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泣きゲーRPGの世界に転生した私は廃人レベルのプレイヤー知識を活かし死の運命から推しの女キャラを救うために頑張って足掻こうと思います!六十三話:裏切り


「う、うそ……嘘!……嘘だ、そんな……!」


「では、これから貴女に事実をお見せします……」


唇を吊り上げた女は四肢を締め上げられ錯乱するエリシアの顎を掴むと、静かに唇を重ねた。


その瞬間、目を見開いたエリシアの脳内に濁流のように映像が流れ込む。



それは、エリシア・スタンズを壊す為に暗躍する魔女の記憶だった。


” あひゃはははははははっ!!愛してる、愛してますわエリシアァァァァァァァァッ!!痛めつけてやる、傷付けてやる、悲しませてやる、壊してやる……犯してやる!!そうして疲れ果てた貴女をこの私が癒やしてさしあげますわ!!私だけはいつでも貴女の傍にいる、貴女の隣に居る!!貴女が望むなら私は何だって与えてあげる、そして私以外の全てを奪ってあげる!!さあ、始めましょうエリシア!!私と貴女が結ばれる為だけの血塗れの演劇を!! ”


" ……さあ、この世界でも……いっぱい遊びましょう……エリシア…… "




「……あ……あぁぁっ……うそ、うそ、うそ、うそ、うぞだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



" うふふふっ、裂けた喉を晒しながらペンを突き立てたこの子を見て……貴女はどんな風に絶望するのかしらね?エリシア、貴女には誰も救わせない……私以外の誰も救わせたりしませんわよ?……ふふっ、うふふふふ……ぐぎひひひひひひひひ、きひひひひひひひひひひひぃぃっ!…… "


「いやあぁぁぁぁぁぁあっ!!なんで、なんで、なんでぇぇぇぇぇぇっ!!……エルメス、エルメスゥゥゥゥゥッ!!……どうして、ティナァァァッ……」


救ったと思っていたエルメスと名付けた少女を、彼女は催眠魔術を用いて殺した。


何度も喉をペンで刺突し鮮血を散らすエルメスを見つめる魔女の瞳は爛々と赤く輝き……そして、ある種の快楽すら感じさせる熱い何かが感じられた。


その絶望的な真実を無理やり直視させられたエリシアは絶叫しながら脳内を駆け巡る光景を否定する。


だが、女神は更に唇を重ね……ティナの凶行を映像として彼女の脳内に流し込む。


" ふふ、ふひひひっ!貴女には死んでいてもらわないと困るんですの!エリシアをもっと傷付ける為の下準備に貴女の死は不可欠なんですのよ!?……それと、ちょっぴりエリシアを他の女に盗られた憂さ晴らしもありますわね! "


「ん”う”ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!う”っ、ん”ん”ん”っ!!……」


" ドブネズミの貴女を無惨な姿にして心を落ち着けようと思いますの……その下らない独善とプライドに満ちた顔を涙と鼻水でグシャグシャにしてせいぜい私の心を鎮めてくださいませ? "


" 裏切り者のドブネズミにはドブがお似合い……貴女を裸に剥いて汚らしい濁った川へと浮かべて差し上げますわ!そうすればあの連中は代わりを寄越すでしょうから……うふふっ、あひゃははははははぁぁぁぁっ!! "


エリシアは全てを理解してしまった。


脳内へ雪崩れ込む記憶の中で、ティナは喉を握り潰し殺害した女の衣類を剥ぎ取るとその屈辱的な姿となった亡骸を濁った川へ放り込む。殺されたリベーヌ・アリエッタは本来であればその後にエリシア達と対峙する筈だった。


ティナはこの世界がゲームである事を明確に理解し、そして悪意を以てエリシア・スタンズを傷付ける為だけに物語を狂わせようとしていた。



その残虐極まりない真実を理解したエリシアは、もはや悲鳴すら発する気力すらも失くし小刻みに体を震わせながら俯いた。


滾る独占欲と愛を瞳に宿す女神は彼女の心にトドメを刺すべく、甘く息を漏らすと再び唇を重ねた。



エリシアの脳裏に今度ははっきりと、自身の背後から長剣を突き立てるティナの映像が流し込まれた。



その瞬間、彼女は自由である事を放棄した。


鎖が音を立てながら強力な力で細い手足を締め上げ……やがて繊維が引き千切れる音と、太い骨が破断音を上げエリシア・スタンズの肉体をバラバラに引き千切る。


報われなかった現実のやり直しとして虚構の世界に逃げ込んだその魂は、粉々に砕け散り破壊された。



「……アスカ……私はようやく貴女をモノにする事ができました……。この瞬間をどれほど待ち望んでいた事か、この瞬間にどれほど恋焦がれた事か……神の孤独を癒す愛おしい人の子、私は永遠に貴女を離さない……」


塗料の缶を床に溢したかのように広がる赤い水溜りに転がる彼女のパーツを見下ろしながら、返り血を浴びた顔に穏やかな笑みを浮かべ女神は栗色の髪を顔面に張り付けたその頭部を抱え我が子をあやすかのように語り掛ける。



