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昇級試験を終えて西の魔法都市から帰って来たアレンはすぐにベルディア王との内密な対談を進言した。ベルディア王はその提案をすぐに飲み込み、ベルディア城の客間で二人の対談が行われた。
「アレン、君から話がしたいとは珍しいな。何か要り様か?」
そうベルディア王がアレンに尋ねるとアレンはこう答える。
「はい、コレらをなるべく早く用意して頂けると助かります」
そう言ってアレンは書留をベルディア王に手渡した。
書留には携帯食料、ポーション類、魔除けの聖水、外套、ランタン等の冒険に必要な必需品の名目が並べられ、十人分の数量を用意するようにと書かれて居た。
「随分と多いな」
「最低限必要なモノで、出来れば一人分は急ぎで用意して欲しいです。お願いできますか?」
「すぐに用意させよう。それで話はコレだけでは無いのだろう? わざわざ二人で話したいというのだから」
「そうですね。まずは……その紙に書かれたモノが一人分用意出来たら、魔王の調査に向かおうと思って居ます」
「それならば一人分では足りぬだろう。早急に五人分の……」
「ユナ達は連れて行きません。俺一人の単独で調査を行います」
「それは……可能なのか?」
「不可能では無いといった所ですね」
「そうか……だがユナ達を連れて調査に向かう方が良いのではないか? 北の魔物の実力を測ることができ、彼女達の成長にも……」
「もしもユナ達が調査に参加して魔王に出会ったらどうなると思いますか?」
「戦闘は避けられないか……」
「此方の戦力が上ならば問題はありません。でも魔王側の戦力が上だった場合、確実に此方を殺しに来るでしょう。そうならない為にユナ達には待機して貰います」
「アレン、君はそれで良いのか? 死ぬかもしれぬのだぞ?」
「確かに死ぬ可能性は高いでしょうね。でも死ぬ為に危険を冒す訳じゃない。人類が勝つ為に、生き残る為に必要なことなんですよ」
「ならばせめて冒険者を雇い調査に行くと良い。報酬は私が用意しギルドにすぐに掛け合おう」
「それも無理ですよ。北の魔王城の調査なんて受ける死にたがりの物好きは居ませんよ」
「では国の兵士を数人王命で付けさせよう」
「こちらの数が増えれば敵にバレやすくなります。それにここの兵士達じゃ実力不足です」
「だから一人で行くというのか……」
「ええ……これが一番良い方法です」
「すまぬな、アレン。君は神に選ばれた者ではないにも関わらず。このような無理を強いてしまって……本当に申し訳ないと思って居る」
「確かに神様には選ばれなかったかもしれませんが、勇者様一行には護衛として選ばれましたからね。なら赤等級の冒険者として受けた依頼はキッチリこなさないと、折角ここまで上げた等級がまた下がっちゃいますよ」
「そうか……それは大変だな」
そんなアレンの軽口に対してベルディア王は思わず少し笑っていた。
「それと報酬についてですが」
「何が欲しい?」
「俺がもしも死んだらローラと生まれてくる子供の面倒を見て貰えますか?」
「それについてはこちらで面倒を見よう」
そう言った後ベルディア王はニヤリと笑みを浮かべて先程のアレンの軽口を返すように続ける。
「だが冒険者の報酬は依頼を成功した時に受け取るモノだろう? それならば赤等級冒険者アレン・クロウよ、其方に命ずる。北の魔王城を調査し無事に生還せよ。良いな?」
「はぁ……王様直々の王命には誰も逆らえませんね」
アレンとベルディア王はそんなやり取りをしながらも、これから先の事についての話を続けるのだった。




