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もしかすると俺の息子は異世界転生者なのかもしれない ~生まれて間もない息子は「ステータス」だとか「はずれ」だとか言っているし、妻は気味悪がって家を出ていってしまったし~  作者: 鏡読み
第六章 魔の領域深部へ 対話編

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第38話 それは絶望かもしれない

 ジュピテルと、ムーンレイルの兵士たちは一同に樹に向かって突撃を始めた。

 彼らの手には槍。何か魔術を付与させているのか、その穂先は炎で燃え上がっていた。


「うおおおおおお!」


 兵士たちは雄叫びに似た掛け声を上げ、ジュピテルをやや後ろに、横一列の陣形を持って大樹に突撃をする。


 だが、大樹に槍が当たるあと十歩ほどの距離に来たところで、列の端の兵士が何かの衝撃にあたったかのように吹き飛ばされた。

 

「な、なんだ!? なに――――」


 次いでその異常に気が付き、足を止めた兵士の首が飛ぶ。


「ライル、ケルトゥ! 全員足を止めるな! 絶対に止めるなぁ!」


 異常を察知したジュピテルの言葉が飛ぶ。

 その言葉は兵士たちの動揺を払い飛ばし、一歩前へと進める力のある言葉だった。


 だが、その一歩は死の世界へ踏み込む一歩だった。


 大樹から枝が高速で鋭く伸び、突撃する兵士の鎧越しに胸を貫いた。

 ジュピテルのそばの3名の兵士がそれを避けるが、それ以外は枝を抜こうともがくように一度だけ動き、槍を手放し、息絶えた。


 あと3歩の距離まで残りの兵士は詰めるが、枝はジュピテルに襲い掛かる。


「雷帝の右腕!」


 しかしいくら高速で飛び出してくる枝も、雷の速度にはかなわない。

 ジュピテルが操る紫の閃光は大樹から伸びてくる高速の枝をことごとく打ち払っていった。


「ジュピテル様!」


 先行していた兵士の一人が、突如ジュピテルへ振り向き彼女を突き倒した。


「な、なに!? あ――――」


 突き飛ばした兵士はジュピテルの後ろに現れた『影の魔物』の一撃で胸から背に、大樹の枝が背中から胸に貫かれていた。


「だ、めです……にげ……」

「あ、あぁ、いや……」


 ジュピテルはかけずるように、影の魔物の脇を抜け、雷撃を放った。

 その閃光は影の魔物を消滅させるに至ったが、胸を貫かれた兵士が赤い瘴気に取り込まれ、影の魔物と変質する。


「そんな……もうすぐそこなのに」


 ジュピテルはじりじりと後ろに下がった。

 打つ手を見つけられず、焦りと恐怖が彼女を支配していた。


 それでもジュピテルは両手を上げ、逃げ出すようなことはしなかった。

 おそらく何かが、彼女を支えているのだろう。

 その『何か』と、恐怖と焦りが拮抗し、進むもできず、戻るもできずの状態にジュピテルは陥っていた。


 そんな彼女の様子にまっさきに気が付いたのは先に進んでいた残り兵士二人だった。

 彼らはお互い頷き合いパーシル達に顔を向けた。


「冒険者殿、すまない。俺たちの姫さんを頼む!」

「おれたちが何度アタックしてもなびかない堅物な嬢ちゃんだがな!」

「アレク、カデュケ、何を言って! やめろ!!」


 彼らを意図を理解したジュピテルの悲痛の声はパーシル達にも届いた。

 二人の兵士は彼女を無視し、それぞれの槍を交差し、重ねた。


「――光よ、外法を用いてここに集え!」

「――決まりし枠を壊し、われらが望む、すべての敵をうち滅ぼさんと」

「「極光は今、爆ぜ狂い、徒花を散らすが散らすがごとく、悪逆を虚へと返せ!!」」


 魔術を詠唱した兵士たちを中心にまばゆい光が拡がっていく。

 その光が大きくなるにつれ、中心の兵士たちは痩せこけていき、己の魔術で身を焼いていた。


「あの馬鹿! あいつら最上位の魔術を、二人掛かりで無理やり起動させた!」


 パーシルの背におんぶされているヴェインは冷静にその状況を見ていた。

 やがて光が引き、パーシルが見たのは、膝を付き絶望に染まったジュピテルと、そして最上位魔術を受けたにも関わらず、生き残った5体の影の魔物、無傷の大樹の姿であった。


「そんなウソでしょ。発動条件ギリギリとはいえ、最高ランクの魔術よ!」

「何てことだ……」


 魔術の理屈を深く理解しているレインは目を見開き完全に余裕を失っていた。

 アーランドも目前に広がる結果に驚き、体が動かないでいるようだ。


――まずい、このままでは。


 こつんとパーシルの腹に石粒が当たった。


――なんだ?


 パーシルが石粒が飛んできた方向を見る。


 石粒が飛んできたその先には自分の影、そしてその向こうから樹の根が急速に、かつ静かにパーシル達に迫ってくる光景があった。


「まずい! 全員戦闘態勢! 足元に気をつけろ!!」

「何!?」

「ちょ、ちょっとまって、こっちくるの!?」

「パーシル! 下がれ!」


 パーシルはヴェインをおぶったまま、大きく一歩下がる。

 レイン、アーランドもそれに習い、大きく一歩後ろに下がった。


 彼らが先ほどまでいた空間は木の根が変化した鋭利な物で串刺しになっていた。

 彼らの判断が遅れていたら即全滅の状況であった。


「どうやら、俺たちも狙われているみたいだ。……切り抜けるためにも、あの樹を倒す」

「できるのか?」

「やるしかない。やらないと俺たちは死ぬ」

「……まじかー。ま、いいでしょう。私たち冒険者だものね」

「さすがの私もパーシルに危険手当を請求するしかないようだな」

「生きて帰ってこれたらな」


 レインとアーランドがそれぞれ、武器を構えた。

 ヴェインの体力ではすぐに息が上がりあの高速で動く枝に殺されてしまう恐れがあるとパーシルは判断し、パーシルはヴェインをおんぶし直した。


「パーシル俺に考えがある……可能性は低いし、できるかわからないけど」

「わかった。簡潔に伝えてくれ」

「ああ」


 ヴェインはパーシルらに大樹を攻撃するプランを伝えた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 誤字報告 パーシルの背におんぶされているヴェインは冷静”な状況”に状況を見ていた。 そしてその向こうから樹の根が急速に、かつ静かにパーシル達に”パーシル達に”迫ってくる光景があった。
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