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もしかすると俺の息子は異世界転生者なのかもしれない ~生まれて間もない息子は「ステータス」だとか「はずれ」だとか言っているし、妻は気味悪がって家を出ていってしまったし~  作者: 鏡読み
第五章 魔の領域へ 親子編

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第33話 これは初めてのことなのかもしれない

 まず、パーシルとヴェインは拠点に残されていた食糧と調理器具をかき集めた。

 乾燥した肉、痛み始めた野菜、数人分の水が残された樽、幸いなことに、ジャガイモや小麦といった主食になりえる食材も多くはないが残っていた。


「持たせて三日とは言っていたが、本当に持たせてだな、これは」

「とにかく保管できる場所を作らないと。こういったものがほしいんだけど」


 そういってヴェインは地面に簡単な簀子のような絵をかき、その絵をもとにしたパーシルが、水が残った樽の底にもう一段床を作った。


「――去れ、熱纏うものよ!以下略!」


 ヴェインができた樽に氷結の魔術を使う。

 樽の水は瞬く間に凍り、簡易冷蔵庫となった。 


「これで、ここに食材を詰め込めば多少は持つはず」

「なるほど。簡単な冷暗所というわけか……」


 ヴェインのアイディアは悪くないとパーシルは頷いた。

 まずは食材を長期保存できる環境を用意する。

 そのための氷ダルだろう、だが、パーシルには懸念点があった。


「だが、この気温だと氷が溶けてしまわないか? 何度もかけ直すのはさすがにヴェインが持たないだろう」


 今の時期は夏場ではないが、徐々に気温が高くなってくる季節だ。

 魔術を連続使用して、ヴェインが倒れてしまっては本末転倒だとパーシルは気がかりだった。


 人間はエルフやリザードマンと違い、魔術の適正は高くない。

 魔術がそもそも『無理をすると寿命を奪う』という点からしても、他種族と比べ短命な人間は無理ができないのだ。


 いくらヴェインに魔術の才があるとしてもその点、パーシルは不安であった。


 人を助けるそれは冒険者として、人としてとても大切な考えだ。

 だが、それは自分ができる範囲でなければならない。


――もしそれを超えてしまうようなら俺が止めないとな。


「あー……それなんだけど、今回はスキルを使ってみようと思うんだ」

「どういうことだ? だってヴェインのスキルは『触れたものの温度を3℃上昇させる』というものなんだろ?」

「そう、『3℃上昇させてそれ以上の温度に上がらない』能力。つまり冷たいものに使えば冷たいまま保冷ができるはず」

「なるほどな。すごいなヴェインは」


 以前ヴェインは自分のスキルを使えない外れスキルと言っていたが、工夫し使いどころを見出したのだ。

 パーシルはそのことにヴェインの成長を感じ、軽く頭を撫でた。


「ところでそれはもう試したのか?」


 ヴェインは何か後ろ暗いことがあったのか目をそらした。


「前に一度だけ、アーランドに」

「……もしかして、竜の山を登っていたときか」

「うん、ちょっと試しに。アーランド温度変化に敏感そうだったから」

「……黙ってか?」

「……うん」

「あとで、アーランドに謝っておこうな」

「はい……」 


 少しおびえたように小さくなるヴェインに、パーシルは軽く背を叩いた。


「ヴェイン、別に、謝ることは悪いことじゃないぞ」

「パーシルがいうと説得力ある」

「……ははは」


 変な背中ばかり見せてしまったのかなとパーシルはため息をついた。

 そんなパーシルを見てヴェインは軽く笑った。


「パーシル、一週間頑張ろう」

「ああ、そうだな」


 そうして、かき集め得た食材を7日間で食べきるようにパーシル達は計画的に分けた。


 野菜と肉はスープにし、小麦は水1対1で混ぜ合わせ焼き、簡易的なパンとする。

 レモンを漬けていたはちみつをパンに塗り、レモンも細かく切り、定期的に壊血病の者たちに回していく。


 はじめの三日間は比較的動けるジュピテルの手伝いもあり順調に過ごすことができた。


 だが、四日目。いつものように樽の温度を調整していたヴェインが慌てたようにパーシルに伝えた。


「大変だパーシル! スキルがレベルアップした」

「どういうことだ?」

「接触発熱のスキルレベルが、その、突然上がって効果が変わってしまって、触った物の温度が9℃上がる」

「調整はできないのか?」

「今、氷で試したけど無理だった」

「そうか……」

「どうしよう。あと三日もあるのに……」


 うまくいかなかったことへの自責からヴェインはうなだれてしまう。

 そんなヴェインにパーシルはふと気づいたことがあった。


――ヴェインが失敗したことを自分と共有するようになった。


 以前のピクルス販売の時にはなかったことだ。

 パーシルはその信頼にこたえるために、必死に考えた。


――三日、おそらく、四日は見ておいた方がいいか。なんとかいけるか……?


「大丈夫だ。多分、なんとかなる」


 そうして、パーシルが出した内容は、四日間スープに火をかけ続けるというものだった。

 


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