少しびっくりしていたが、そこまで観察しながら、気を取り直して店内に入った。
店の中は、大勢のお客がいるというのに、シンと静まり返っていた。ショーケースやショーウインドーの中の種々雑多なとても高価な宝石は、白い照明を受けてなおさら美しい輝きを放っている。
ジェームズは、とにかく八宝石の情報を得るために、まずは店員に聞いてみることにした。
石にも種類があるので、八宝石にも色々な種類はあるはずだ。
宝石店エアリス・ジャーンは、老舗といわれているだけあって、ジェームズが話し掛けた店員の一人も、洒落た高級の服を着こなしてはいるが、どこか物腰がすごく柔らかだった。
「宝石? いえ、八宝石を知りたい? そうですか、八宝石の事をよく知りたいのですね」
「ええ。あの、八宝石を知っているのですか? もし知っているのなら、どんな些細なことでも構いません。私に教えて下さいませんか?」
「ええと、あそこに八宝石の一つがあったのです……。ですが、すみません。今しがた売れてしまったようですね」
ジェームズは、びっくりして、店員が向いている先の陳列ケースを見てみると、確かに八宝石のタグがあった。
タグには、八宝石のダイヤモンドと書かれ、値段はたったの1ポンドだった。
「はて? どうして、こんなに安いのですか?」
「ここに置いてある宝石は、全て価値のあるものだけなのです。けれども、八宝石は八つ集めないと価値がない。だから、1ポンドというわけなのです」




