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もしかすると俺の息子は異世界転生者なのかもしれない ~生まれて間もない息子は「ステータス」だとか「はずれ」だとか言っているし、妻は気味悪がって家を出ていってしまったし~  作者: 鏡読み
第六章 魔の領域深部へ 対話編

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第35話 まだ帰るわけにはいかないのかもしれない

 二週間ほど、パーシルは拠点で過ごすことになった。

 その間、レインとアーランドが用意した大量の新鮮な食糧はムーンレイルの兵士たちを十分に体力を回復させた。


 パーシルは予想よりも早い補給に驚かされたが、レインの魔術以外にもシアやクリス、馴染みにしている市場のおばちゃんや以前手伝いをした農家の老人など、様々な人の協力があったのだとアーランドから伝えられた。


「というわけだ。皆、快く協力してくれたぞ」

「これは、帰ったらちゃんと礼を言わないとな」


 パーシルはアーランドとジャガイモを洗いながら、昼の支度をしていた。

 今日の料理はジャガイモを茹で上げ、叩いてつぶす簡単なものだ。


「二人とも、ちょっとテント来て。話があるってさー」


 レインに呼ばれ、パーシルとアーランドは鍋にじゃがいもを放り込み、たき火の上に置いた。

 そして、近くの兵士に火の番を頼み、パーシル達はテントへと向かった。


 テントの中はもはや野戦病院とは無縁の状態であった。

 回復した兵士たちは順調に行動をはじめ、拠点はその機能をわずかだが取り戻し始めていた。


 ヴェインは先にジュピテルと話していた。

 何を話しているのかは聞き取れなかったが、一時期、ヴェインがしゃべらなくなってしまったことを思い出したパーシルは微笑ましい気持ちになりながら、その様子を眺めていた。


 少し話し込んでいた二人だが、ジュピテルがパーシル達に気づき、話を切り上げた。

 そして、彼女は立ちあがり、頭を下げる。


「このたびはありがとうございます。なんとお礼をいっていいのか」

「こちらこそ、整備された拠点を使わせてもらっているのでお礼はもらっているようなものだよ」

「そういっていただけると助かります」

「それで、話というのは?」


 ジュピテルが頷き、一冊の古い手帳を取り出し、パーシルに手渡した。


「ヴェインから聞きました。あなた方は20年前の調査団を追いここに来たのだと。でしたらこれがお役に立てると思います」

「これは……調査記録か?」


 その手帳にはこの近辺の調査記録だった。

 パーシルが内容をよく読むと、この周辺の地形のメモや、当時生態していた魔物の情報、そして次の拠点を目指す旨が記されている。

 情報の少ない魔の領域において、この情報はかなりの貴重なものだった。


「私たちがこの拠点に到達し、改装する段階で発見されたものです。あなた方にお譲りいたします」

「いいのか?」

「はい。……それと、私たちは明日、ここを出て次の拠点を目指そうと思います」


 「え」とヴェインが言葉を漏らした。

 パーシルも同感だった。


 体力を取り戻したとはいえ、彼らは全滅しかけたという精神的なダメージを負っている。

 そんなメンバーをつれ、行軍を進めるということはリスクが大きい。

 少なくとも、しばらく落ち着ける場所で心を休めないと、今度こそ全滅してしまうだろう。


「差し出がましいかもしれないが、それはやめておいた方がいい」


 ジュピテルは金色の髪を揺らし、頭を横に振った。


「助けてもらった恩人の言葉を蹴るようで申し訳ありません。

 ですが私たちの命令は魔の領域の調査、そしてあの大樹の破壊なのです。

 カッシェル様のためにも……やらなければならない」


 彼女の瞳に強いものを感じたパーシルはそれ以上は何も言えなかった。

 おそらくカッシェルという人物は彼女にとって大切な人物なのだろう。

 彼女の言葉の端々からパーシルはそれを読み取っていた。


「わかった」

「パーシル、いいのか? せっかく助けたというのに」

「そうよそうよ。命は基本一度きりなのよ」


 パーシルは憤る二人をとめ、考えた。

 双方のメリットになる答えは簡単にでた。


「あなたたちの行軍に俺たちも参加させてほしい」

「え? どうしてですか?」


 なぜかジュピテルは目を丸め、驚いた。

 何かおかしなことを言ったのだろうかとパーシルは首をかしげた。

 ヴェインがパーシルのところまで歩みより、袖を引っ張った。


「パーシル……また言葉が飛んでる」

「え、そうか?」

「オレたちは調査をする人員がほしい、彼女たちは俺たちの食糧があれば少なくとも安定して進軍できるって話をしたつもりだったんだろ?」

「そういうことでしたか」


 ジュピテルはくすりと笑った。


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