11.次回作にご期待を!
「ジークちゃぁん、調子はどう?」
「カルティア様」
ジークが課題に向かって悩んでいると、カルティアが声をかけてきた。
「アルギュロスちゃん、頑張ってるみたいよぉ?充分な戦果を上げてくれているようだしぃ、次も期待してるわぁ」
「はは。でも企画会議はかなり批判されちゃいましたよ」
「そうねえ。私は美少年キメラ良いと思ったけど?」
カルティアからの評判も良いとなると、やはり女性ウケするらしい。
「俺は変態の汚名返上したいだけなんですけどね」
「ふふふ。それで女性ウケする美少年にしたのね。ジークちゃんってば相変わらず女性に嫌われてるのねえ」
「最近はアルギュロスも冷たいです」
ジークにとって一番深刻な問題である。
「アルギュロスちゃん?彼女なら元気に鍛錬しているじゃない」
「それはよかったです。最近、アルギュロスは俺を汚物を見るような目で見てくるので全然話してなくて」
思い出したら目頭が熱くなってきた。
「あらあら」
「本当なんででしょうね」
「呪いのせいでしょう?」
カルティアの言葉に、ジークは目を丸くした。そんなジークを、カルティアはにっこりと微笑んで見ていた。
「え?俺呪いかかってるんですか」
「ええかかってるわよ。それも結構エグい呪いがね。でも私も呪いはかける専門だから解くのは難しいわよ?」
「そ、そうなんですね」
ジークは思いもよらない答えに動揺した。自分に呪いが掛かっているとは思ってもいなかった。そして残念なことに解く方法は分からないという。
「でもぉ、勇者パーティーの誰かを殺せたらその呪いを解く方法を探してあげてもいいわぁ」
ジークはカルティアをじっと見つめた。
カルティアは真意を見せない笑顔でジークを見ていた。まるでジークの反応を試しているかのような様子に、ジークはため息をつきたくなった。
ーーあーあ。絶対怪しんでるな。さすが魔王軍幹部。
「じゃあ頑張ろうかな」
「私、ジークちゃんは必ず私の期待に応えてくれるって信じてるから」
ジークの真意に気付いているのか。それともまだ疑ってる段階なのか。それは分からない。
カルティアが楽しそうに笑いながら去っていった。
その後ろ姿を見送りながら、さてどうしたものかと頭を抱えた。
「ジークさぁあぁん」
カルティアと入れ替わりでシシリアがジークのもとへやってきた。べしょべしょに涙を流しながら、資料をぐしゃぐしゃになるほど抱きしめている。
「どうしたシシリア君」
「だってぇ」
シシリアは涙を拭ってジークを見た。
「企画、失敗しちゃいましたぁ。すみませぇん。私が少年型なんて提案しちゃったからぁー!」
そう言ってついにぼろぼろと泣き出した。そんなシシリアの姿を見て、ジークはクスリと笑った。
「シシリア君。気にする必要はない」
今のジークに出来ることはキメラを作ることだ。それは、シシリアの目指すものと違うかもしれない。それでも彼女が仕事にひたむきで、真摯に向き合うのならば、それは魔王だろうと勇者だろうと同じことである。
ジークはシシリアの頭を撫でて慰めた。
「シシリア君。人間は多くの失敗を積み重ねて進化してきた。キメラもそれと同じだ」
「同じ?」
「そうだとも。失敗を悔いても仕方ない。いや、失敗は悔いる必要がない。失敗してこそ進化に繋がるのだからな。その先にあるもののためならば、いくらだって恥をかくし、失敗もする。失敗は負けではない。次のステップに進むための問題提起なのだよ」
これは、ジーク自身にも向けた決意表明だ。シシリアは涙を拭って笑顔を見せた。
「さあ、次に進もう!」
「はい!」
そして二人は再び資料と睨み合い、議論を重ねていくのだった。
了
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
短い物語ではありましたが、少しでも楽しんでもらえたら幸いです。今後加筆修正はしていくつもりですが、物語としてはここでおしまいです。
ありがとうございました。