表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もしかすると俺の息子は異世界転生者なのかもしれない ~生まれて間もない息子は「ステータス」だとか「はずれ」だとか言っているし、妻は気味悪がって家を出ていってしまったし~  作者: 鏡読み
第二章 異世界転生児と旅をする 登山編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/40

第12話 山登りは厳しかったかもしれない

 馬車を割安で売り飛ばし、パーシル達は竜の山へ挑戦を始めた。


 アーランドが先行し、レインが後方から周囲の観察を担当する。


 パーシルは馬車を売った金で買った防寒具と布でヴェインをくるみ、抱きかかえるように運ぶ。


 時折、この陣形を入れ替えつつ、パーシル達は三日かけ竜の山の4割ほどを登っていた。


 竜の山には殆ど植物は生えていない。

 見渡す限り岩と土。

 時折気合の入った雑草が花を咲かせ、それを食べる草食動物が集まり、さらに彼らを狙う魔獣、魔物が生存競争を繰り広げている。


 ここ三日、パーシルが観察した竜の山の評価はそのようなものだった。


「確かにここは厄介だな」

「厄介すぎる……ああ、火酒、焼き魚……ポタージュ……」


 冬に入ってはいないとはいえ、山から下りてくる風は冷たく、容赦なくパーシル達に襲いかかる。

 特にリザードマンであるアーランドは影響が強いようで、彼はうわごとのように暖かい食べ物の名前をつぶやきながら、足を進めていた。


「今日はこのあたりにしておこう」

「了解~」

「早く火を……」


 風が当たらない岩陰を見つけパーシルはそれぞれに提案をする。

 パーティからの反対は無く、全員荷物を降ろし、火を起こし、暖を取りつつ食事の支度を進めることにした。


 今日の食事は野菜を煮込んだスープだ。

 鍋に入れた野菜がぐずぐずになるまで煮込み、ヴェインの分をとりわけた後、パーシルは少し塩を入れつつ、好みの味に調整する。

 他にはレインはリンゴ、アーランドが干し肉と、各々食べたいものを串に指しつつ、火であぶり始めている。

 

「ほらヴェイン、少しでも食べておくんだ」

「……」


 パーシルはヴェインを布から解放し、スープの入った木の器とスプーンを差し出す。

 ヴェインは無言のまま手を合わせて、その後、スプーンを持ち、スープの野菜を食べていく。


「ねえねえ、気になってたんだけどさ、その手を合わせるのってなに?」

「そういえば。パーシル、なにか意味があるのか?」

「いや、俺も知らない。ヴェインそれはどういう意味があるんだ?」

「……」


――まいったな。


 おそらくレインが気を利かせてくれたのだろう、彼女は旅の間、時折、泣かず、話さず、いつもじっとしているヴェインを気にかけて話題を作ってくれる。

 ただ、ヴェインはいつもしゃべることを拒み、ただ静かにしている。


――叱るべきものなのだろうか。ただ……。


 おそらくヴェインの心境には、相当なものがのしかかっている。

 そう思うと、パーシルは悩み、そして答えが出せずにいた。


「――パーシル、レイン、構えろ」


 突然、アーランドが声を潜め、剣を取り、立ち上がった。

 パーシルはとっさに耳を立てると、さりっという砂が擦れる音が聞こえてくる。

 何かがこちらに向かってきていた。

 

「ヴェインこっちに」


 パーシルはヴェインを抱き上げ、剣を拾う。

 何者かの足音はやまない、この状況にパーシルは思考した。


――普通の獣ならば火を恐れて立ち去るはずだ。だが違うということは。


 それがこちらに向かってくるということはある程度の知性がある魔物の可能性が高い。

 火を消してやり過ごすという選択肢もあったが、相手が夜目のきく種族の場合、こちらが一方的に攻撃を受けることになる。

 この山でケガをするということは戻ることも進むこともできなくなり、状況によってはこちらの用意では対応しきれず全滅してしまう危険性をはらんでいる。


――それは避けなければならない。なら……。


 見れば、レインもナイフを取り、周囲を警戒しているようにチラチラと様子をうかがっている。


「火はそのままに。みんな、まずは死角をつぶそう」


 火を前にしパーシル達は岩に背を預けた。

 さり、さり、と足音は音は徐々に大きく、絶えず聞こえてくる。

 こちらに来るのは複数だろうか、音が徐々に増えてく様にパーシルは感じた。


 そして――、火が照らす先の夜闇から、一匹の魔物が姿を現した。

 背丈はパーシルの腰ほどの大きさ、手には木でできた棍棒を持ち、その肌は人のモノとは思えない土色をしている。

 特徴からするとゴブリンと分類するのが一番近いだろう。

 だがその魔物の頭はまるでトカゲを模したような形をし、背には出来損ないの小さな翼が生えていた。


「なんだこいつは……」

「ケェラケェラ!!」


 トカゲ頭のゴブリンはパーシル達を見定めると、笑い声をあげた。

 こちらを害する悪意が伝わってくる甲高い耳障りな笑い声。

 パーシル達は警戒を強め―――。


「違う、上!」


 パーシルの胸元から声が聞こえた。

 とっさにパーシルは上を向き、剣を突き出す。

 ブチリと皮を貫く手ごたえを感じ、パーシルは剣を戻すと、自身の剣にトカゲ頭のゴブリンがぶら下がっていた。

 飛び降りてきたゴブリンを、パーシルの剣が阻止したのだ。


「前の奴はオトリか! 上から来るぞ! レイン! アーランド!」


 レインはすぐさま手に持ったナイフを投げ、オトリ役のゴブリンの額に突き刺す。

 笑い声をあげていたトカゲ頭のゴブリンは一撃で絶命し、倒れた。


 そして、背中を預けていた岩から離れたパーシルたちは、岩の上から降りてくるトカゲ頭のゴブリンたちに武器を向けるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