3
王都ベルディア。歴代の勇者達が拠点とした城塞都市だ。
初代勇者発祥の地として知られ、長い年月を掛けて飛躍的に発展してきた。
その冒険者ギルドにアレンは訪れていた。
「冒険者登録できるか?」
アレンは素っ気無い態度でギルドの受付嬢に問いかける。
「こちらにお名前をお願いします」
受付嬢は何だか不機嫌な人が来たなと思いつつも自分の仕事を進める。
アレンは自分の名前を書き、それを受付嬢に渡す。
「アレンさんですね。今、認識票を用意します」
そう言うと受付嬢は近くの棚から白い認識票を取り出しアレンの名前を彫る。
「どうぞ。白の認識票です。コレはアナタの実力と評価を表しています。依頼や討伐など貢献すると評価が上がりますので……」
「ああ、わかってる。説明は大丈夫だ。白で受けられる依頼の中で一番報酬が良いのを頼む」
アレンが剥奪された認識票の色は赤。下から五番目の等級だ。この等級の依頼は巨人やドラゴンを倒すことが出来る実力者が多い。勿論、ソロではなくパーティーで倒すことができる評価だ。
それほどの実力が在るのだから駆け出しの依頼をこなすのは彼にとって訳がなかった。
だが、そんなことを知らない受付嬢はアレンに忠告する。
「申し訳ありません。駆け出しの方にはまず薬草採取の依頼をお勧めしております。そちらではダメでしょうか?」
「適当な討伐依頼は無いのか?」
「御座いますが、駆け出しの……ソロの方には荷が重いかと……」
「大丈夫だ、問題無い」
アレンがそう返答すると受付嬢は呆れた様子で溜息を吐き、真剣な眼差しをアレンに向ける。
「良いですか、アレンさん。アナタには今、何も信頼できるモノがありません。実績も人柄も実力も何もわからないんです。そんな方に無謀な依頼を任せて死なれても困ります。ですので最低限の仕事がこなせる実力を示してください」
「なら、薬草採取が出来れば討伐依頼の斡旋してくれるってことでいいのか?」
「ソロで出来る範囲の討伐依頼ならご紹介します」
今まで積み重ねて来た信用の積み重ね。それを一夜にして失ったのだと再度認識させられるアレン。
「わかった。薬草を取って来るよ」
「はい。お願いします。お気をつけて」
冒険者ギルドの受付嬢はにこやかな笑顔を向けてアレンを見送った。