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ファラン王とミシェリーの模擬戦は城外の庭で行われることになった。
沢山の鎧姿の兵士達が二人を見守る様に大きく囲む。その中にはアレン達の姿も在った。
模擬戦が始まるまでの待ち時間。ミラはアレンに問いかけた。
「何故、模擬戦なんて提案したんですか?」
「あの場を収めるのには最適な案だろ?」
「そうですけど。アレンさんが口を出すとは驚きです」
「まあ、強くなりたいってのは男なら当然だと思うぞ。子供も大人もそこは関係無いだろ? なら手っ取り早く自分の実力を示した方がはや……」
「ミシェリーちゃんは女の子ですよ」
「いや、僕って言ってたじゃん」
「ミシェリーちゃんは僕っ娘なんです」
「なんだよ僕っ娘って。親はどういう教育してるの?」
「その親子喧嘩がこれから始まるんですよ?」
兵士達に囲まれた中で対峙する二人。ミシェリーの方に大きな剣を持った兵士がやってくる。
ミシェリーは受け取った剣を構え、唱える。
「魔装、キャリバーン!!」
次の瞬間にはミシェリーの身体は重装備の鎧で全身が覆われる。
ミシェリーの背丈程在る幅広の大剣、重装備のフルプレートメイル。
子供の背丈という点を覗けば、見た目と装備だけは立派な騎士様が姿を現した。
ミシェリーと対峙するファラン王はその様子に少し驚いた表情を浮かべる。
「聖剣を一度でも触らせたことは無かった筈だが?」
「聖騎士として先代達の伝記は学んでおります」
「熱心に学ぶことは良い事だ、方向性さえ間違って居なければな……」
ファラン王は呆れた溜息を吐きながらも審判役の兵士に「始めろ」と促す。
「これよりファラン・アルトリウス様とミシェリー・アルトリウス様の模擬戦を開始します。勝敗はどちらかが降参、または気絶及び戦闘不能となった場合、決します。それでは始め!!」
模擬戦の合図と共にミシェリーはファラン王へ向かって飛び出した。
大剣を上段から振り上げながらファラン王との距離を詰める。そんなミシェリーを目の前にしてもファラン王は身動き一つしていない。腰に携えた剣さえも抜かず。まさに無防備な状態だった。
だがそれでもミシェリーは警戒した。何か作戦が在るのだろうと思考を巡らせる。
ファラン王に対して攻撃を当てられる間合いに入ったミシェリーは剣を振り下ろす。
それでもファラン王は眉一つ動かさず微動だにしない。だからミシェリーは振り下ろした剣を寸での所で止めた。
「何故、何もしないのですか?」
「ならばお前は何故、手を止めた?」
「無抵抗の人間を斬るのは騎士道に反します」
「つまりそういうことだ」
「……?」
「お前は優しすぎる。そして正義というモノに理想を抱き過ぎだ」
立ち止まるミシェリーに対してファラン王は続ける。
「お前は無抵抗だからと言って勝てる戦いを逃した。それは愚かな行為だ」
「愚かでも、正々堂々の勝負に……」
「魔王や魔族との勝負に正々堂々なんてモノは無い。そこに在るのは純粋な殺し合いだ」
そう言ってファラン王は流れる様な剣捌きでミシェリーの手元を狙い攻撃する。
大剣を両手で掴んでいた右手に強い衝撃が走る。その痛みで怯んだ所にファラン王は休む暇なくミシェリーの胴体を蹴りつける。小さな体躯のミシェリーは後方へ吹き飛び仰向けに倒れる。
「お前の負けだミシェリー降参しろ」
倒れたミシェリーは立ち上がり何も言わず剣を構える。
「まだ、やるのか? まあいい。こい」
怒声を上げながらミシェリーは剣を振り上げるが、それに対して何もしないファラン王にまた剣を止めてしまう。
「騎士道や正道を貫くのはお前の勝手だ。だが、それを貫いた所で得られるモノは自尊心くらいだ」
攻撃を止める隙だらけのミシェリーにファラン王は再度同じ攻撃を繰り出す。
大剣の持ち手を剣で叩き、胴体を蹴って距離を取る。
純粋な強さを競う戦いではなく。どちらが非情になれるかの戦い。
ミシェリーは何も納得出来なかった。
「こんなのは模擬戦じゃない」
「そうだ、だからお前は騎士にはなれない。諦めろ」
ミシェリーは立ち上がりその場から逃げる様に駆け出した。
周囲はどよめき、ファラン王は呆れた様子で「捕まえろ」と兵士に指示を出す。
その姿を見ていたユナ達もそれを追いかける為に走り出し、アレンも呆れた溜息を吐きながらも彼女達の後を追った。




