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 騎士国家シェルでのトロル討伐のお陰でユナ達は無事、青等級へと昇級した。

 ここまで依頼をこなし、討伐数を稼いで昇級してきたが、ここから先は昇級試験というモノが課せられる。青等級から赤等級に昇級する為の試験。それをこなすには現状のユナ達の体力では難しいと考えたアレンは彼女達の訓練を優先することにした。


 「それでは三人で鬼ごっこをしてもらいます」


 アレンがベルディア王の庭で三人にそういうとユナ以外は否定的な表情を浮かべていた。


 「何で鬼ごっこなんてやらなきゃいけないのよ? 私達は子供じゃないのよ?」


 リンの言葉に「十分、子供だろ」とアレンは返してから、続けて言う。


 「ミラとリンの二人は圧倒的に体力不足だ。その問題を解決しない事には北への長距離移動は難しい」


 「わざわざ歩くのではなく馬車を使えばいいのではないでしょうか?」


 「北の瘴気にあてられたら、普通の馬じゃすぐに使い物にならなくなる。つまり自分の足で歩くしかないんだよ」


 「それなら、コボルト鉱山の時みたいにアレンさんが私達を抱えて移動すればいいじゃないですか?」


 「自分で歩け、何の為にお前には立派な二本の足が付いていると思ってるんだ?」


 「コレは飾りです」


 「お飾りなのは聖女の称号だけでいいんだよ。とにかく体力作りだ、いいな」


 アレンの言葉にミラとリンは不機嫌になるが、ユナは元気に声を上げて急かす。


 「早く鬼ごっこやろうよアレン兄!!」


 「俺はやらんぞ? お前達三人でやるんだよ」


 「え~何で? 一緒に鬼ごっこやろうよ? 楽しいよ?」


 「俺も情報集とか色々やらないといけないの。お前達が情報収集してくれるの?」


 「いいじゃん!! 少しだけ!!」


 コレは何言っても聞き分けの無い奴だと思いつつアレンは返答する。

  

 「わかった。少しだけだからな」


 ――上手い事、鬼を擦り付けて逃げることにしよう。


 そんなことを考えつつアレンは手を叩き鬼ごっこの説明を始める。


 「鬼はユナからスタートで制限時間は昼飯時まで。最後に鬼だった奴は罰ゲームで筋トレな」


 アレンがそう言うとリンが口を挟んできた。


 「鬼はアレンからスタートね。それなら参加するわ」


 「まあ、別にいいけど」


 アレンがそう言うとリンはニコリと笑顔を浮かべていた。

 いつも毒舌と鋭い目付きで睨む彼女がにこやかな笑みを浮かべていることに不審に思いながらも、ミラが話を進めていく。


 「はい、それじゃあアレンさんが鬼で鬼ごっこスタートです。鬼は十秒待ってから動いてくださいね~」 


 ミラの言葉を合図に鬼ごっこが始まった。三人の少女達は各々何処かへと逃げて行く。

 アレンはミラとリンが逃げる方向を確認しながら、十秒数えた後走り出した。

 まずはリンが逃げた方へと向かって走り出す。理由は何か良からぬことを考えているに違いないのでその前に捕まえようとアレンは考えた。

 リンが見えなくなった建物の角を曲がるとそこにはリンが堂々と立って居た。


 「さて、何をするつもりだ?」


 アレンの問い掛けにリンは言葉ではなく態度で示す。


 「バインド!!」


 リンが杖を構えた瞬間にアレンは反応して左右へ移動する。


 「そういうことか!! だが、甘い!!」


 バインド魔法は略式詠唱をしているとしても発動から対象を拘束するまで数秒掛かる。

 ならば発動した場所から拘束される間に移動すれば、移動先を読まれない限り問題無い。

 アレンは不規則な動きをしながらリンのバインド魔法を回避しつつ、距離を詰める。


 「貰った!!」


 「アンタの方こそ甘いのよ!! バーカ!!」 


 アレンが確実にリンの身体に触れたと思ったが、その前に彼女は大きく上へと跳躍した。

 それは常人ではありえないほどの跳躍。そして城の高い場所在るバルコニーへと着地する。


 「アレン!! 早くこっちに来なさいよ!! 少しだけなら待っててあげるわよ!!」 


 バルコニーの上からリンが勝ち誇った態度を見せていた。

 アレンはリンが身体強化の補助魔法を使ったのだろうと理解し、アレを追いかけるのは無理だと判断してミラの方へと狙いを定めることにした。


 「部屋で勉強しよ……」 


 アレンが自分のことを追いかけて来ないのがわかると、リンは少し退屈そうな表情を浮かべて城内へと入って行った。

 アレンが少し走るとミラが使用人と話している姿が見えた。とにかく最速で距離を詰めて、体に触れ、鬼を交代する。その一心でアレンは距離を詰め、手を伸ばす。だがその手は見えない障壁に遮られる。


 「あら? アレンさん。どうしたんですか?」


 「聖女様。プロテクションは卑怯じゃないですかね?」


 「聖女様何て呼ばないで下さい。聖女の称号なんてお飾りだって言ってたじゃないですか?」


 ――リンといい……ミラといい……こいつらは……


 「コレじゃ体力作りの鬼ごっこにならんだろ?」


 「では、私に触れて鬼を交代すればよろしいのでは?」


 「わかった。やってやるよ」


 アレンは腰に携えた剣を抜き、全力で透明の障壁に攻撃を与える。

 アレンの斬撃によって障壁は壊れるが、それは一枚目の障壁が壊れただけだった。

 

 「おい、コレ、何枚障壁重ねてるんだよ……」


 「五重構造になってます。勿論壊したら追加でプロテクションを唱えますので頑張ってくださいね」


 アレンは絶望の余りその場で膝を付いた。


 「誰もまともに鬼ごっこをしようとしない……」


 ミラは膝を付くアレンに対してニコニコと笑顔で話しかける。


 「ちゃんと聖杖は使ってはいけないというルールを設けておくべきでしたね」


 「普通、鬼ごっこに聖杖や杖は使わないんだよ……畜生め……」


 こうなったら残るのはユナしかいないと思い、アレンは立ち上がり、歩き始める。

 その姿を見たミラは使用人との話を再開する。


 「それじゃあ、お菓子作りを始めましょう」


 使用人はミラとアレンのやり取りに困惑しながらも「畏まりました」といって二人は城の中へと入って行った。

 アレンが城の外周を歩いているとユナと目が在った。

 そしてアレンは先程のリンとミラのやり取りから、ユナも聖剣の力を使って逃げる可能性を視野に入れゆっくりと動き出す。

 アレンが徐々に近づくのを注意しながら、ユナは聖剣を抜かずに頑張って距離を取ろうとする。

 その姿を見たアレンはある程度近寄って、話しかける。


 「なあ、ユナ。何でお前は聖剣を抜かないんだ?」


 アレンの問い掛けにユナは首を傾げて答える。


 「それはズルじゃないの?」


 その言葉にアレンは地面に膝を付いた。

 リンは魔法を使って攻撃し、逃げ。ミラは奇跡で防御を固め、身を守り。

 ユナは聖剣に頼らずに普通に鬼ごっこをして体力作りをしてくれているというのに、あの二人ときたら。アレンはユナと二人の違いに絶望的になっていると、心配そうにユナが近寄ってくる。


 「大丈夫? アレン兄?」

 

 「ユナ、話がある」


 アレンはそう言ってリンとミラの行動を全て話、ユナにとある提案をするのだった。

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