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 魔王城の玉座の間、魔王と側近であるアトラとメイは勇者一行が近くに来てることを知り警戒態勢を取っていた。偵察としてメイの分身体を向かわせ様子を見ていたが、唐突にメイは声を荒げる。


 「魔王様!! 御逃げ下さい!! ツルギ様がやられました!!」


 その言葉を聞いた魔王とアトラは驚いた表情を浮かべる。

 それと同時に玉座の間に続く扉が大きな衝撃音と共に破壊され、一人の少女が入って来た。

 手には二本の青白い炎を纏った聖剣、身体は強大な魔力で覆われた赤い髪の少女と目が合う。

 

 ――ああ、彼女が私を殺しに来た勇者なのですね。


 全てを理解した魔王は諦めた表情を浮かべる。そして側近の二人の顔を最後にもう一度記憶に残し勇者と交渉を始める。


 「初めまして、勇者様」


 「初めまして。ねぇ、君が魔王なの?」


 「はい、私が魔王です」


 「そっか……」


 そう呟いてユナは魔王の方へと歩き出した。それを止める為にアトラとメイは動こうとするが、魔王は二人に命令する。


 「二人共、動かないで下さい。命令です」


 アトラとメイは「魔王様!!」と叫び声を上げる。ユナはその光景を見ながらも魔王の前へと立つ。


 「逃げないの?」


 「どうせ逃げ切れないでしょ?」


 「そうだね」


 「ですよね」


 魔王は最後にユナに頼みごとをする。


 「一つ、お願い事をしてもよろしいですか?」


 「なに?」


 「殺すのは私だけにして貰えないでしょうか? 私の配下は見逃して頂けると嬉しいのですが」


 「でもきっと、君を殺したら二人は私のことを殺そうとするよ? それに魔族は人間を滅ぼそうとするでしょ?」


 「では、二人には人間を傷つけないよう命令します」


 そう言って魔王は二人に再度命じる。


 「アトラ、メイ、アナタ達は今後人間を傷つけてはいけません。これは命令です」


 魔王が再度命令するとアトラとメイは悲観な叫びで訴える。

 

 「魔王様!! いま一度お考え直しを!!」


 「魔王様!! おやめください!!」


 そんな二人の悲観な叫びを無視して魔王はユナとの会話を続ける。


 「これで二人は人間を傷つけることは出来ません。もしも私が死んで二人が人間に危害を加えるようでしたらアナタが直接処罰してください。私は約束を違えたということで」


 理性的に会話をする魔王、魔王が犠牲になろうとしそれを悲観する魔族、そんな光景を見たユナは魔王に問い掛ける。


 「ねぇ、なんで魔王は人間を滅ぼそうとするの?」


 「歴代の魔王はそうみたいですけど、私は人間を滅ぼそうなんて考えて居ませんよ」


 「じゃあ、なんで人間を滅ぼさないの?」


 「そうですね……滅ぼす理由が無いからではないでしょうか?」


 「それなら、なんで魔族と人間は争うの?」


 「何故でしょうね? 私にもよくわかりません」


 「そっか……」


 魔王とそんな会話をしているとユナに掛けられた補助魔法と補助奇跡の効果が切れる。

 ユナは困惑した表情を浮かべながらも魔王にこう告げる。


 「ちょっと待ってて。私じゃよくわからなくなってきちゃったから、アレン兄呼んでくるね」


 そう言ってユナは困った笑みを魔王に浮かべ、玉座の間から出て行った。

 そんな勇者の後ろ姿を見た魔王は呆気に取られた顔をするのだった。

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