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アレンがローラに嵌められて追放された赤等級冒険者パーティー竜の爪のメンバーは程無くして解散することになった。
剣士のアレン、重戦士のラング、弓兵のニコル、魔法使いのベル・マリー、神官のローラ。前衛後衛、バランスの取れた良いパーティーだった。
だが、その前衛職を一人追放してしまった。最初は重戦士のラングが前衛を仕切っていたが、アレンが居なくなった分も活躍しなくてはいけない為、単純に負担が倍になった。
それでも彼は赤等級の冒険者。負担が倍になっても彼は竜の爪の前衛を一人でやってのけた。
だが暫くして重戦士のラングは他のパーティーの引き抜かれた。
それをきっかけに残った三人もそれぞれ他のパーティーに入り、それぞれの冒険者稼業を続けて行くことになり、竜の爪は事実上の解散となった。
神官というだけでそれなりにパーティー需要というモノが在る。
回復の奇跡、身体強化の奇跡、それはパーティーの生存率に直結し、天性に選ばれた者しか行使できないモノなので貴重な人材だった。だから赤等級の神官であるローラはパーティーを組むのに苦労はしなかった。
赤等級の実力を持ち、神官の貴重な力を持ち、見目麗しい美貌も持ち合わせていた。
パーティーを組むのに苦労はしなかった。だがパーティーに入った後、彼女は必ず苦労していた。
意図せず男女の恋路に巻き込まれ、好きでもない男に言い寄られ、素っ気無い態度を取れば嫌われる。
意見を述べれば新参が生意気だと言われ、赤等級の神官がそんなに偉いのかと言われ、ローラが居心地の良いと思えるパーティーは何処にも見当たらなかった。
「私が全部壊しちゃったんだ……」
そんなことを呟きながらローラは酒場で葡萄酒を一人寂しく飲んでいた。
別のパーティーに入り、問題ばかりが起きることに嫌気がさしたローラはソロで活動していた。
固定のパーティーは組まず、スポット的に入ることでパーティー内のいざこざを回避し、冒険者稼業を続けて居た。
アレンが壊したくなかったモノ。それを私の我儘で壊してしまった。そして壊れてしまって初めて気が付いたその大切さ。ローラは深い溜息を吐いてから葡萄酒を煽る。
「最近のガキはすげぇよな……」
「アレはアイツらが特別なんだよ」
ローラから少し離れた席に座る二人の男の会話が聞こえて来た。
「あんなガキ共が俺達と同じ青等級なんだぜ、信じられるかよ」
「でも、ギルドは認めたんだろ? それに何か不正をしてるならそのうち痛い目に会うだろ?」
「違いないが、その為の護衛にアレン・クロウを付き添わせてるんだろ?」
「女に手を出して追放された奴だろ? 馬鹿だよな、竜の爪って銅等級に昇格するって話だったのに。勿体無いことする奴もいるもんだ」
「普通に考えればわかるもんだろうにな? 同じパーティーの女に手を出すなんてとんだ大馬鹿野郎だよ」
二人がアレンの話で笑い声を上げていると葡萄酒で火照った様子のローラが近寄って来た。
「お二人共、楽しそうですね。混ざっても良いですか?」
酒に酔った美人が二人の男と一緒に飲みたい。そんな提案を無下に断る男は居ない。
二人の男は気前良くローラに酒や食事を奢り、ローラの問い掛けた質問に全て答える。そしてローラが用済みだと判断したら男達の酒に薬を混ぜて寝かせ、裸に引ん剝いて路地裏に捨て、ローラはその場を去るのだった。




