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泣きゲーRPGの世界に転生した私は廃人レベルのプレイヤー知識を活かし死の運命から推しの女キャラを救うために頑張って足掻こうと思います!二話:新しい私

「---きなさい!……---ア!……」


……あれ?……私、私は……。


えっと……どうなったんだっけ……。



「エリシア!起きなさい!」


「ひゃ、ひゃいっ!」


思わず体を跳ね起こした私は……目の前にあった相手の顔に気付かず猛烈な勢いで額をぶつけてしまった。


鈍い音と共に激痛が走り、目に涙を溜めつつ額をさすり呻く相手へと目線を向けた。



そして、思わず息を呑む。



「い、いたた……本当にあなたは、いつまで経ってもまともに起きれすらしないんですのね……」



……あ……あ……あ……。


う、う、う……。



「う、う、う……う……」


「さっきから何なんですの?どうせあなたの事ですから、まだ寝ぼけて---ふぎゅっ!」


「う、ううううううう、うそぉぉぉぉぉぉぉおっ!!?ティナ・ガードナー!?ティナが目の前に居るぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」


あ、ああ……これは……これは……。


夢?……夢なの?……夢じゃないなら……。



天国?。


「い、いい加減に起きなさいな!!寝ぼけているとはいえ、この高貴な生まれの私に抱き着くなど……な、なんて……破廉恥な!……」


あ、ああっ!……やっぱりティナだ……本物、本物が……ゲームのグラフィックのまま私の前に……!。


ティナ・ガードナーは原作である家庭用ゲーム機ソフト『ティアーズ・オブ・リーブラ』では最も初期にパーティーメンバーに入る女の子だ。主人公を女の子に選択すると加入する子であり、人間の国家であるコルセアの首都にある騎士育成学校の寮部屋で生活を共にする戦友兼親友……そして、そして……。



「……綺麗……」


「は、はあ!?」


……冗談じゃすまないぐらい……綺麗な子だ……。


元々は貴族のお嬢様だったものの政治的な策略によって陥れられ没落してしまった実家を再建するべく騎士育成学校の戸を叩いた彼女は苦労人であると同時にひたむきな努力家だった。富も名声も全てを失ったゼロからのスタートだというのに、ティナは血を吐くような努力を続けた。そして、今では騎士育成学校のクラス中では三本の指に入る程の実力者になったのだ。


やや高慢ちきな態度やお嬢様言葉は彼女の必死の強がりだ。その裏では人の何十倍も努力をしている生真面目で優しい……本物のお嬢様。


士官服から覗く真っ白な肌は雪のような儚さを感じさせ、腰まで伸びる眩い金色の髪は今の立場がどうであれ目を奪われる品位を漂わせていた。


彼女も当然のことながら、私に刺さる推しキャラクターである事は言うまでもない。


「ま、まったく……目はいい加減に覚めまして?」


動揺しつつもゆっくりと私の体を引き離し、普段と違う様子を見せる私を心配し顔を覗き込んで来る。


あ……顔、良……いい、匂い……このままだと私、死ぬ……。


「しっかりしてくださいまし!今日は実戦も兼ねた戦闘試験の日なんですもの!……あなたの事を色々と言う人も居ますけど、私は部屋を共にする相棒としてあなたの成長を見届けてきましたわ……」


激励するように力強く言葉を掛け、いきなり優しく微笑みながらほっぺに手を添えてくるもんだから……これで落ちない女なんていないだろう。


私が廃人レベルでこのゲームをやり込み、キャラクターの細部まで知っている人間じゃなきゃ今頃恋に落ちている。


知っていても、落ちてるんだけどね……。


「さっ、エリシア!自信を持って!今日の試験であなたを小馬鹿にしてきた方々を見返してやりましょう!」


「う、うんっ!頑張るよ!」


今の私はこのゲームにおける女性キャラクターの主人公、エリシア・スタンズ……元のゲームでは何をしても失敗続きなイマイチな冴えない女の子の騎士見習い。


しかし、それも今日で終わりだ……このゲームを発売から一ヶ月で完全攻略した廃人ゲーマーの私が中身であれば三日もあればクリアは出来る。


でも、普通にクリアした所で恐らく意味はない……こうして私がこのゲームの中に飛ばされた意味はきっと別にある。



このゲームで命を落とす多くのキャラクターを救う……きっと、私はそんな使命を託されてこの過酷な世界に飛ばされたのだ。



-------


えへへ……えへへっ……。


「……や、やっぱり今日のあなた……ちょっと変ですわ……」


「んふふー、そうかなぁ?……」


「いつも以上に……その……なんというか……」


「きっと気のせいだよぉ……♡」


彼女に手を引かれつつ歩く私はきっと顔中が蕩けている事だろう。


あれこれと小言を言いつつも世話好きのティナに髪を梳かれ、更にはその良すぎる顔を間近に向けつつ士官服のボタンまで嵌めてもらい、手を繋いで一緒に食堂まで向かう……。


きっと彼女はそんな乙女心を揺さぶるような事を極当たり前のようにしているのだから、本当に心が澄んだ身も心も美しい人なんだと改めて感じる。


ティナ・ガードナーはクラス中の憧れ、故に相部屋だからといって彼女の厚意を独占する私を気に入らないという人間も多い。


「ちょっと、エリシア!またそうやってガードナー様にベタベタくっついて!」


「自分の立場ってものを理解してないのかしらァ?落ちこぼれのアンタにその方の隣は相応しくないのよぅ……」


「キャハハッ!ねえ、ガードナー様ぁ、そんなチンチクリンなんて放っておいて私達にお昼からの戦闘試験で華麗な剣裁きをお教え頂けませんかぁ?」


うわ……この子達もそのまんま出てきた。


煌びやかな宝石類を光らせ揃って髪型は縦ロール、そして腰にはこれまたゴテゴテとした装飾やら宝石の眩しいサーベルを携えた三人が私達を取り囲む。


意地悪い笑顔を浮かべて廊下を歩いていた私達を取り囲むのはこの騎士育成学校でティナを守ろうと勝手に結成した親衛隊の面々だ。


悲しい事に、彼女達は名前すら設定されてない。


……何故なら、ゲーム本編ではその後に……。



「な、何よ……人の顔をジロジロ見て……」


「うーん……正直アンタ達には私もムカついてたし、ちょっとああなってスカッとしたけどなぁ……」


「キャハハッ!いきなり何なのぉ?」


「……死なせるわけにはいかないもんね!」


「はぁ?さっきから何なのよぅ?」


怪訝そうな顔をする三人に向けて、私は力強く言い放つ。



「貴女達も助けるよ!ズッコケ三人組さん!」 


私は誰も見捨てない。絶対に……。


例えそれが……この残酷で無慈悲な世界を伝える為の捨て駒だっとしても私は見捨てない。


死んでもいい命なんてない、死んで刻まれる事なんてロクでもない事に決まってる。



私は皆を救う力も、知識もある……なら、誰一人取り零さない!。


このゲームの中に私が放り込まれた意味……きっとそれは……。


「……私は、皆を助けるよ!……絶対に!……」


「エ、エリシア?……」



その場の誰もが、唖然としていた……でも、これでいい……。


私は隣に立つティナの手を取ると力強く歩き出した。


この後の下準備には少し彼女の力が必要だ。


 











  




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