1話 「家でのひと時」
――俺は少女を家に招き入れてしまった。
溜め息を吐きながら家の電気を点け、濡れた制服から私服に着替える。
少女はどうしよう……。風呂にでも入らせるか。
「そうだ、風呂に入ってきていいぞ。温まるといい」
「ありがたくそうさせてもらうわ」
少女は風呂の方へと消えた。
俺は濡れた制服をハンガーにかけて、部屋干しする。
除湿器を点けて、俺は寛ぎながらテレビの電源を点けた。
だが、特に見たい番組がなかったため、消去。
「バスタオルはどこにあるの?」
「わっ、ちょっ、おま……」
リビングに裸の少女が現れた。
俺は深呼吸をして一度心を落ち着かせる。
そして少女にバスタオルを渡した。
「もう裸で現れるなよ」
「駄目なの?」
「駄目だ! 思春期男児の前に裸で現れるな!」
少女は風呂へと戻っていった。
俺は一先ず胸を撫で下ろし、ふと、気付いたことがあった。
「下着……どうしよう」
俺は一人暮らしをしている。
時々、母から仕送りをされることがあるのだが、その箱に間違えて送られた女性用の下着が入っていたはずだな。
俺は箱の数々を開封する。
すると、その下着は発見された。
俺は安堵の息を吐き、小さくガッツポーズをした。
だが、その安堵も束の間だった。
この下着、エッチだ。
「やべぇ……」
俺は焦りが生まれる。
まずい、もうすぐで少女が風呂から上がるのだが、着させられる下着がない。
そのためこの下着を穿かせるのか?
「何してるの?」
「うひゃぁ!!!!」
俺は叫んでいた。
そう、少女にジト目で見られていたのだ。
バスタオルで身を隠した少女は、俺の手に持っている下着を見ると、表情を明るくさせた。
「下着あるじゃない。ラッキー! 借りるわね」
「あ、ああ……」
俺は苦笑しながら少女に手渡した。
すると、少女はバスタオルを身体から取って再度裸になった。
見てはいけないという『禁忌』を、俺は目を塞ぐことにより防いだ。
そして少女は感嘆の声を漏らしていた。
「凄い、この下着可愛い……」
「そ、そうか。それならよかった……」
俺は一安心した。
「でも」と少女は俺を睨む。
「あなた、こういう卑猥な下着を女の子に穿かせる変態なのね。見損なったわ」
「変態じゃねぇ! それは母さんの趣味だ!」
「母さんの趣味……? 親子揃って変態なのね。可哀想」
「ぐふぅ……違うのに」
俺は項垂れる。
すると、少女は周囲を見渡して、
「これ借りるわね」
「ああ、別にいいけど……」
少女は俺の服を一枚取って身に纏った。
俺は欠伸をして、「じゃあ俺も風呂に入ってくる」と言った。
φ φ φ φ φ φ φ φ φ φ
「――そういえば、お互い名も知らないんだな。俺は内峰颯真って言うんだが、君は?」
少女は俺を睇視して、
「悪用しないわよね?」
「するわけないだろうがっ! いいから教えてくれ」
「ふーん……私は黒薔薇アンナ。アンナって呼んで」
「分かった。アンナ、よろしくな」
「気安く私の名前を呼ばないでほしいのだけど」
「お前が呼べって言ったんだろうが!」
するとアンナは笑い出した。
「あはは、颯真は面白いわね」
「アンナが勝手に揶揄ってるだけだろうが……」
俺はアンナを見つめる。
アンナは笑殺している。
しかしながら、俺は笑われて悪い気分はしなかった。
初めて友達みたいなものができたからかな?
「アンナ、何かありがとう」
「ありが、とう……?」
アンナは目を見開き、俺をまじまじと見つめる。
俺は不思議に思い、アンナに問いかけた。
「どうしたんだ?」
「いや、その……ありがとうなんて、始めて言われたから驚いただけ」
「そうか。もっと言ってやろうか?」
「も、もういいわ!」
アンナは恥ずかしかったのか、少し顔を赤くしている。
俺は眠気を感じ、もう睡眠をとることにした。