28 魔族側
北に行けば行くほど瘴気は濃くなり、その最果てには城が聳え立って居た。
二代目・三代目の魔王が拠点として住んでいた魔王城。
四代目の魔王もまた、その場に降臨していた。
「……」
少女は気が付けば椅子に座りながらに目を覚ました。
視線の先には膝を付いて頭を下げる人型の魔族が二人。
その片方、身なりの良い執事服の様なスーツを着た男の魔族が口を開く。
「お目覚めになられましたか魔王様」
目が覚めた少女はきっと自分の事なのだろうと思いながらも返答する。
「おはようございます。その、ここはどこでしょうか?」
「北の最果て、魔王様の城で在られる魔王城でございます」
「そうですか……」
魔王様と呼ばれた少女は困惑しながらもそう呟く。魔王は更に質問しようと思うが、聞きたいことが在りすぎて何から聞けばいいのか迷った表情を浮かべていると、魔族の男が先に訪ねて来た。
「これからどうなさいますか? 魔王様」
これからどうするかなどと聞かれても魔王は目覚めたばかりで何も理解していなかった。だから彼女は「わかりません」と答えた。すると魔族の男は小さく「なるほど」と呟き、話を続ける。
「常に魔王様からの指示を待つのではなく、常に魔王様の事を考え、魔王様にとって最善の行動で示せと……そう仰られているのですね」
「えっ……」
「ですがその前に我々に名をお与えになっては頂けないでしょうか?」
「名前ですか?」
「はい。私は魔王の側近として生を受け、隣の者は魔王様の使用人として生を受けた魔族になります。私共に名前は無く、名前を付けて頂ければ、魔王様の所有物として死力を尽くし働かさせて頂きます」
「そうですか……」
魔王は困惑しながらも二人が望むのなら名前を付けてあげようと直感的に考えた名前を二人に与えた。
魔王の側近には「アトラ」。使用人には「メイ」と名付けた。
適当な名前を付けると二人は魔王に感謝を述べ、意気揚々とアトラは魔王に進言する。
「それでは魔王様。私目、アトラは、周辺の偵察を行って参ります。その間、何かお申しつけが在りましたら使用人のメイにご命令下さい」
そう言ってアトラは部屋を出て行った。
魔王はメイと名付けた使用人の魔族に視線を向けて話しかける。
「アナタも自由に行動して良いんですよ?」
「畏まりました、魔王様。それではお食事・お風呂・寝室の準備をすぐさま開始します」
メイがそう言うと同時に、メイの影が複数、人型を模し、メイと同じメイド姿の魔族が五人誕生した。
出現したメイド姿の魔族は魔王に一礼して部屋を出て行く。
「なんですか? アレは?」
「アレはドッペルゲンガーと申します。影と魔力を使用した我が分身でございます」
「凄いですね」
「このような下級魔族の見苦しい技を賛辞して頂けるとは……ありがたき幸せでございます」
「えっ、あっ、はい……」
魔王は困惑して居た。自分の言葉を良いように解釈する二人の魔族に。
だが、これからどうしたものかと思いながら彼女は椅子に頬杖をつく。




