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泣きゲーRPGの世界に転生した私は廃人レベルのプレイヤー知識を活かし死の運命から推しの女キャラを救うために頑張って足掻こうと思います!三十六話:決別

ふふ……うふふふっ……。


あひゃはひひひひひひひひひぃぃぃぃぃぃっ!!。


「いぎゃああああああああああああっ!!わだじの、わだじのうでぇぇぇぇぇっ!!みぎて、みぎてぇぇぇっ、やだ、やだぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」


ああ……可愛い……♡


まるで羽根を毟られたトンボみたいに暴れて、藻掻いてる……。


裂かれたローブから覗く可愛い柄のパンツが、吐き出された失禁物で汚れた布切れが……余計にこの忌々しい女の全てを奪ったんだと感じさせて、私を興奮させる……。


思わず笑みを零すと、瞳を震わせて血の海で溺れるかつての想い人を見下ろすレオナへ声を掛けた。


「……どうするかはレオナが決めてよ……」


「……わ、私……が?……」


「……レオナが殺したくないならそうればいいし、許せないなら殺せばいい……」


「……わ、私は……」


その時、迫りくる死に耐えきれなくなったように彼女は最後の力を振り絞り絶叫する。


あまりにも情けなく、あまりにも惨めな命乞いをレオナへと吐き出した。


「た、たすけてよレオナぁぁぁぁっ!!あやまるから、ひどい事したのあやまるからぁぁぁぁっ!!しにたくない、しにたくないの!!いきていたいの!!おねがい、おねがい、おねがいだからぁぁぁぁぁぁ!!」


「……アレッ……サ……」


「ひ、いひひぃぃ……すきだよ、わたし、レオナのこと……まだ、だいすきだよ!!わたしのこと、すきにしていいよ!?たすけてくれたら、ひどいこといっぱいしてもいいよ!!ひひ、ふひひひっ、レオナだいすき、レオナだぁいすき!!」


この女はもう、二度と元には戻れない。


レオナはそんな残酷な事実を否が応でも直視せざるを得なくなり……かつて愛した女はもう自分のよく知る彼女ではなくなっていた、そしてその心にはもう……。


「ラウ、ルぅぅっ……たすけて……たすけてよぉぉっ!……あなたがいないと……わたし……」


本心から彼女が縋り付きたい相手は、もうレオナではなかった……。


「……もう……私なんて……見えてはいないんだな……」


「ま、まって!まって!ちがう、ちがうの!ほら、ラウルは私をたすけてくれから!レオナだってすき!しんじて、しんじてよ!」


「……エリシア、私は決めたぞ……この子は私が始末を付ける……!」


俯いたレオナの頬に、涙が一筋光っていた。


彼女はフラフラと足を進め、血の海に転がる切断された右手からダガーナイフを奪い大量出血により意識が遠退き始めたアレッサの元へ歩み寄る。


必死の叫びは混濁した妄言へと変わり、痛々しいまでの生への執着が余計にレオナの決意を強めていくように見えた。



「えへ、えへへぇぇっ……レオナ、だぁいすき……わたし、レオナ……だいすき……。だから、ころさ、ないで……ころさないで……もっと、ラウルのやくに、たつの……そうじゃないと、いきるいみが……なくなっちゃう……」


「……私は本気で、お前が好きだった……お前を待ち続ける為に……あの育成学校で教官を続けていたんだ……」


静かに膝を曲げたレオナはダガーナイフの刃先を相手の胸へと突き付けた。


それでもなお、精神が壊れたアレッサはうわ言のように涙と鼻水を垂れ流し彼女の心を抉っていく。


「ふへ、へへ……レオナ、わたしを……おかしてもいいよ?わたしのカラダ、ほしいでしょ?ラウルにもういちど、あわせてくれるなら……おっぱいもおしりも、くちびるも……レオナのすきにしていいよ?だから----」


「……さようなら……アレッサ……愛してた……」


「だから、ラウルならもういちどわたしの手と足を----お"っ、あ"っ!」


鈍い刺突音が響き、胸の中央に黒いナイフの刃先が沈み込む。恐怖と苦痛の最中を彷徨うアレッサは大きく背中を仰け反らせ声を漏らすと……やがて血の海の中に沈み体を僅かに痙攣させた。


