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もしかすると俺の息子は異世界転生者なのかもしれない ~生まれて間もない息子は「ステータス」だとか「はずれ」だとか言っているし、妻は気味悪がって家を出ていってしまったし~  作者: 鏡読み
第六章 魔の領域深部へ 対話編

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第36話 過去の記録かもしれない

 その後一週間の準備期間を経て、パーシル達は巨木の影をめざし北上した。

 行軍は順調に進行し、三日かけて第二拠点を通過、第三拠点に到達した。


 パーシル達は一度この拠点で進行をやめ、この第三拠点を新たな拠点として改修し、休憩のため、三日ほど様子をみる事を提案した。

 20年前の調査団はこれ以上の北上をしなかったのか、道しるべとなる杭は途切れていたからだ。


 ジュピテルたちも休息は必要と判断し、パーシル達の提案を受け入れ、テントなどの設営を行い始めた。


「ん……これは……?」


 改修作業中、パーシルが朽ちたテントをどかすと、一冊の本が落ちていた。

 運よくテントがかさとなったおかげか、思いのほか保存状態はよく、ためしに開いてみると中の文字もまだ読める状態だった。


 それは王国から調査に出たメンバーの誰かが残した手記だった。


『王国からの補給が遅れ、一週間となる。

 水と塩と乾かした豆でスープを作る。連中何をやっているんだ』


『王国からの補給はまだ来ない。

 仲間のガレオが与太話を始めた。

 なんでもあの樹を切り倒したものは願いをかなえてもらえるんだと。

 くだらない冗談だと俺とジニス、マクスレンは笑った』


『ガレオがいなくなった。

 まさかとは思ったが、あいつ樹に向かったんじゃ……。

 ジニスもガレオを探すと拠点から出て行ってしまった』


『二人は帰ってこない。

 王国からの補給も来ない。

 マクスレンは体調を崩し、起き上がれなくなってしまった』


『……この手記をここに残しておく。

 俺は王国に戻り食糧を確保してくる。

 ガレオ、ジニス。もしお前たちが戻ってきて、腹いっぱいに飯が食べられない状況なら、撤退を』


 パーシルは手記を閉じた。

 20年前、何があったのかは理解した。

 以前みた調査の記録では全員が死んだことになっている。

 おそらくこの手記の持ち主も途中で力尽きてしまったのだろう。


――父親は仲間を追いかけ、樹を目指したのか。


 パーシルは北の空を見上げた。

 見上げるほど巨大な樹の影が以前よりもはっきりと見える気がする。


 こつんと背中に石が当たった。

 パーシルは何事かと振り返ると、突然『影』がパーシルのほほををかすめた。


「はラがへっタ。ひトりはイやダ、アァァァァアアアアアア”ア”ア”ア”ア”」

「お前は……!」


 パーシルが腰に掛けていた剣を抜く。

 影がそこに立っていた。

 以前見た『彼女』よりも長く大きい男の影だ。

 先ほどの手記にあったマクスレンという男の話が結び付き、パーシルは首を振ってその考えを払った。


――今は目の前の敵の対処を!


「敵襲! 影の魔物だ!」


 パーシルの掛け声を聴き、ジュピテルほか、6人の兵士たちが魔物に詰め寄った。

 彼らは槍を持ち、影の魔物を囲う。

 おそらく、影の魔物の動きを制限する狙いだろう。


「下がってください! 各員槍で敵の動きをけん制!」

 

 統率の取れた動きで、槍を突き出し、兵士たちは影の動きを封じ込める。

 その間にパーシルは指示に従い、影の魔物と間合いを離した。


 ジュピテルはパーシルが十分に下がったことを確認すると、入れ替わるように前に飛び出した。

 影の魔物はジュピテルと6人の兵士たちに取り囲まれる形になった。


「全員攻撃! 相手の射程に気を付けて!」

「サー! ヤァ!」


 規律の整った声を上げ、兵士たちが一斉に魔物を槍で突く。

 6人の兵士が放った槍は、それぞれ魔物の両足、胸、腹、脇、顔を貫いた。


「ア”――ア”ア”ア”ア”アァ!」


 ダメージがあるのか、苦しそうな叫びをあげ、影の魔物は溶けるように自身の形を変え始めた。

 その調子で、貫通した槍を抜けようとしているのか、その体はどんどん体を小さくなっていく。


「全員下がれ! 逃がしません!」


 ジュピテルの号令に合わせ、全員が槍から手を離し、大きく距離を取る。

 それを確認したジュピテルは右腕を影の魔物に伸ばした。


「雷帝の右腕!」


 とたん、紫の閃光と爆風、そして轟音が場を支配した。

 影の魔物がいた場所は強い衝撃で陥没し、影の魔物は消滅をしていた。


――なんだ、今雷を操ったのか……?


「ケガはありませんか」

「ああ、ありがとう」


 くるりと振り返ったジュピテルに、パーシルは以前彼女に抱いた疑問への答えを見た気がした。


――おそらく彼女は転生者だ。


 そうとなれば、あの雷を操る力も、幼いながらも部隊を任されていることも理解できる。


 ジュピテルはパーシルに近づくとと彼の手元に視線をやった。


「その本は?」

「さっき見つけたものだ。20年前の調査団の日記のようだった」

「お借りしてもいいですか?」

「ああ」


 パーシルはジュピテルに手記を手渡した。

 彼女はそれをぱらぱらと読み、「やはり」とぽつりとつぶやいた。


「なにか気になることでも?」

「いえ、その……もう少し調べてみたいのですが、しばらく預かっていてもいいですか?」


 先に内容を読んでいたパーシルには断る理由はなかったので、パーシルは言われるがままジュピテルに本を預けることにした。


 そして次の日。


「パーシル。ジュピテルたちがいなくなってる」

「みたいだな……」


 朝早く起きたヴェインとパーシルは、その光景を惚けながら見ていた。

 昨日立てたはずのテントは無く、ジュピテルと10人の兵士たちは姿をくらましていた。


――帰った? いや、そんな連中ではないはずだ。だとすると樹を目指したのか……。


 事前に周囲を確認していたアーランドとレインが戻ってくる。


「武器と食糧がなくなっていたわ。あたしたちの分は一応残ってたけど」

「北に向かう足跡がいくつかついていた。どうするパーシル」


 二人がもたらした情報は、ジュピテルたちが巨木へ向かったと裏付けるものだった。


 パーシルは一度考察をする。

 彼女はどうして巨木を目指すのか。


『なんでもあの樹を切り倒したものは願いをかなえてもらえるんだと』


 ふとあの手記の言葉が頭によぎった。

 だがそんなものは与太話で、皆に話すものではないとパーシルはその言葉を飲み込んだ。


――だが……父親もそこに向かっていった。


 幸い食糧もまだ余裕はある。

 もう少しこの奥へと進んでも食糧面での問題はないだろうとパーシルは判断した。


「彼女たちを追おう。おそらくあの巨木を目指しているはずだ」


 ヴェイン、アーランド、レインの三人は頷き、移動の準備を始めた。



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