泣きゲーRPGの世界に転生した私は廃人レベルのプレイヤー知識を活かし死の運命から推しの女キャラを救うために頑張って足掻こうと思います!五十三話:凌辱される世界
……空っぽ……私、空っぽに……なっちゃった……。
さむ、い……つめ、たい……。
レオナ……私の……内臓……ぜん、ぶ……ぜんぶ……だした……。
「……お前の穢れが詰まったこの管も……私はたまらなく、好きなんだ……」
……やめ、て……やめ……て……。
そんな、きたないの……わたしの顔に……押し付けないで……。
ゴムのような感触が、頬を……伝う……。
霞む視界の中で、レオナは……私のハラワタでごしごしと……雑巾で、床を拭くように……私の顔を、拭ってくる……。
汚いのが、広がるだけなのに……とっても、嬉しそうに……私を、穢す……。
好きな人に、汚される……好きな人に、犯される……。
好きな人に……殺される……。
もう、いい……もう、分かったよ……。
私の気持ちなんてどれだけ頑張っても報われない……私の恋は実らない……。
だったら、壊しちゃえ……こんな世界……。
「さあ、エリシア……お前の本当の気持ちを吐き出す時だ、この内臓よりも悍ましいお前の愛を……私に聞かせて?……」
……レオナに抱きかかえられて、持ち上げられると……ロープが切れるような音をだして、私が千切れる……。
凌辱され尽くして、穢され尽くして……最後には、千切れてしまった……。
半分になった体を抱き締めて、レオナは……笑っていた……。
ああ、何か……眩しい光が、見える……。
終わるんだ、この世界が……終わる……。
そして、また私は選択する……最悪の中の最悪を、悲劇の中の惨劇を、絶望の中で地獄を……。
あのしょうもない選択なんてするまでもない、今の私がしたい事は……決まってる……。
レオナ……貴女を……。
「……こ……ろ……ずぅぅぅっ!……」
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その夜、突如世界を雲の上すらも照らす閃光が包み込んだ。
コルセア王都上空に展開した魔界航空戦力の旗艦であるジーク・ルーネから射出された大口径魔導砲であるデアシュヴェータ・ディーヘルシェリン、” 剣の女王 "はその強大過ぎる破壊力から出力を調整した使用を条件に設置が許可された武装だ。最大出力による艦砲射撃では人間の大陸の三分の一を焼き尽くす試算が出され、最高権力者である女王も含めた国家の運営者達はその砲がリミッターを外して撃たれる事は永遠にないだろうと考えていた。
だが、その艦の開発責任者であるアルトリウスただ一人がその破滅を齎す一撃を本気で使用する事を念頭に置いていた。
船主側に構築された全長数キロにも及ぶ赤い術式陣はまるで長剣の鍔のように広がり、オーバーヒートを起こす寸前まで唸りを上げる魔動力炉から運ばれる魔力を砲門の巨大な魔石へと注ぎ込みその一撃を射出する手筈を整えた。
艦橋内では摩耗した感情のままに指を重ね合う男女が涙を流し、壊れた笑みでその一撃を放とうと最後のロックを水晶石へ指を這わせながら外す。
「世界が終わる、終わらせてやる……ラウル、アンタの望む世界は……オレが作るよ……」
「……アルトリウス様……世界を貴方の望むままに……壊してください……」
名も知らぬ女の肩を抱き寄せ、アルトリウスは荒く息を漏らしながら緑に輝く文字へ重ねた指を添える。
世界の空気が震える中、直視した者を消滅させる破滅の光は赤い術式陣の中央から放たれた。
濃縮された炸裂魔術がその船の艦首から覗く砲門から射出され、左右に赤い数式や文字列の並ぶ鍔を広げる王女の剣が人間の住まうその大陸へと突き立てられた。
その夜、世界のバランスが大きく崩れた。
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「愛とは何とも愚かしく、そして儚いものですね……」
……ああ、また……あの女の声……。
地獄みたいな現実から、更に私は地獄へと落とされるんだ……。
目をゆっくりと開けると、膝の上に置かれた私の頭を撫でるその女と目が合った。
……とても、穏やかで……慈愛に満ちた聖女のような笑みを浮かべていた。
嗚咽を漏らしながら私は懇願する……もう、こんな……こんな意地の悪い事はやめて欲しいと……。
「……イヴ……もう、やめて……ここから、出して……」
「……それは出来ません、貴女はまだ気付いてはいないのですから……」
「何に……気付けって言うのよぉぉっ……これ以上、どうしろって……どうすればいいのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
もう……無理……!!。
無理、無理、無理、無理、無理、無理ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!。
「どうせ私なんかじゃ無理だったんだ!!寂しがり屋の私なんかじゃこんな世界の人達の愛を受け止められる訳がなかったの!!どうせ私は誰もかれも、愛されて愛したいメンヘラよ!!だって仕方ないじゃない!!ゲームは現実逃避でするもんでしょ!?クソみたいな現実から逃げる為に、それだけの為にするもんなんでしょ!?あは、あはははははははははっ!!それとも何!?そうやってご都合主義とか楽が出来る展開を意識高い批評家気取りで否定して鬱展開を突っ込めば自分が偉くなったとでも思ってんの!?そんなの……そんなのは……!!」
