表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/64

泣きゲーRPGの世界に転生した私は廃人レベルのプレイヤー知識を活かし死の運命から推しの女キャラを救うために頑張って足掻こうと思います!十七話: I believe what you said


……エル……メス……。


消え、た……消えちゃった……。


黒い羽根を散らしながら……魔女と化した彼女の体は……夜の闇に散った……。



友達に……なりたかった……。


友達になりたかった……のに……。



「……ゔ、ゔぅぅぅぅぅぅっ!……エル……メスぅぅぅっ……」


ティナには、あまり弱い所を見せたくなくて……他の人にだって、私はずっと気を使ってた……。


でも、エルメスには……何でも話せた……。


弱音や悲しさ、僅かな時間であっても確かに私は……人前では見せられない部分をあの子へ曝け出せた。


だけど……私……。



「ゔぅぅぅああああああああああああああっ!!あ"ゔぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!……」



その日、生まれて初めて出来た親友を……私は殺した……。


また、一人ぼっちになった……みんな、居なくなった……。



もう、嫌だ……嫌だ……疲れた、疲れたよ……。


お願いだから、やり直させて……皆が生きてるあの頃へ……戻して……。


お願い……お願い……。


地面に転がった終焉の剣を手に持つと、私はその刃を首筋に宛てがい……ボンヤリと夜空を見上げた。


そして、願う……その死の先に、もう一度やり直すチャンスがある事を祈る。



「……ティナ……ごめんね……みんな、ごめんね……」


役立たずでごめんなさい、何も出来ずにごめんなさい……。


もう一度チャンスがあるなら……その時は……その時こそは……。


小さく涙に濡れた声を漏らすと、私は剣を引いて己の首を刎ねた。



--------


「随分と派手に散らかして……遊び盛りの子を持つと母親は苦労するものねですね……」


その世界へ肉体を現界させた神は一つの街を吞み込んだ炎により赤く染まる空を見上げると、呆れるような言葉とは裏腹に愉快で堪らないといった笑みを漏らす。


静かに足を進めると、創造の女神は足元に転がる彼女に気付き静かに手を伸ばした。



「エリシア……だから私は言ったではありませんか、選ばなければより最悪な未来が待っていると……」


神の与えた力を失い、髪色や衣類が元の状態に戻ったエリシア・スタンズの肉体は仰向けに倒れ込み……切断された首元から赤い血の海を広げ無残な有様を晒していた。


その髪を撫でながら目を細めると、イヴは目線を向ける事無く背中越しに残されたもう一人の魔女へ語り掛けた。



「あなたを選ばなかった事は意外でしたか?……ティナ・ガードナー……」


その声に応えるように……死んでいた筈だった亡者がゆっくりと身を起こす。



「いえ、選べるはずがないと……私は信じていましたわ……。そうでなければ、私はこんなにも……あの子を愛してはいませんもの……」


その胸に向こう側の景色すら伺えるような大穴を空けながら、立ち上がったティナ・ガードナーは血塗れの唇を吊り上げ歪な笑みを漏らした。


人間であれば死んでいる筈の状態であっても、彼女は悠然と歩を進め……そして、真っ赤な血で汚れた自身の胸元へと愛おしい少女の頭部を抱き寄せる。


絶望と悲しみに染まる彼女の頭部を両手で持ち上げると、青ざめたその唇へと自身の狂愛を刻み込むかのように唇を重ねた。



ティナ・ガードナーもまた、人間の身と心を捨てていた。


一人の少女を通して彼女を操る異なる世界の人間へ深い愛情を向け……やがてはその愛を狂気へと変質させたこの世界に生まれた最初の魔女。


狂愛の魔女、それがティナ・ガードナーという少女だった。



「外側からこの世界へと向けられる悪意と欲の中で、あなただけは……アスカという名の貴女だけは誰よりも私の死を悲しんでくれた……次こそは私を助けるんだって、涙を拭って力強くそう言ってくれた……。この世界の真実を知った私がその言葉にどれだけ救われた事か、どれだけ希望になった事か……」


エリシア・スタンズというプログラムを通して、その向こう側に居る佐渡明日香という一人の女をティナは深く愛していた。他の人間が向ける欲望の渦の中で、その女性唯一人があらゆる世界の中で自身の死に涙を流し悲しんでいたのだから。


そうして、共通した目的を持つ魔女と神は佐渡明日香という一人の人間を陥れる為に手を結ぶ事にした。


「私はアスカを通して人間の本質を見たいと思っています……人間とはどう足掻いても闇に落ち、汚れていくものだと信じていますから……」


「私は……私は……ひひっ、いひひひひひひひぃぃっ……」


唇の端を吊り上げ、魔女は息を吸い込むとその焼け爛れた恋心と泥に塗れたどす黒い欲望を吐き出した。



「あなたの全てが欲しい!!エリシア・スタンズの肉体を通して発露するあらゆる感情が欲しい!!あなたの何もかもが欲しい!!涙も、血液も、汗も、唾液すらも一滴残らず私のモノ!!髪も臓器も肌の一片に至るまでぜぇぇぇんぶ私のモノにしてやりますわ!!いひひっ、えひゃははははははははははぁぁぁぁぁぁっ!!私はエリシアを通して貴女を愛する、寂しがり屋で泣き虫な貴女の全てを支配する!!私だけを見て、私だけを考えて、私だけに縋って、私の死に苦しめ!!壊れろ、壊れろ、もっと壊れろぉぉぉぉぉぉおおっ!!さあ、行きましょうエリシア!!次の地獄へ行きましょう!!ずっと一緒ですわ、一生一緒ですわ!!地獄の中でも絶対にあなたを離しませんわ!!……ひ、ひひひっ!!ふひゃへへへへへへへへへへへへへへへへ、ぎひひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃははははははははぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああっ!!」


エリシア・スタンズの頭部を抱いたまま、狂気に満ちた絶叫を上げ自らの魔力を使ってティナ・ガードナーの肉体が燃えていく。


狂気的な愛を爆発させながら燃え盛る魔女を見つめながら、愚かしくも美しい人の業を見届けた神は静かに指を鳴らした。



----リセット、世界を再構築する。









 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 静かに震わせる空気 意味深な沈黙 光の歪曲が満ちて 失ったロジック [気になる点] I believe what you said 戻りたい場所 明確な景色 あの子が欲しいとあざ笑った […
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