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大樹を利用して作られたツリーハウス。椅子やテーブル、家具の殆どは木造で出来ていた。
木製のテーブルに対面して二人は座る。美しい女性は優雅にコーヒーとお茶菓子を用意してテーブルに広げ、対面に座るアレンは木製の椅子に黒い魔力の縄で拘束されて居た。
「なにこれ。俺、コレから拷問されるの? 話がしたいだけだったんじゃないの?」
「普通にお話するのと、拷問しながらお話しするの。どっちがいい?」
「よし、何でも聞いてくれ。あとはこの拘束を解いて普通に話をしよう」
「それはダメ。アナタ拘束解いたら逃げ出そうとするでしょ?」
「はっはっは。そんなことする訳ないじゃないか」
「それじゃあ自己紹介から始めましょうか。お互いに呼び名がわからないのは不便でしょ?」
アレンとそんな話をしながらも魔族の女は自己紹介を始める。
「私はウィズ。魔女とも呼ばれてるわ。アナタの名前は?」
「アレン」
「そう。じゃあアレン、あ~んして」
そう言ってウィズはお菓子をアレンの口に運ぼうとするがアレンはそれを拒絶する。
「食べないの?」
「何が入ってるかわからないもの食べる訳ないだろ?」
「そう」
ウィズはそう短く呟き、手に持ったお菓子を一口食べる。そして食べ掛けのお菓子を再度アレンの口元に運ぶ。
「これでいいかしら? 毒なんて入ってないわよ。それにアナタを殺す気なら、いつでも殺せると思わない?」
ウィズがアレンに対して殺意が無い事はここまでのやり取りで理解はしていた。だがそれは自分に対して何かしら求めているモノが在るから殺すことをしないだけ。今すぐ死にはしないが最終的に用済みになれば殺される可能性が高かった。
「友好の証としてクッキーの一つくらい食べてくれないと、拷問しなくちゃいけなくなるけど……」
ウィズの言葉にアレンは即座に口元に運ばれたお菓子を食べる。甘くて美味しいお菓子、特に違和感は無い普通のクッキー。本当に友好的なのかと疑問に思いながらもウィズの話を聞く。
「それじゃあ質問ね。アナタの名前は?」
「さっきも言ったろ、アレン。アレン・クロウだ」
アレンは自分が何故、ウィズに対して名前をフルネームで答えたのかと少し違和感を覚えた。
そしてウィズは別の質問をアレンに問い掛ける。
「私の何処が好き?」
「顔と胸」
「アナタ最低ね」
「そうだね」
アレンは困惑しながらも自分の違和感について考える。そして先程のお菓子に何か仕込まれていたことにすぐに気が付いた。
「で、さっきのクッキーには何を入れてたんだ?」
「あら、気が付くのが早いわね。さっきのクッキーには自白剤の薬を仕込んでおいたわ」
「なるほどね。でも俺に精神的な魔法は聞かないんじゃなかったのか?」
「魔法じゃなくて薬だもの。それに精神の支配じゃなくて、警戒心を解いて正直に話をさせるモノだから十分効果が在るわ」
「まあいいや。で、情報を全部吐いたら俺は殺されるのか?」
「ん? 私はアナタを殺す気なんてないわよ。でもそんなに死にたくないなら、何でこんな危ない場所に一人で来たのかしら?」
「俺一人での偵察なら失敗しても犠牲は最小限で済むからな」
「偵察って、魔王の偵察よね?」
「そうだ」
「つまりアナタは魔王の情報が欲しいのよね?」
「ああ」
「じゃあ魔王の情報をアナタに渡したら、アナタは魔王を殺してくれるの?」
「俺はただの偵察だ。魔王討伐は別の奴が担当する」
「それは勇者ってことよね?」
「ああ」
「それじゃあ私に何でも聞いて。アナタが知りたい魔王に関しての情報を全部教えてあげる」
ウィズは笑みを浮かべながらアレンにそんな提案するのだった。




