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冒険者パーティー『竜の爪』を追放されたアレンは依頼を受けに冒険者ギルドへ足を運んでいた。
「ソロで出来そうな依頼は何かあるか?」
アレンは受付嬢に向かってそう言いながら視線を合わせると、彼女の視線が冷ややかなモノだということに気が付いた。
「アレン・クロウさん。認識票を提示していただけますか?」
認識票。その色で冒険者の腕前やギルドでの評価がどれくらいのモノなのか判断できる代物だ。
初めての場所で依頼を受ける際に実力に見合った依頼を斡旋する為に確認される。
だが、ここは顔馴染みの冒険者ギルド。更にはこの受付嬢とも顔馴染みなのだ。
だから今更認識票を確認することはおかしいと思いながらも、アレンは首にぶら下げた赤色の認識票を受付嬢に見せる。
「それをこちらにお渡しください」
そう言って受付嬢は手を前に差し伸べる。アレンは受付嬢の言う通りに認識票を首から外して手渡す。
「では、アレン・クロウさん。アナタは冒険者として、この町での活動を禁止させて頂きます」
受付嬢は詳しい説明もなく淡々とした表情でアレンにそう告げた。
「待ってくれ。何でそんなことになるんだ?」
アレンが困惑した表情を浮かべながら訪ねると受付嬢は溜息を吐いてから答える。
「女性冒険者に手を出したんですよね? それなら当然の処置ではないでしょうか?」
受付嬢の返答にアレンは大きく溜息を吐いた。
冒険者の等級は冒険者ギルドに対する貢献や周囲の評価で決まる。
強い魔物を倒したり、冒険者ギルドの依頼を数多くこなすことで貢献度は上がっていく。
それだけの実力を持っているのだから難易度の高い依頼を無事完遂してくれるだろうという評価。
そして冒険者個人の人柄も等級が上がるにつれて重要になっていく。
つまり女性冒険者に手を出す輩はお呼びではないということだ。
「何処から聞いた話か知らないが全部嘘だ。って言っても信じて貰えないんだろうな」
「はい。『竜の爪』の方々からの報告。それに被害者であるローラさんにも確認を取りました。その他の情報を精査した結果が今回の処置となります」
「この町じゃ活動できないってことは別の街なら依頼を受けれるってことだよな?」
「はい。等級は白からになりますが可能ですね」
「そうか……」
アレンは諦めた表情を浮かべ溜息と共にその場を立ち去った。