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 アレンは思い出していた。『竜の爪』から追放される前日の夜の事を。


 「それで、何の用だ?」


 人気の少ない路地裏にアレンは呼び出されていた。


 「ローラ」


 元パーティーメンバーの神官ローラから話があるとアレンは呼び出されていた。


 「アレン。私はアナタの事が好き。だから……恋人になってくれない?」


 「パーティ内での恋愛は良くないって事はわかってるよな?」


 冒険者の間では良く在る話だ。パーティーの男女が苦楽を共にした結果恋仲になる。

 だがその状態のまま依頼や冒険をこなすとどこかしらで綻びが生まれる。

 恋人同士だから贔屓する。幸せそうで嫉妬する。恋人を守るために犠牲になる。

 他にも問題を上げればキリがない。

 だからパーティー内での恋愛は良くないことだと多くの冒険者は知っている。

 アレンもローラもそれは知っている。


 「だから、その……何処かで一緒に暮らすのはダメ?」


 これも良く在る話だ。パーティー内で恋仲同士になったメンバーが脱退して夫婦として農業でもしながら暮らす。定番中の定番だ。討伐や冒険をしない安全な日々が待っている事だろう。


 「悪いが冒険者を辞めるつもりは無い」


 「私の事、嫌い?」


 「そういうことじゃない。ローラは魅力的な女性だよ。それでも今の生活を手放したいとは思ってない」


 アレンは駆け出しからここまで頑張ってきた。沢山の出会いと別れが在って、辛い事や楽しい事が在って、今が在る。冒険者ならば命の危険は少なからず在る。だが今のパーティーメンバーなら無理をしなくてもドラゴンや一つ目巨人なんかは倒せる程優秀だ。化け物相手の大立ち回りは楽しいし、それで沢山金が稼げるなら文句は無い。


 「ローラだって今の生活は楽しいだろ?」


 「そうね。でも、何処かで失敗したら簡単に死んじゃうのよ?」


 「冒険者なんてそんなもんだ」


 「だから、一緒に冒険者を辞めて一緒に暮らして欲しいの。傍に居て欲しい。ダメ?」


 「悪いな」


 「じゃあ、その……私の事を好きにしていいって言っても?」


 「そういうのは間に合ってる」


 「私より娼婦の方が良いってこと?」


 「なぁローラ。この話はもう終わりにしないか?」


 「何で娼婦は良くて、私はダメなの?」


 「ローラ。もうこの話は終わりだ」


 「アレンになら私抱かれても……」


 「はぁ……。ローラ。俺はお前の事を好きだなんて思ってないんだ。これ以上は迷惑だからやめてくれ……」


 アレンのその言葉を聞いたローラは目に涙を浮かべていた。そんな彼女は涙を隠すように人気の無い路地から出て行った。

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