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泣きゲーRPGの世界に転生した私は廃人レベルのプレイヤー知識を活かし死の運命から推しの女キャラを救うために頑張って足掻こうと思います!二十話:LOVE CLAIM

長い、長い眠りから目を覚まし私は瞼を開ける。


世界の再構築が終わり、再びエリシアを閉じ込める檻の準備が整ったようだ。


其処は寮部屋の一室だった。以前の世界では血と死体に溢れたその地獄はイヴという創造主の手により再度構築される。人も、建物も、歴史すらもあの女は自由に変える事が出来る。


今はその力に甘んじて言う事を聞いてはいるが、必要な時が迫ればあの女も殺してやろう。


私が最も欲し、最も手にしたいのは……この子しか居ないのだから……。



「……エリシア……」


目線を横へ動かすと、苦し気な声を漏らし彼女がベッドに横たわっている。彼女の肉体も再構築を終え再びこの世界に現れた。


以前の世界で経験した出来事を悪夢として見返しているのか、その白い素肌には汗が浮かび……硬く布団を握り締め悍ましい光景に恐怖する。


ああ、なんて……なんて、愛くるしい……。


苦しんで怯える貴女こそが、救えなかった命を悔いるその姿こそが……私が最も愛した貴女……。


足音を殺しながら私は彼女のベッドへと歩み寄ると、私は疲労と疲弊により目を覚ます事のない彼女を犯すと決めた。


着ていた寝室着のボタンを外し、小刻みに揺れるその胸を露わにする。


私を刻み付けたい……本人すら気付かぬ内に、完全なる無意識へ……私という存在を刻み付けてやりたい。


もっと……もっと貴女を……。



「……さあ、この世界でも……いっぱい遊びましょう……エリシア……」


甘く息を漏らすと、私はその頬を伝う涙へと舌を這わせた。



------


深夜の寮の廊下に小刻みなノックの音が響いた。


その部屋で鬱々とした時間を過ごしていた少女は怪訝に思いつつも続けて聞こえた声に思わず体を震わせる。


『夜分遅くに申し訳ありませんわ、ティナ・ガードナーですが……』


「ガ、ガードナ……様……!」


緊張のあまり震えた声を漏らしつつ、彼女は部屋の鍵すら掛け忘れてしまう程に疲弊した己の精神状態を呪った。


コルセットすらも外した上下の下着のみという恥ずべき格好で突然の来訪者を迎え入れる事となった少女は驚いたように口元に手を添え立ち尽くすティナ・ガードナーを前にし体を硬直させた。


「ま、まあ……着替えの途中でしたの?……」


「あ、あの……そうでは、なくて……」


「……ひどい顔ね、いつも丁寧にセットしていた髪も台無し……あの出来事はやはり貴女の心に深い傷跡を残してしまったんですわね……」


以前の世界でエルメスという名を与えられたその少女は、腕を抱きかかえ当時の恐怖を思い出しているのか白い腿の上に雫を落としながら崩れ落ちた。


そして、懺悔するように声を振り絞る。


「……何も、出来なかった!……怖くて、立つ事すら出来なかった!……私、私……!」


そんな彼女の肩に手を置くと、ティナは静かに耳元へと顔を寄せた。


そして、相手の脳へと侵食させるように……その甘い言葉を響かせる。


「……前の世界でそうだったように……今度はエリシアではなく、私に溺れなさいな……」


「……ま、前の……世界?……」


「……大丈夫……今度は辛い思いなんて貴女にさせない……何も分からないまま、何も気づかないまま……全てが終わっているから……」


「あ、あの……ガードナー様、何を---んんっ!?」


その声は、魔女の口吻によって封じられた。


目を見開く彼女の眼球を赤く輝く魔女の瞳が捉え、その肉体からあらゆる力を奪い去る。


魅了の魔術を用いた魔女のキスは、一人の少女を操り人形へと変えた。


水音を立て唾液を混ぜ合いながら、少女の心はまるで靄が掛かったかのようにティナ・ガードナーという名の魔女に浸食されていく。涙に濡れる彼女の瞳からはやがて光が消え、完全に身と心が魔女に屈服する。


唇を離すと、自身の支配欲求を満たすかのように魔女はその額にキスをする。


黒く濁った瞳をした少女はその支配を悦びを以て受け入れた。


「名無しではあまりにも可哀そうだから、私もエルメスと呼んであげますわ……」


「……はい……ガードナー……ひゃま……」


「良い子ね、エルメス……それじゃあ、私の言う事を聞いてくれる……?」


「……ガードナーひゃまの……いうコトなら、なんでも……」


魅惑の魔術に支配されたエルメスの言葉を聞き、魔女はまるで三日月を横にしたような邪悪な角度に唇の両端を吊り上げ嘲笑う。その胸に滾る悪意と悦楽を隠そうともせずに、エルメスと呼ばれた彼女の尊厳を凌辱する。


魔女は、目の前の相手の頬を両手で覆いながら死刑宣告を告げた。



「……助けたと思っていた貴女が自殺すればあの子がとても悲しみますの……だから、そこの机にあるペンを喉に突き刺して気道を抉ってくださる?……」


「……はい、ガードナー……さま……」


まるで、その命令が至上の喜びであるかのように……エルメスは濁った眼を細め歩き出した。


そして、机の上に置かれたペンを手に取ると喉元へと宛がった。


躊躇いも、迷いも、恐怖すらもない……魔術によって操られた彼女は小さく声を漏らしながら主の命令を実行する。


机に赤い液体が飛沫となって散った、置かれたノートや書物を赤色に汚し……エルメスは何度も何度も、その命令を実行する。


粘液質な刺突音とくぐもった呻き声を聞きながら瞳を赤く輝かせる魔女は数時間後に新たな世界で覚醒する愛する人の悲鳴に思いを馳せ、歪み切った愛を発露させた。



「うふふふっ、裂けた喉を晒しながらペンを突き立てたこの子を見て……貴女はどんな風に絶望するのかしらね?エリシア、貴女には誰も救わせない……私以外の誰も救わせたりしませんわよ?……ふふっ、うふふふふ……ぐぎひひひひひひひひ、きひひひひひひひひひひひぃぃっ!……」



------


「い、ひああああああああああああああああああっ!!!」


絶叫と共に、私は体を跳ね起こした。


体中が痛く、頭が割れそうだった。


口を大きく開き……涎を垂らしたまま激しく咳き込みながら呼吸を乱す……。


あ、あれ?……私、まだ……生きてる……?。


なんで……なんで?……なんで……。



なんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうして……?



「エ、エリシア?……どうしたんですの?……」


……あ……れ?……。


……この、声……。


まさ、か……まさか……。


ゆっくりと視界を移すと……そこには……。


美しい金色の髪を揺らしながら、守る事が出来なかった大切な人が私を心配そうに見つめていた。


「……ティ……ナ……!」


「い、いったいどうしましたの?朝から大きな声で……」


「ティナ……ティナァァァァァァァァァァァァァッ!!!……う”、う”ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」


「エリシア!?……」


私は、その胸に飛び込むと……再び大きな声を上げて泣いていた。


ごめんなさい……ごめんなさい……。


助けてあげられなくて、守れなくて……ごめんなさい……。


床へと倒れ込んだティナは……突然泣きついてきた私に驚きつつも、小さく声を漏らしながら優しく頭を撫でてくれた。


今度こそ、私は……私は守る……ティナもこの子も、皆を守る……!。














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