……この女はきっと神様なんかじゃない、そう……この女はきっと……。
「……アンタはただの……人を傷付けて気持ちよくなる……レイプ魔よ……!!」
「……レイプ……魔……?」
「ええ、そうよ!!最低最悪のクズ!!楽しんでる人を否定して、作品が好きだという感想に下らない批判意見をぶつけて悦に浸る空気の読めない粘着アンチと同じじゃない!!好きな人は放っておけばいいのに傷付けたくて傷付けたくて仕方ない性根の腐ったクズよ!!……もう、放っておいて……好きにやらせてよ!!」
「……アスカ……」
心の折れた私にはもう全てがどうでもいい……こんなクソゲー、もうやめる……。
そもそも私がバカだった、愚かだった……ゲームなんかに夢を見てた私が間違ってた……。
ああ、私……私は……さっさと死ねば良かったんだ。
あの名前も知らない会社の子と同じように、ホームから身を投げて死ねば良かった。
こんなゲームに夢中になって死んだ結果がこれだ……あんな悪趣味なゲームにのめり込まなければ、こんな奴に目を付けられる事もなかったのに!!。
「ふ、ふふふ……ふふふふふふふっ!……」
「……なに、よ……」
「うふふ……ひ、いひひひひひひぃぃぃっ!!ぎひひひゃははははははははははははははははははははははははっ!!あぁぁぁぁぁぁああああひゃはははははははははははははっひひひっひいいいははははははははははははははははははあああああああああああああああああああああああっ!!!」
……この女がそんな風に笑うのを初めて見た……。
とても、恐ろしくて……怖くて……。
歯を剥き出しにして、目を大きく見開いて……ゲラゲラと感情を剥き出しにして笑うその女はまさに……悪魔だった。
身動きすら取れない私が震えていると、その悍ましい顔を間近に近付けて……逃がさないというように私の頬を両手で掴む。爪が食い込んで、痛むほどの力で……私を捕まえる……。
「愛する事とは強姦なのですね!!貴女も私も、卑しい強姦魔なのですね!?素晴らしい、実に素晴らしい捉え方です!!愛とは感情による侵略行為、愛とは信仰にして侵攻!!心の内へ肉を裂きながら愛を突き立て、滾る熱い愛を泣き叫び疲弊するその身へビクビクと痙攣しながら解き放つ!!……やがて生気のない瞳で涙を溢す相手を穢す様に耳元で囁けば……愛は意志とは関係なく構築される!!」
……何を……何を、言ってるの?……。
「貴女も散々人を狂わせてきたから分かるでしょう!?貴女を愛した女達を破滅に追いやって来たのだから理解しているでしょう!?世界が貴女を犯したのではない……貴女が世界を凌辱したのです、アスカ!!」
「……は?……」
「死ぬべき人間は死ねばそれでよかったというのに、そんな運命から貴女は彼女達を救った!!疲弊する乙女の心に肉欲を突き立て、生存という名の強姦を貴女は行ったのです!!貴女に犯されてしまったから、穢されてしまったから彼女達は二度と元には戻れない!!……もう、魔女に落ちるしかない……」
……わたし……わたしが……。
わたしが、わるいの?……
違う!!そんなはず、ない!!そんな事は……そんな……そんな……!!。
必死に声を上げようとしたその時……あの悍ましい感覚が、再び私を襲った……。
「がはぁっ!あ”っ、う”っ……」
……女の手が……まるでゲームのバグのように、私の腹部を突き抜けて……その冷たい指で、私の内臓を……。
私の中身を、かき回す
「死者の機能不全に陥った内臓器官へ素手で手を突っ込み!粘膜に爪を立てながら!貴女は、彼女達を……犯した……!」
「え”う”ぅぅぅぅっ!あ”、がっ、あ”、あ”ああああっ!……」
「腸内を蠢く汚物の躍動を感じながら!胃液で指を焦がしながら!肺の膨らみを感じながら!そして、心臓を握り潰す様に無理やり動かしながら!……愛によって貴女は死者を凌辱した!自分の満足出来るように彼女達を作り替えた!」
「はっ、あ"っ、あ"っ、ぢが、ゔ、わ"だ、じ……え"、お"ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
……違う……違う……助けたい、ただ……ただそれだけ……わたし……わたしは……!!。
必死に否定しようとしても、もう……鼓膜を凌辱するその声を否定する事が出来なくなっていた。
死ぬべき運命にある人を、生かそうという意志が……音を立てて崩れていった……。
強く握り締められた腸から……その中身が絞られて……排泄される……。
汚くて……気持ち悪い……。
無理やり失禁させられるその恐怖と屈辱、見せたくない姿までもを強引に引き摺り出される絶望……。
ああ、そうなんだ……これが……これが……。
「……これが、死者を凌辱するという事なんです……アスカ……」
「……あ……ぉ……ぉ"……」
「貴女が生かさなければ彼女達は醜い姿を曝け出す事も、悍ましい欲を剥き出しにする事もなかった……貴女が全て、それを目の前で吐き出させてしまった……」
……あは、あはは……。
間違ってたんだ……何もかも、間違ってた……。
もう、誰かを助けようとか……救おうとか……愛そうとか……。
そんなの、やめよう……。
意識が途絶える最中に、キィキィと軋む天秤の音が聞こえた。
もう、選ぶ必要などないのに……それでもこの女は私に選ばせる……。
< 魔女を殺して世界を見捨てる >
< 魔女を殺して自分の幸せを諦める >




