35
アレン達は西の魔法都市から北に向かった山岳地帯へ足を運んでいた。
視界の先に見える幾つかの山の先端の頭上にはワイバーンが旋回している様子が見て取れる。
緑色の鎧の様な光沢の鱗を身に纏い、二足の鋭い爪と太い脚、人間の三倍は在る体躯にその巨体で空を舞う為の大きな翼を持つ ≪ワイバーン≫。
その様子を観察しながらユナ達はどうやってワイバーン討伐を成功させるか話し合いをしていた。
「見た感じ、山頂に十体程旋回して居るので、巣穴に隠れてる可能性を考慮して倍の二十は居ると考えていいでしょうね」
ミラがそう言うとリンが続けて話す。
「魔法と奇跡は射程外、近接戦闘も空を飛んでる相手には不利、かと言って巣穴に近寄ってあの数のワイバーンを敵に回すのは面倒。必要なのはワイバーン一匹の死体なんだから、はぐれた奴を探して狩る?」
リンの発言を聞いたユナが次に提案する。
「リンが教えて貰った最高位の攻撃魔法はどう?」
「アレはダメよ。まだ使ったことは無いけど、話だけ聞くと山一つ潰れるわよ」
「試し打ちはしないの?」
「地形が変わる程の魔法を安易に試し打ち出来る訳ないでしょ?」
そう二人が話していると次にミシェリーが提案する。
「では僕……私が囮になってワイバーンを引き寄せるから、引き寄せたワイバーンを皆で狩ってくれないか?」
「それなら、皆で仲良く巣穴に飛び込んで戦わない? そっちの方が訓練にもなるし、楽しそうだと思うけど?」
そんなユナの提案にリンとミラは「駄目」と否定する。
ああだ、こうだ、と作戦会議をする四人の様子を傍から見ていたローラは傍に居るアレンに問い掛ける。
「あの子達、大丈夫なの?」
「実力は問題無い。純粋な戦闘能力だけ見れば俺達よりも圧倒的に上だ」
「けど、ユナちゃんが巣穴に突っ込むとか提案してるのはダメじゃない?」
「パーティーとしては良くないが、たぶんそれをやってのける自信が在るんだろ」
「あの数のワイバーンを?」
「ユナとミシェリーの戦闘能力なら単身でワイバーンの巣穴を一掃するだけなら簡単だと思うぞ」
「勇者と聖騎士って凄いのね」
アレンとローラがそんな話をしているとユナが声を上げる。
「ねぇ!! ワイバーンが一匹はぐれたよ!! アレ、狙おう!!」
そのユナの提案にリンが困惑しながら問い掛ける。
「狙うってどうするのよ? 追いかける? どう考えたって間に合わないわよ?」
「大丈夫!! リンはエアフォース、ミラはヘブンリーウォールを私に掛けて!!」
ユナの指示に困惑しながらもリンとミラは言われるがままに身体強化の補助魔法と奇跡を唱える。
身体強化の補助魔法 ≪エアフォース≫。風属性の魔力を体に宿し、対象者を軽くし、移動速度を上げる魔法。そして身体強化の上級奇跡 ≪ヘブンリーウォール≫。対象者に光の障壁の鎧を付与し、防御力を上げる奇跡を付与した。
「ミシェリー!! あのはぐれたワイバーンの所まで飛ばして!!」
「えっ……」
「早く!!」
「わ、わかった!!」
ミシェリーは困惑しながらも大剣を構え、ユナが飛んだタイミングに合わせて、思いっきりフルスイングをしてユナを吹き飛ばした。
「あっ……」
ミシェリーの聖剣を使ってユナを目的地に飛ばすという、一度も実践したことの無い作戦は大きく的から逸れるのは必然だった。当初の予定でははぐれたワイバーンに向かってユナを飛ばすはずだったが、それは大きくズレ、山頂に飛び交うワイバーンの群れの方へとユナは吹き飛んでいくのだった。
「アンタ何してんのよ!! ミシェリー!!」
「ゴメン!! 僕も咄嗟だったんだ!!」
「とにかく行きますよ!! 二人共!! ミシェリーちゃんが前衛で戦ってください!! リンちゃんと私はお互いにカバーしながら行きますよ!!」
そう言って三人は慌てた様子でユナが飛ばされた山頂へと駆け出して行った。
アレンとローラは困惑した表情を浮かべながらも、彼女達の後を追う。




