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遊園地と夏祭り

作者: 西園良

 夏。

 俺の名前は都筑良太郎(つづきりょうたろう)と言う。大学2年生の20歳である。今は講義前の休み時間。やることもないので、隣の女学生に話しかけることにした。

「なあ、鳥山。昨日テレビ見てたか」

「見てたよ。お笑い芸人のやつ」

 こいつの名前は鳥山叶(とりやまかなえ)。俺と同じ大学2年生であるし、20歳というのも俺と同じだ。こいつとは4月にこの講義で知り合い仲良くなったクチだ。友達である。

「俺も見ていた。トーク力が半端ないよな」

「そうそう。しかも、漫才も面白いし」

 鳥山がにこやかに話すのを聞きながら、俺は思考していた。そう、こいつをどのように、デートに誘うか。俺は鳥山のことが好きだ。向こうはどう思っているかしらないが、俺は好きだ。好きになった理由とかは分からない。いつの間にか、というやつである。

 んー、よく分からないから、普通に誘おう。

「鳥山、今度2人で遊園地に行かないか」

 俺の言葉が意外だったのか、キョトンとした顔をしていた。そして、疑問を抱いている表情で尋ねてきた。

「それって、デートってこと」

「そうだ」

「良いよ」

 あっさりと承諾した。断られることも考慮していたのだけれども。

「良かった。じゃあ、どこ行こっか」

「遊園地に行きたい」

 鳥山がリクエストする。遊園地か。悪くない。

「じゃあ、今度の休みにA遊園地に現地集合ってことで」

「分かったよ」

 彼女の返事を聞きながら、俺は当日が楽しみに思うのだった。


 休みの日。約束の時間の10分前にA遊園地に到着したが、彼女は既に待っていた。

「待たせてごめんな」

 俺の謝罪に鳥山は笑顔で返した。

「ううん。こっちが早く来すぎただけだから」

「本当にすまんな。で、何から乗ろうか」

「ジェットコースター」

 マジか。俺絶叫系苦手なんだよな。でも、好きな女の前では、格好をつけたい。

「よし、乗ろう」


 今ジェットコースターに乗っているところである。スピードが半端じゃなく、今にも横から転落しそうなくらい速い。速すぎる。死ぬ。死んでしまう。

 幸いにも、死ぬことはなく、ジェットコースターは一周して、停止した。


「楽しかったね。ジェットコースター」

「ああ」

 心底楽しそうな鳥山に生返事を返した。


 その後、色々なアトラクションを楽しんだが、時間的に後1つくらいしか乗れないだろう。最後と言えば、これに決まりだな。

「観覧車」

「そ、観覧車に乗ろうぜ」

「別に良いけど」

「決まりだ」

 幸いにも、観覧車は空いていて、すぐに乗ることができた。

「綺麗」

 彼女が目を輝かせて褒める。うん、確かに窓から見るこの光景は絶景だ。人が小さく見える。

「今日は誘ってくれてありがとうね」

「こっちこそ、来てくれてありがとう」

 お互いに見つめ合いながら、そう言った。



 俺は鳥山にメッセージを送った。

「今度2人で夏祭りにいかないか」

「今度は夏祭りに連れて行ってくれるの」

「ああ。日曜日とかどうだ」

「OK。どこの祭りに行くの」

「学校に比較的近いBというところで祭りが開催されているんだ」

「分かった。じゃあ、日曜日にね」

「ああ」

 俺は鳥山にメッセージを送り終えると、スマホを床に置く。

 うわあ、好きな女と夏祭りデートか。楽しみすぎる。興奮冷め止まぬ状態で寝ることにした。



 日曜日になった。服は普段着で良いか。俺は財布やスマホを持って、家を出る。


 夏祭り会場。今回は俺の方が先に来たようだ。少し待っていると、鳥山がこちらに来て、声をかける。

「都筑君待った」

「少し待っただけだから、大丈夫」

 俺はそう返事をしながら、彼女の姿を見る。どうやら浴衣を着てきたようだ。

「浴衣似合ってるな」

「ありがとう」

「じゃあ、行くか」

「うん」


 俺達は色々な店を見て回った。焼きそばや射的、それに金魚すくいまで。焼きそばは美味かったし、射的や金魚すくいも楽しかった。

 さて、俺は目的を達するために、鳥山を誰もいないところに連れて行く。


「こんなところに連れて来て、どうしたの」

 鳥山の純粋な目をした疑問に俺は覚悟を決める。そう、目的とは告白だ。俺は痛いほどバクバクなっている心臓を落ち着けようと深呼吸する。そして、言った。

「鳥山。君のことが好きだ。俺と付き合ってほしい」

 彼女は驚いた表情で俺を見ていたが、すぐに、申し訳なさそうな表情で言う。

「ごめんなさい。あなたとは付き合えない」

 拒絶の言葉だった。

「どうしてか聞いても良いか」

「あなたのことが好きじゃないから」

 俺の追求に鳥山はハッキリ返した。

「そうか。すまない」

「いや、良いよ。じゃあ私これで帰るね」

 鳥山はそう言いながら、踵を返して、帰宅して行った。彼女の姿が見えなくなるまで、見ていたが、彼女の姿が見えなくなると同時に俺は涙を流した。うっ、ちくしょう。なんて心が痛いんだ。失恋しちまった。

 俺は帰る時間になるまで、ずっと泣き続けた。


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