なんで、いきなり…?
それは、ある真夏の夜の出来事だった。
麗「あっちぃ…なんで夏って、こうもジメジメしてるんだろうか。
普通、もっとカラッとしてるのが夏なんちゃうの?」
恭平「うるさい奴やなぁ。
日本の夏は湿気が多いんやから、しゃーないやろ。
文句あるなら海外移住でもせぇ」
私の名前は、結城 麗。
15歳の高校1年生。
隣にいるのは、兄の恭平。
19歳の大学1年生。
私達は関西の田舎で暮らしており、父は飛行機のパイロット。
母は看護婦と、多忙な生活をしている両親の元に生まれた。
私と恭平は幼い頃から2人で居ることが多く、私達の面倒は近所に住んでいた祖父母が見てくれていた。
しかし、そんな祖父母も私が高校に入学して、すぐに他界。
今は兄妹2人で、一年の大半を過ごしている。
麗「そうや。
恭平!アンタ、この間ウチの部屋から漫画持って行ったやろ。
後で龍太が取りに来るから、そろそろ返しっ…」
♪♪♪ー
恭平の部屋に向かおうと、ソファーから立ち上がった時だ。
私の携帯に一通のメールが受信された。
恭平「なんや、珍しいな。
お前の携帯が鳴るなんて」
麗「…アンタ、それどういう意味で言うてんの?」
恭平「こんな狂暴で野蛮な女に、友達なんかおるもんなんやっ…ぐはっ!」
ニヤニヤと含み笑いをしている恭平に制裁を加える。
見事、拳で分からすことに成功した私は、すぐに携帯を手に取ってメールの受信boxを開いた。
受信:理香子
【麗ちゃん、久しぶり♪
神高の理香子やけど、分かるかな?
元気しとる~?】
メールの宛先は、同じクラスの友達から紹介してもらった、理香子だった。
理香子はウチの高校の隣にある、お嬢様学校に通っている同級生。
実際に会って話したことはまだないが、私とは正反対の可愛くて清楚な女子だと聞いた。
麗「…今思ったらウチとは正反対って、なかなか失礼な話よな」
恭平「何をボソボソ言うとんねん。
怪しい奴に見えんで」
麗「やかましいわ」
横からチャチャを入れてくる恭平を一蹴し、早速メールの返事を作成する。
送信:麗→理香子
【元気しとるよー。
理香子も元気?】
受信:理香子→麗
【元気、元気!
実はね、今日は麗ちゃんに頼みがあって連絡したんよ】
頼み…?
理香子からの意味深なメールに、思わず眉を潜めた。
送信:麗→理香子
【頼み…か。何?】
受信:理香子→麗
【実は、ウチと仲良い男の子が麗ちゃんと繋がりたいみたいで。
前に麗ちゃんから写メ送ってもらったやろ?
アレをその子に見られてしまったんよ;;
そしたら、その男の子がずっと“麗ちゃんを紹介しろ”って、うるさくて…。
迷惑かもしれへんけど、もし良かったらその子とメールしたってくれへん?
決して悪い子やないからさ!】
え…なんでウチの写メ?
確かに理香子に顔見せてほしい言われたから送ったけど、それを保存してるってヤバくない?
てっきり消してるもんやと思ってたわ…。
てか、その男の子もアカンやろ!
女の子の携帯覗き見するって、デリカシーなさすぎ!
恭平か!
恭平「おい、なんか今、俺のことをさり気にディスってへんかったか?」
麗「い、いや?!
そんな、まさか…こんなにも優しくて格好ええお兄ちゃんをディスるなんて、そないな酷い真似ようしませんよ~」
恭平「ふーん」
納得いってないような様子で返事をする恭平。
なんでコイツはこういうところだけ、勘が鋭いねん。
怖いわ。
私は恭平から少し距離を置き、メールの続きを作成する。
送信:麗→理香子
【ウチ、そんな愛想よくやり取りなんてできひんで?
基本メールは面倒くさいと思ってるタイプやし。
それでも、ええの?】
受信:理香子→麗
【全然ええよ!
その子にはちゃんと伝えとくから♪
ほな、アドレス教えとくな?】
こうして、何故か理香子から男の子を紹介してもらうことになったのだが、これが悪夢の始まりだった。