「アスカ……私はどこまでも、この自慰行為に耽ろうと思います……。死した貴女の魂を凌辱して……」



-------


「……エリ……シア……」


朦朧とする意識の中で、私は彼女の名前を呼んだ。


いつの間にか私は外へ連れ出されたらしく、フラフラと裸のまま歩く私を異形の住人達が好奇の眼差しで見つめてくる。


その目線はまるで、あの女に見せられたゲームという架空の世界を外から見てきた者達が向ける汚れた悪意を思い出させ……たまらなく恐ろしくなった。


今の私には魔女の力はない、ただの人間のひ弱な少女に過ぎない……。


エリシアにもう二度と会う事のできない絶望と、周りから向けられる視線への恐怖が激しく精神を軋ませた。


組んだ腕で胸を覆いながら歩く私のお尻を誰かが撫でる。


堪らなく怖くなって駆け出そうとすると、強い力で髪を引っ張られ……気が付くと大柄なオーク族の男達に取り囲まれているのに気が付いた。


『ミレーヌ様の玩具か……まあ、なかなか悪くないんじゃねぇか?』


『人間なんざどうせ俺達の奴隷なんだ、何をしようが構わねえよ……』


『見世物に使うには良さそうだな、顔も肉付きもいい。雌同士の人間を殺し合わせるショーは最近じゃかなりの儲けを出してるからな……コイツは金になりそうだ 』


……こいつらは私を犯そうだなんて思ってはいない。


例えて言うなら、美しい毛並みと色合いを持つ小鳥を見るような目で私を見ている。そして、彼等は魔界の民らしく血と狂気に満ちた方法でそんな私達を愛でる。


「は、離して!触らないで!」


『ハナシテ、サワラナイデ!……だってさ!人間の言葉が理解できれば良かったが、生憎と俺達みたいな貧民はそこまでお利口じゃねぇんだ!』


『お前らの世界をブン盗る為にこっちは命懸けで戦ったっていうのに褒美らしい褒美もなく女王陛下は日和やがった!何が支配者らしい品のある統治だ!四貴族の連中に脅されて仕方なく戦争に参加したってのによ!戦友も大勢死んだし俺自身も人間の攻撃魔術で一生残る傷を付けられた!……』


みすぼらしい衣類を纏う男達の体には至る所に切り傷や攻撃魔術による損傷の跡があった。


牙を剥き出しにして憎々しげに語るオーク族の男の顔面には痛々しい火傷が大きく残されている。


彼等は私達を憎んでいる。心の底から、恨んでいる……。


私には彼等の言っている言葉の意味が理解できる。かつて魔女として万能の力を与えられ、世界を破壊する能力は失われていても知識だけは残っている。



だからこそ、余計に恐ろしくなった。


この男達や、周りに集まってきた肌の色が違う彼等にとって人間とは生かす理由のない下等種族なのだから……。



『クソが!むかっ腹が立ってきたぜ!……売り飛ばすのは止めだ!!この人間はこの場で生きたまま解体して殺す!!どこまで息が続くか賭けでもしようじゃねぇか!!』


……そん、な……私、今殺されたら……ただの人間になった今殺されたら……。


もう、二度と……本当にエリシアに会えなくなる……。



「い、いやっ!いやぁぁぁぁぁあっ!!殺さないで、殺さないで!!」


『あぁ!?いきなり何だ!?』


「何をしてもいいですから!!……お願いだから、命だけは!!……」


『うるせえな!!まずは耳を切り落としてやるからせいぜい良い声で鳴け!!』



……魔女になった時、私がオーク族に凌辱されている絵も見せられた。今にして思えば、あれは本当にバカらしい外の世界の人間達が生み出した悪趣味な妄想だ。


生粋の戦闘民族である彼等を満たすのは戦いと血だ……だから、私は人間が目障りな羽虫を叩き潰すようにして殺される。



ただ、それだけで……私の命が終わる……。



「……エリシアに……会わせて……せめて、せめて最後に……謝らせて!……お願い!」


『ゴチャゴチャとうるせえ!!さあ、お前達!!賭けの始まりだ!!どこを切り落とせば死ぬかをよく考えろよ!!』


熱狂的な歓声が周囲を包み込み、足首だの肘だの胸だの……まるでショーのように見物人が声を上げる。



怖い……死ぬのが怖い……このままエリシアに会えずに死ぬのが……堪らなく、怖い……。


ガクガクと震える足におしっこを伝わせ、涙と鼻水を垂らす私の耳に錆びたナイフが宛がわれた。



……エリシア……ごめんなさい……本当にごめんなさい……。


せめて、せめて……大勢の前で漏らしながらあちこちを刻まれ嬲り殺されるこの無様な死が……傷付けてしまった貴女の心を癒してくれるなら……。


耳に冷たい感触を覚え、硬く目を瞑ったその時だった。



乾いた破裂音が熱狂する観衆達の声を止めた。



「やはりミレーヌは統治に関しては素人以下のようだな……陛下の理想をまるで理解していない……」


呆然とする私が顔を上げるよりも早く、公開処刑を止めた何者かの名前を耳にナイフを宛がう男が口にする。



「……アルトリウス……!」


















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