その生命活動が完全に終わりを迎えた瞬間を見届け、レオナは歯を食い縛りながらナイフを引き抜いた。


どれだけ悔しくて、悲しい思いをしている事だろう。


自分が心から愛し、そして助けられなかった罪悪感を抱き続けていた女は身も心も他の誰かのものになり再び目の前に現れた。


可哀想で、あまりにも気の毒で……放ってはおけなかった。


震える手で開かれた瞼を閉じ、嗚咽を漏らすレオナの頭を私は胸元へと抱き寄せた。



「……また、会うのは……死んだ時だと思ってたのに!……なんで、なんで……こんな姿で私の前に……出てくるの……!?」


「……レオナ……」


「好きだった!今でも、大好きだった!……愛してた!……。ひっぐ……わだじ、いまでも……すきだったのに……アレッサぁぁっ……」


……私が、癒やしてあげたい……。


愛した人の気持ちと存在を同時に失った彼女を……目一杯愛して癒してあげたい……。


声を上げて泣きじゃくる彼女の頬に手を添えると、私は胸を突くような衝動のまま唇を重ねた。


より深く、その気持ちを私で塗り潰すように……唾液を絡めたキスで私を刻み込んだ。


焼けるような焦燥に息を荒らげながら、唾液で繋がる唇を離すと……私は彼女を抱き締めたまま立ち上がる。


背中に回した手を腰へと回し……そして、白い革製の生地に覆われた締まりの良い尻肉を両手で鷲掴みにした。


「ん、んんっ……エリ、シア……?」


「……私はレオナの事を絶対に手離したりしない……レオナのお尻も胸も髪も唇も眼球も……私は絶対に他人に渡さない……」  


「……エリ……シ……ア……」


……きっと、この脳を焦がすような焦燥感と渇望は愛情なんかじゃない。


光の消えた瞳を震わせ紅潮した頬を向けるレオナも、無意識のまま彼女のベルトのバックルを外し始めた私も……。


お互いがお互いの存在に大きく依存して起こる……共依存を抱いてる……。


彼女も私も、きっとその時に何かが壊れてしまったんだと思う。


人間として生きる上で抑えてきた理性や良心が吹き飛び、相手が欲しいという欲のままその身を貪る……。



私は、四肢の切断されたレオナの想い人の死体の横で彼女を抱いた。



--------


さてと、ここから先が今回の計画の総仕上げとも言うべき重要な局面……。


移り気で寂しさのままフラフラと他人に依存するエリシアの心を叩き折る今回の悪夢のクライマックス……。


鍵を握るのはラウル・ホワイトホース……汚れた英雄として彼にはもう一働きして貰う必要がある……。


あの後、偶然にも巡回に当たっていた軍所属の馬車に拾われた私達は応援を引き連れエリシア達の救助に向かっていた。ガタガタと揺れる車内では複雑な表情を浮かべたジャンが組んだ両腕に顎を乗せ俯いている。


全てが私の計算通りに進み、エリシア・スタンズの精神を軋ませるべく動いている……。


静かに目を閉じると私はその空間へと精神を預けた。


魔女のみが入室を許されるこの虚構の世界の隙間、神と魔女の語らいの場へと……。


周囲の世界がガラスの割れるような音と共に崩れ落ち、やがて私の周囲にはあの真っ暗な空間が現れる。



「今回も計画は滞りなく進んでいるようですね……エリシアはその独善とも言うべき愛を滾らせ周囲に溺れています……」


「ええ、本当にあの方は寂しがり屋さんなんですのね……縋り付ければ誰でもいい、心を癒やす事が出来るのならどんな人でもいい……それでいて邪魔する人間は容赦なく殺せる冷酷さも併せ持つとても不安定な心の持ち主……」


「だからこそ私はあの子の生き様を見たくなったのです……善と悪という単純な対立構図などあの子の心には存在しない、あるのはどこまでも果てしなく広がる虚無の闇……光すら飲み込んでいく貪欲な愛こそアスカという人の子に私が惹かれた理由です……」


「全てを飲み込む愛……まさに夜の曇り空のようにあらゆる光を覆ってしまう闇こそがあの方が周囲の人間を惹き付ける理由なんですわ。強いように見えてあまりにも脆く、そして儚い……並の光であればその闇に触れてしまったその瞬間から絡め取られて丸呑みにされてしまう……」


「ふふ、そんな闇を前にして恐れるどころか向かっていく貴女も同じ程の闇を抱えている魔女です……これは、愛という高密度のエネルギーをぶつけ合う闘争……魔女同士の戦争に他なりません……」


魔女同士の戦争……なるほど、愛に飢える人ならざる悪意に満ちた生命体に相応しい血と狂気に溢れた狂愛の衝突……。


どこまでもエゴと欲に溢れ、人間の繰り広げる戦争などより遥かに純粋で一途……そして残虐で露悪的……。


共に同じ価値観を共有する友人との語らいに笑みを浮かべ、創造の女神はガラスの小皿に入れられた真っ赤なキャンディを指に取ると……それを黙って向かい側の席に座る私へと差し出した。


彼女はこの私すらも従わせ、自分の望む劇を踊る事を強制している。


……この世界の真実を知らせてくれた彼女には感謝している、私を魔女にしてくれた事も感謝している……。


だが、私はどこまでもエゴと愛に満ちた魔女だ。自身の感情をどこまでも優先し、己の意志の赴くままにその力を行使する。


差し出された赤いキャンディへ突き出した舌を這わせると、水音を立てながら甘い味のする硬い菓子とそれを摘む指を舐め取った。この女は私の事すら支配するつもりになっている……私の抱く愛すらも、自分の思い描く劇の一幕程度に考えている。


「必死に誰かを求め、そして足掻く人間の姿とは……本当に尊く美しいものです……」


甘く息を漏らし、指へとしゃぶりつく私を見ながらイヴは目を細めた。


平伏する駒のフリを続けながら、私は更に考えを巡らせた。



この支配者気取りの傲慢な神を殺し、全てから解放された世界であの方と愛し合うその瞬間に至る為の理想の世界のために……。
















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