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火に問う  作者:
5/17

第五夜「宇宙と神」

焚火の火は安定し、星々が夜空に一つずつ増えていった。頭上には、銀河の帯のような光の川が広がっている。三人の哲学者たちは、その壮大な景色に見入っていた。

アインシュタインは空を見上げながら言った。

「私は子供のころ、星を見上げてこう思ったよ。『もしこの宇宙がこんなにも美しく、秩序正しいのなら、きっとそれを作った”何か”があるに違いない』と」

プラトンは焚火の熱で手をあたためながら、その言葉に静かに頷いた。

「それは”善のイデア”かもしれませんね。私にとって神とは、万物の背後にある『究極の完全性』。あらゆる存在は、それに近づこうとして形を持つ。この宇宙もまた、その影です」

ソクラテスは両手を膝に置き、二人の言葉に耳を傾けた後、問いかけた。

「だが君たちよ、我々が語る”神”とは何だ?人格を持つ存在か?それともただの概念か?問わねばならぬ。でなければ思考は停止する」

アインシュタインは膝の上のノートをそっと閉じた。

「私は人格神は信じていないよ。だが、宇宙の調和――それには神性を感じる。神とは、理性を超えた法則そのものかもしれない。エネルギーの変換、時空の曲がり、光の道筋――そこには意志すら感じる時がある」

プラトンは焚火の炎を見つめながら、思索に耽った表情で言った。

「意志なき神など、果たして神と呼べるでしょうか?我々の魂が善を目指すように、宇宙にも”目的”があると考えたくなります」

ソクラテスは眉をひそめ、問いを投げかけた。

「だがその”目的”をどう知る?神が存在するとして、その存在を我々が知覚できるのか?あるいは、ただ我々が”意味”を見出そうとしているだけではないのか?」

アインシュタインはゆっくりと口を開いた。彼の白髪が夜風に揺れる。

「もしかすると…宇宙は、我々が”神を問う”その行為の中に、すでに神を映しているのかもしれない。問いを発するという行為そのものが、神性の現れだ」

プラトンは瞑想するように目を細めた。

「まるで、宇宙が我々を通して”自らを知ろう”としているかのようですね」

ソクラテスはにやりと笑って、顎に手をやった。

「ならば、神とは”問う者”そのものか。我々が問う限り、神はここにある」

焚火がふっと風に揺れ、三人の顔が赤く照らされた。星々は頭上で輝き、まるでその問いに静かに耳を傾けているかのようだった。

アインシュタインは丸太の表面に手を置き、夜空を再び見上げた。

「たとえ神が沈黙していても、我々の問いかけは止めてはならない。それが、人間の本分だ」

ソクラテスは背筋を伸ばし、決意を込めた声で言った。

「よろしい。では今夜も続けよう――我々の無知が、宇宙の沈黙に触れるまで」

その言葉に応えるように、遠くで彗星が夜空を横切った。光と問いと沈黙が、夜の世界を包んでいた

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