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 コボルト討伐を終えたアレン達は無事にコボルト鉱山まで戻り野営をしていた。

 簡易のテントを借りその中で寝袋を使ってユナとリンは眠って居る。

 月明りと焚火が照らす暗闇の中でアレンはテントの近くで横になり、ミラは座って焚火を眺め、二人で夜の見張りをしていた。


 ――後三日の辛抱か……。


 アレンがユナ達の護衛として依頼を受けて四日目が終わろうとしている。

 変わりが来るまでの臨時パーティー。それなりに大変だったが、いい経験だと思いながらも目を瞑る。目を瞑り、辺りを音を頼りに警戒しているとミラが話しかけてきた。


 「見張りが寝ないでくださいね」


 「大丈夫だ。もし寝たとしてもその為の二人組だ」


 夜間の見張りはどうしても眠くなるのが人間という奴だ。

 だからもしも寝てしまった時に備えて、二人組で見張りを行うことが多い。

 お互いがお互いを監視し、話しでもして気を紛らわせ、日の出まで過ごす。


 「それにしても。見張り、変わらなくていいのか?」


 「今回も私の出番は在りませんでしたからね。見張り位しますよ」 


 「神官の出番が無い事は良い事だぞ。怪我人が出てないって事だからな」


 前回のゴブリン退治はユナが一人で終わらせ、今回のコボルト退治はユナとリンの二人が活躍していた。リンが遠距離でコボルトを攻撃し、ユナが近寄ってきたコボルトを倒していくというやり方で問題無く三十匹程討伐が出来た。死体は持ち帰らず、討伐報酬と大規模な巣の情報を鉱山に提供し銀貨百八十枚、一人当たり銀貨四十五枚の報酬となった。


 「その、一つ聞いても良いですか?」


 「なんだ?」


 「私達のパーティーを抜けた後、何処か行く当ては在るのですか?」

 

 「金は在るから南の方でゆっくり過ごすか、北に行って稼ぎの良いパーティーでも探すか、どっちにしろまだ決めてはない」


 「なら、このまま私達と一緒に行きませんか?」


 ミラの言葉にアレンは少し考えてから返事をする。


 「断る」


 「何故ですか?」


 「俺は勇者でも、聖女でも、賢者でも無い。ただの冒険者だ。魔王を倒す気も無いし、倒せるとも思っちゃいない」


 「魔王を倒すのは私達の役目です。でも、そこまでの道中を導いてくれる方が必要だと私は思います」


 「案内役(ガイド)って言っても北の最果ては殆どの人間が訪れたことの無い秘境だ。どのみち、最後までは俺は付き合えないさ」


 「では、アレンさんが行けるとこまで一緒に行きましょう」


 「嫌だよ。なんでお前らの子守りをしなきゃいけないんだ」


 「いいじゃないですか。可愛い女の子に囲まれながら、世界平和に貢献出来る素晴らしい機会ですよ?」


 「身に余る光栄なので、その機会は後任に譲るよ」


 アレンはミラとそんな話をしていると気掛かりな出来事を思い出した。


 「もうすぐ来る、俺の後任はどんな奴なんだ?」


 「優秀な魔法使いの方だと聞いています」


 「魔法使いか……」


 優秀な魔法使いというとやはり有名な冒険者なのだろう。

 自分の様な前衛職ではないが、出来ることは自分よりも多いはずだ。

 それに魔法使いなら賢者であるリンにも魔術を教えることが出来る。

 ならば良い人選なのだろうな。アレンは自分と入れ替わる後任には問題はなさそうだと思いながら、少しばかり安心する。


 「アレンさんが抜けたら前衛がユナちゃんだけになっちゃいますよ?」


 「優秀な魔法使いなら問題無く前線で戦えるだろうから大丈夫だろう」


 「でも、私やリンちゃんを守る肉壁が一枚減るのは大問題です」


 「肉壁って言った? 何で俺はそこまでしてお前らの身を守らなきゃならんのだ」


 「魔王を倒すことが出来る私達の命と冒険者一人の命。どちらの命が大切か誰だってわかります」


 「命は平等だから、どっちも大切だから」


 「アレンさんがどんなに死に掛けの致命傷を受けても、私が居れば大丈夫。たちどころに回復させてみせます」


 「死に掛けたくないんだけど」


 「私さえ生きていれば、沢山の人々を助けることが出来るのですよ? その為に、アレンさんが身を挺して私を守る。私は痛い思いをしなくて済みますし、アレンさん一人が犠牲になるだけで他の方が救われる。なんて私に優しいエコロジー」


 「なんて俺に優しくないエコロジー」


 アレンは深い溜息を一つ吐く。

 ユナは素直で性格が良いが賢くは無い。リンは賢いが口と態度が最悪だ。ミラは大人しく賢い優秀な娘などと思って居たが、どうやら違ったらしい。まあ後の事は後任の魔法使いに任せることにしよう。

 そんな事を思いながら二人は夜を過ごすのだった。

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