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 ゴブリン討伐を無事終えたアレン達の等級が一つ繰り上がった。

 駆け出しの白等級から新人の灰等級に昇級が決定した。

 昇給の手続きや認識票の準備の為に一日必要だということで今日は休暇ということになった。

 今日の休暇を無事に過ごせば後四日でガキ共とはおさらばだなどと思いながら、今日という休日をどう過ごすか部屋で悩んで居た。手持ちには金貨百枚もの大金が在るのだから日頃の自分にご褒美を……。

 

 ――旨い飯は城で出されているので十分だ。装備を整えるか? いや、装備も現状で手入れも十分だし新しいモノを買う気も起きない。ならば娼婦か? この前の件以来、余り女と関わりたくないから無しだな。さて、どうしたものか……。


 そんな風にアレンが思考を巡らせていると扉が叩かれる。


 「アレン兄、暇なら訓練しよ~う」


 無邪気な声でノックした扉が開かれ、赤髪の少女が顔を覗かせる。

 アレンはそんな彼女と視線を合わせ、特にやることが無いのでまあいいかとユナの訓練に付き合うことにした。




 ベルディア城の敷地内の空いた場所でアレンとユナは訓練用の木剣で稽古をしていた。

 ユナは大声を上げがむしゃらにアレンに向かって木剣を振るう。その足捌き、剣速は共に普通の子供がただがむしゃらに剣を振り回すだけで、とてもゴブリンを一人で七体仕留めた勇者の動きには見えなかった。


 「ほら、頑張れ」


 アレンはユナの剣を軽くあしらい、避けて見せたり、たまに反撃したりとしてみる。

 そのうち疲れたのかユナはその場に俯いて倒れる。


 「疲れた……」


 「そうか、なら休憩だ」


 アレンは視線を少し動かし、少し離れた所で訓練の様子を見ていたミラとリンに声を掛ける。


 「次はお前らの番だぞ~」


 その言葉を聞くとリンは嫌な顔をしてその場から逃げる様に立ち去り、ミラはゆっくりとこちらへ近づきユナの傍へ近寄った。ミラは俯いて倒れるユナの身体に手を当てて《リジェネレイト》と唱える。

 するとユナの身体は少し光を帯び、何らかの魔法が付与された。


 「ヒールとかではないんだな?」


 「ヒールは傷を癒す力を持っていますが、リジェネレイトは傷と疲れた体を継続的に癒してくれるんです」


 アレンは初めて見た奇跡に驚きながらもミラに質問を重ねる。


 「他にはどんな奇跡が使えるんだ?」


 「そうですね。初級・中級・上級の回復魔法・補助魔法・防御魔法といったところでしょうか」


 「それは凄いな」


 白等級の神官は最低でもヒールの奇跡を授かっている。

 その回復力は使用者の魔力によって力は変化するが大抵は裂けた傷を癒し元に戻す奇跡だ。

 アレンは前のパーティーメンバーの神官は中級の奇跡までは使えると言っていた事を思い出す。つまり目の前の彼女はそれよりも上の存在ということになる。才能だけで言えば赤等級の神官よりも上。やはり聖女というのは伊達では無いということだろう。


 「物覚えは良い方ですし、この聖杖のおかげでもありますね」


 ミラは金属製の杖に蛇が纏わりついたデザインの杖をアレンに見せる。


 「そいつも聖剣と同じモノなんだろうな」


 「はい。聖杖アスクレピオスと言われるそうですよ」


 「それを持ってるとユナみたいに強くなるってことか?」


 「勇者の聖剣とは違い、聖杖はどんな奇跡でも無限に行使することが出来るみたいです」


 「流石は聖女様だな」


 「でも、私の魔力量は無限ではないので強い奇跡を連続して発動することは難しいですよ」


 二人がそんなことを話していると俯いて倒れていたユナが体を起こしその場に座り込む。


 「ねぇ、アレン兄? 何で聖剣を使って訓練しないの?」


 「そりゃ、聖剣を持った勇者様相手に剣の訓練何て無理だからな。なら、普通に木剣を使った訓練をした方が良いだろ?」


 「でも、戦う時は聖剣を使うんだよ? 無駄じゃない?」


 「無駄では無いだろ。少なくとも聖剣を持っていない状態でも最低限戦える様になった方が良い」


 「なんで?」


 「俺がお前らと戦うならまずはその力の源の聖剣や聖杖を奪う。そうすれば俺でもお前達を簡単に殺すことが出来るからな」


 「なんでそんな酷いことするの?」


 「俺達がしているのは正々堂々の決闘試合って訳じゃない。化け物相手に使えるモノを全て使って相手を力で捻じ伏せる殺し合い。敵が強くて倒せないなら敵の弱点を突いて殺す。それが戦闘の基本だ」


 冒険者として殺し合う相手は大抵は知能の低い化け物だ。

 ゴブリンなどは多少頭を働かせて攻撃してきたりするが、そこまで知能が高い訳では無い。

 大概の魔物は目の前に人間が居るから攻撃する、強そうな相手だから逃げる、その程度だ。

 だが魔族は違う。人間と同じ様に知恵の回る者が多い。つまりアレンと同じ様な考えを持つ者も居ることになる。彼女達がこれから先、相手取るのは魔族の王なのだからその可能性を考慮するのは当然だとアレンは考えていた。


 「これから先、死にたくないなら体力は付けておいた方が良い。ピンチの時にモノを言うのは地力の差だからな」


 「うん。よくわかんない」 


 「そうですか」


 アレンは呆れた表情を浮かべながら木剣を構える。


 「んじゃ、続きだ頑張れ」


 ユナはそれに答えるかのように勢い良く立ち上がりアレンに向かって思いっきり木剣を振り回した。

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