14
アレンがユナ達とパーティーを組んで七日目の朝。
アレンはユナ達と共にベルディア城の玉座の間に訪れていた。
玉座に座るベルディア王の前には緑色の長髪に眼鏡を掛けた女性の魔法使いが立って居る。
アレンは彼女が自分の後任なのだろうと思って居るとベルディア王が口を開く。
「彼女が魔法学園から来て貰った魔術師マカだ。魔法学園を首席で卒業し、魔術・魔道具・ルーン文字などの多彩な知識が在るらしい。コレから彼女にも魔王討伐の為に助力して貰うことになる」
ベルディア王がマカについて紹介すると一礼して各々に挨拶する。
「勇者ユナ様・聖女ミラ様・賢者リン様・アレン様。コレから宜しくお願いします」
「俺は今日でアンタと交代だからよろしくしなくていいぞ」
アレンがそう返答するとマカは不思議そうな顔をしていた。
すると王様は一つ咳払いをしてから続ける。
「アレンよ付いて参れ」
そう言ってベルディア王は玉座を立ち上がり何処かへと向かって行く。
アレンは王の後ろを使用人と共に付いて行くのだった。
アレンはベルディア王の後ろを付いて行き、王様の寝室へと招かれた。
ベルディア王は寝室の椅子に座るとアレンにも同席するように促す。
アレンが席に座ると使用人が二人に紅茶と茶菓子を置いて退出する。
それを確認してからベルディア王はアレンと話始める。
「さて、アレン。そなたにはコレからもユナ達と共にパーティーを組んで貰いたいと思って居る。報酬はそれ相応に国から出す。必要な物資も用意させよう。どうだ?」
アレンはベルディア王のそんな提案に驚きもせず言葉を返す。
「まあ、そういう話だとは思いましたよ。悪いけど俺はこれ以上、あいつらの面倒を見るのはごめんですよ」
「だが、断ればどうなるかはわかって居るだろう?」
「また俺は脅されるのか……」
「儂も好きでこういう事を言っている訳では無い。それほでまでに君には期待しているし、手放すには惜しい人物なのだよ」
「一国の王様にそんな事を言われるのは光栄ですが、他を当たればいいでしょ? 莫大な国からの報酬をチラつかせれば誰だって……」
「儂がそれをしないと思うか?」
ベルディア王は冒険者ギルドを通して有能な人材を集めようとしたが、それに応じたのは魔法学園の学生だけだった。
「冒険者ギルドを通し、金等級~銅等級までの冒険者に声を掛けた。だが全て断られたよ」
「だからって俺はあいつらと同じ緑等級で……」
「元赤等級の冒険者。竜の爪のアレン・クロウ」
ベルディア王はアレンの言葉を遮る様に言った。
「まあ、そうか。俺の身元位調べるよな」
ベルディア王は冒険者ギルドに対してそれなりの影響力を持っている人物だ。
冒険者を雇うのも、情報収集も、一国の王なら造作の無い事だ。
それならば自分が認識票を剥奪された理由もベルディア王は知っているはずだとアレンは思い、尋ねる。
「それなら、俺が何で認識票を剥奪されたのかも知ってるでしょ?」
「ああ、勿論だ。パーティーの女性冒険者に手を出したらしいな」
「そんな奴をパーティーに居れるのは間違いなのでは?」
「それが真実ならな」
そう言うとベルディア王は扉の方へ向かって「入りなさい」と声を出す。するとミラが部屋に入ってきた。それを確認するとベルディア王はアレンに向かって問いかける。
「アレン。そなたはパーティーの女性冒険者に手を出したのか?」
「なるほど……手は出してない」
アレンはベルディア王の問い掛けに何かを納得した様子で簡潔に答える。
ベルディア王はその言葉を聞いた後、視線をミラの方へ向けると彼女は口を開く。
「嘘はついていません」
嘘を看破する奇跡 《センスライ》。ベルディア王がアレンに対して信用出来るかどうかの確認の為、センスライを使うことが出来るミラがこの場に呼ばれたのだ。
