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泣きゲーRPGの世界に転生した私は廃人レベルのプレイヤー知識を活かし死の運命から推しの女キャラを救うために頑張って足掻こうと思います!三十四話:Collar

……また、この時が来た。


選択を下すこのタイミングが……。


今度は決める……ちゃんと決める……。


エルメスの時みたいにはならない!。本当に大切な人を守る為に……アイツを殺す!!。


アイツは私のレオナに汚れた手で触れた


アイツは私のレオナに涙を流させ悲しませた


アイツは……あの女は……



私のレオナを……犯そうとした……!!。


私の……私だけのレオナを……奪おうとした!!。


「最初の時とは違い、貴女の中で選択の答えは決まっているようですね……」


「イヴ……ただでさえ胸糞悪いこのゲームをもっと悪趣味にしてるのはアンタの仕業ね?」


「さて、何を仰っているのか理解しかねますね……私は迎えるべき展開を用意しているに過ぎません。この悲劇と苦悩に満ちた劇のシナリオは私が描いたものではありませんので……」


「……ふざけ……るな……!」


その苛立ちを煽るような声を聞き、背後に現れたその女へ怒りに満ちた目を向ける。


クスクスと笑い声を漏らすその女の前まで足を進めると、私は滾るマグマのような激情を相手へとぶつけた。


「アンタがどんな手を使って私の心を折ろうとしても無駄よ!レオナもティナもジャンも、私の大切な人達は私が守る!誰にも奪わせないし誰にも渡さない!……」


「……ふふ……やはり貴女はとても面白い人ですね……。最初は守りたいという純粋な想いだった筈が、今度は誰にも渡したくないという欲になった……」


「うるさい!!アンタが奪ってくからじゃない!!せっかく守ろうとした人をアンタが奪ったからじゃない!!……もう、私は救った人を死なせたくないの!!アンタの露悪趣味な鬱シナリオの犠牲にさせたくないの!!……」


「……アスカ、貴女は他人を救う事によって自分の心を救おうとしている……。助けるという目的を果たす事によって自分の心を救おうとしているのですね……」


……うる……さい……。


うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!!


冷たい指先が、私の胸を撫でた。



「貴女のこの世界での生き方は……快楽のまま喘ぎを漏らす唇から唾液を光らせ指先で濡れた股ぐらを慰める自慰行為そのもの……」


「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!ゲームなんだからプレイヤーの私が気持ち良くなって何が悪いの!?ゲームは現実逃避の為にするもんでしょうが!!自己満足で何が悪いの!?現実の男にトラウマがあるからゲームの女の子のキャラクターを好きになって何が悪いの!?陰口を叩いたり陰湿な嫌がらせする三次元の女より自分を好きで居てくれる架空の女の子を助けたいと思う事の何がいけないのよ!?どうしようもなく現実が悲しいから私達はこの架空の世界で心を保ってんのよ!!……私は……私は……!!」


……真っ黒な涙が私の両目から溢れ……地面にポタポタと落ちた。


それが如何に身勝手で独善的な考え方化なんて分かる……。


でも、そういうもんでしょ?。


せっかく好きなゲームの世界に入り込めるなんていう機会を得たんだから、ずっと押し殺してきた色々な物を吐き出したっていいじゃない。


こんな風にゲームの世界に行ったり、ファンタジーの世界に放り出されて強力な能力で無双する話はよくアニメや漫画で人気だった。荒唐無稽なそんな話に皆が惹かれるのはそれだけ現実の世界に多く不満を溜め込んでいるからだ。


私だって……私だって……可愛い女の子にチヤホヤされたい!……ムカつく敵をぶっ殺して、三次元の嫌な女達なんかより髪も肌も綺麗な可愛い女の子達に好かれたい!。


それの何がいけないの!?人間だったら誰だって考える理想の現実逃避じゃない!!。



私の好きなように……やらせてよ!!。


「私はずぅぅぅぅっと苦労して苦労して苦労して苦労して……苦しみ続けてきたの!!母さんが死んでから一人で身の回りの事も全部やった!!バイトだって頑張った!!学校でも誰もイジメたりしなかった!!むしろ皆に気味悪がられてた!!ようやく出来た家族との関係もギクシャクして、それが嫌だったから上京して!!……それで、もっと苦労した!!男も女も嫌なヤツばかりの職場で誰よりも頑張って仕事をしてた!!そして……そしてそんな現実の中で私なんかが誰かを助けられるのがこのゲームなの!!だったら普通に救わせてよ、私の思い通りにさせてよ!!……」


「私にそれを言われても困りますね……さっきも言った通り、私の描いた物語ではないのですから……」


「うるさいっ!!私は皆を助けて皆に感謝されて皆に愛されたいの!!引きこもりのニートが現実逃避で書いた小説だって女の子にモテてチートで思い通りになって好きなように暴れられるんだから誰よりも苦労した私がそういう願望を持って何が悪いのよ!!……誰にも否定なんてさせない……身勝手だなんて言わせない!!」


「……貴女は気付いてはいないのですね……自分がどれほど愛されているかを……」


「ええ、好きになってくれる子は大勢居る!!ティナもエルメスもジャンもレオナも皆私が大好きなんだもん!!……アンタが余計な邪魔さえしなければ私はあの子達を全員幸せに出来るの……余計な邪魔さえしなければね!!」


肩で息をしながら、私は軋んだ心の内に溜まるエゴを全て吐き出した。


……何もかもが上手く行かなかった現実への憎悪と、そんな現実を忘れさせてくれるこの世界への依存心を何もかも吐き出した。


みっともない言葉を並べ立てさぞ相手は愉快に笑っているだろうと思い下に向けていた顔を上げると……。



「……貴女の事は愛していますが、だからこそ……その傲慢なエゴが私の胸を掻き毟る……」


「……私はアンタが大っ嫌い……人の気持ち良い事を邪魔する悪趣味な死神としか思ってない……」


「……貴女はまだまだ、その身を業火に焼かれるべきですね……そんな貴女には痛みを伴う選択を与えましょう……」


女は指を鳴らし、再びあの天秤を目の前に出現させた。



” 黒い魔女になる “


“ 白い魔女になる ”


……なに、これ……。


黒か白か……そんなの、選ぶまでもないじゃない……。



私の眼球から流れる涙は、こんなに……こんなに……。




重油みたいに黒いんだから




-------


世界が再び動き出す。


全長5メートルにも及ぶ殺戮の刃を構え、灰色の肌を持つ巨人が駆けた。


武装した森林の守り神は人間の悪意によって植え込まれた狂気と殺戮欲求の命ずるままに相手を肉片に変えるべくその刃を振るう。


レオナが咄嗟に隣に立つ相手へと目線を動かした瞬間、まるで目の前で爆発した魔術の衝撃波が伝わるような感触を覚え膝を突いた。



隣で、何かが爆発した。


あの巨大な怪物が振るった刃が振り下ろされたのだと理解したレオナは、その光景を見て思わず言葉を失った。



「……レオナは渡さない……誰にも……渡さない……」



覚醒した黒い魔女を視認し、レオナ・ハミングバードは疲弊し削られた精神がグチャグチャに混ざるのを感じた。



黒いドレスを纏い、自身の欲に染まった魔女は……その髪の色や瞳の色すらも変え手にした武装を握り狂愛を叫ぶ。





「お前らをぶっ殺してやる!!殺してやる!!一人残らず殺してやる!!そして、レオナは私が抱くんだ!!お前なんかに渡さない、レオナは渡さない!!」















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