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06.勇者一行


勇者アンディーは、仲間四人と共に魔王討伐の旅の途中、とある森の中にいた。

 大斧を持った筋肉隆々の大男と、黒いローブを身につけた小柄なメガネ男。そして小さな美少女とグラマーな美女。その四人の仲間の他に、もう一人いた仲間のことをアンディーは今も思い出す。

 幼い頃からの友人で、旅に最初からついて来てくれた優しい人物だ。色々あって今は別の道を歩んでいる。


ーージーク、大丈夫かな。


魔王軍に潜入すると意気込んでいたジークだが、その後どうなったのかアンディーは知らない。魔王軍が弱体化した様子もないが、そもそもうまく潜入できているのか。


ーー無理していないといいな。


優秀なジークのことだ。殺される事はないだろうが、無茶だけはしてほしくない。


「アンディー。敵が来たみたいよ」

「ああ。そうだな」


しかしアンディーもまた、険しい旅の途中。気を抜いていては、アンディーもやられてしまう。

 剣を構え、近寄ってくる敵を迎え撃つ準備をした。


「こんにちはぁ」


草陰から顔を出したのは妖艶な美女・カルティアだった。ゆったりした歩きが艶かしくてつい見惚れてしまう。


「っ!?お前は……魔王軍幹部!」

「カルティア!!」

「ふふ。その通りよ。私はカルティア。魔王軍の開発部局の局長で、幹部です」

「幹部がなんでこんなところに!?」

「今日は私が貴方たちの相手するわけじゃないのよ。アルギュロスちゃーん」


カルティアが後ろを振り向い手招きすると、メイド服を着たネコ耳美人が姿を現した。


「紹介しまぁす。この子は我ら魔王軍が新たに開発した戦闘キメラ第一号のアルギュロスちゃんよ」


アルギュロスは拳を構えた。アンディーたちも武器を構え、戦いに備えた。


「ふふふ。アルギュロスちゃん。手加減なしでやるのよ」

「はい。カルティア様」


アルギュロスの気迫に一向は気圧されてしまう。


「な、なんなの!?人間みたいな気配のくせに魔族の気迫そのものじゃない!」

「これまでにいなかったタイプの魔族ですね」

「ああ。さすが新しい敵って感じだな」


アルギュロスにみんなが後退りした時。

アンディーは剣をしっかりと握りしめ、アルギュロスの隙を狙っていた。


「覚悟!パパのために!」


そう言ってアルギュロスが勢いよくアンディーに突っ込んで来た。あまりの速さにアンディーは避けるのも精一杯だった。


「ちっ。かわされた!」


アルギュロスが舌打ちをした。その間にアンディーはなんとか距離をとって剣を構え直す。

 今度は遅れを取るまいと一目散にアルギュロスに剣を振るった。しかし、アルギュロスはそれさえも軽々とかわしてしまう。


「強い!」

「魔法も無しにあの強さ……あれがキメラか」


男性二人が唾を呑み込み、アンディーとの戦いの様子を見守っている。しかし女性二人はなんだか嫌な予感を感じていた。


「な、何かしら。何だか嫌な感じがしますわ」

「あたいもだよ、昔感じた事がある嫌悪感と同じ感じ」


けれどその嫌悪感の正体をうまく説明できない。二人もただただアンディーの戦いを見守るしかなかったのだ。


 そしてカルティアは恍惚の笑みを浮かべて戦いを見ていた。


〈すごぉい。あの子めちゃくちゃ強いわ〉


 開発部局長年の夢であったアルギュロス。

 正直カルティアはアルギュロスの強さについてはあまり期待していなかった。作った本人であるジークも、強く作ったつもりはないと言っていたので、下級戦闘員くらいの力があればいいとしか思っていなかった。

 しかもジークは勇者の元仲間。

 まだまだ彼を信用できていないというのも事実だ。


〈でもこれだけのキメラを作れるなら、使えるだけ使わなきゃねぇ〉


ジークのキメラ開発の力は本物だ。だがこれ程とは本人も予想していなかっただろう。


〈これからが楽しみだわ〉


アルギュロスはまだまだ試作段階。これからまた試行錯誤を重ねて、強い戦闘キメラを生み出していくだろう。


〈あら。そろそろ決着がつく頃かしら?〉


アルギュロスが強すぎたのだろう。アンディーはすでに息切れしていた。


「ふふん!大した事ないわね」

「っはぁ!はぁ!……強い……っ!」

「アンディー!」


アルギュロスはアンディーにトドメを刺そうと拳を構えた。


「ジークパパは凄いんだから」

「ジークパパ?」

「そう!私はジークパパに作ってもらったキメラ!勇者なんかに負けないわ!」


聞き慣れた名前にアンディーは目を丸くした。


「ジーク?ジークが君を作ったのか?」


勇者の仲間たちもジークという名前に動揺した。


「え。まさか……ジークさんが?」

「あいつ……」


男二人は複雑な表情を浮かべて顔を見合わせた。元仲間が作ったキメラがこんなに強い敵となって、今目の前に立ちはだかっている。

 複雑な気持ちになるのも無理はないだろう。


「ちっ。アイツ」

「マジ相変わらずキモいな」


しかし、女性二人は忌々しそうに顔を歪めた。




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