「そなたが望むなら、冒険者ギルドに掛け合い。この件を徹底的に調査することも出来るぞ? そうすれば汚名も無くなり、等級も元通りになる」
「でも、その代わりこいつらの面倒を見る羽目になる」
「その口調ではこの提案も受け入れてはくれないのだな」
ベルディア王は少し考えてからアレンに向かって頭を下げた。
「どうか彼女達と共に戦ってはくれないだろうか」
「やめてくれ。一国の王が俺なんかに頭を下げないでくれ」
「儂が頭を下げるだけでユナ達の助けが出来るなら安いモノだ」
アレンは少しばかり考える。
この話を受けるメリットは大きい。そして断るデメリットも大きい。
そして一国の王が頭を下げてまでの頼みを断ればそれはそれで問題になる。
正直な話、逃げ場が無い。アレンは諦めた様子で一つ溜息を吐いてベルディア王に条件を出す。
「わかった。だが条件が在る」
「聞こう」
「まず俺は命を掛けてまでこいつらを守ることはしない」
ユナ達の目的は魔王討伐。最終的には魔族を相手取ることになる。
今まではゴブリンやコボルトという比較的弱い魔物を相手取っていが、敵が強くなっていくにつれてアレンにも余裕がなくなってくる。そうなった場合、ユナ達を守り切ることは難しいと判断した。
「大丈夫ですよ。即死以外は全て私の回復魔法で治療しますので」
ミラのそんな軽口を無視してアレンは続け言う。
「次に俺がこいつらと一緒に行動して俺がこいつらの足手まといになるようならパーティーを抜ける」
勇者・聖女・賢者。三人の才能はアレンには想像できない伸びしろが在るのは確かだ。
ただの冒険者のアレンが彼女達の足を引っ張ることになる可能性が十分に在った。
「大丈夫ですよ。足手まといでも攻撃を防ぐ肉盾位にはなりますから」
そんなミラの言葉にアレンは困惑した表情を浮かべて返答する。
「なぁ聖女様、お前に人の心は無いのか?」
「私は聖女なので、これは神の御心といったところでしょうか」
「それ、神様、俺に死ねって言ってるよね?」
「神は聖女だけは死ぬ気で守れと仰っております」
ミラが信仰する都合の良い神様の有り難い言葉は無視してアレンは最後の条件を提示する。
「最後に報酬に関してだが、今の所金にも装備にも困ってはない。だからそこらへんは後日、相談で」
「ふむ。よかろう。それでユナ達と共に戦ってくれるなら良い。感謝する」
こうして話がまとまった訳だが、そうなるとアレンは一つ疑問が出てくる。
ユナ達勇者一行のパーティーに正式に加入者したは良いが、本日付けて後任としてやってきたあの魔法使いの扱いはどうなるのかと。
「ところで後任の魔法使いはどうするんだ?」
「当初の予定では彼女が君の役割を全うする予定だったが、必要なら好きに使ってよい」
「好きに使えって言われてもな……」
魔法学園を首席で卒業した将来有望な若者だ。
アレンは自分よりも魔法の知識には長けていることだろうと思うが、冒険者としての実力や適性が在るかはまた別だと考えていた。
「アレンさん良かったですね。あの方を好きに使えるなんて。一体、どんなことをさせるつもりなんですか?」
アレンはミラの言葉を無視して、ベルディア王に質問を投げかける。
「そもそも、何で冒険者じゃなくて魔法学園の学生なんかを呼んだんだ?」
「優秀な冒険者を雇うことが出来なかった為の苦肉の策じゃな」
「そもそも俺以外の冒険者はなんだって王様の依頼を断るんだ?」
「なら聞くが、そなたなら今回の依頼を快く受けたいと思うか?」
ベルディア王にそう問い掛けられるとアレンは少し考えだす。
もしも自分ならこの依頼を受けない。すぐにそう判断した。
魔王の討伐の為の助力にしても無謀。クソガキ勇者達の育成も御免だ。
きっと他の冒険者達も同じ考えなのだろう。等級が高い冒険者程その難しさを理解している。
だからこそ誰も今回の依頼に名乗りを上げなかったのだろうと。




