壁ドン。【560文字超短編】
相川さんのことが好きで好きでたまらないッ。
もう朝から晩まで考えてる。
俺のそんな気持ちを知っているのは親友の高木だけ。
「そんな好きならコクっちゃえよ」
高木が煽る。
それができるなら、こんな風に悩んでないし!
「やー、だから勢いだって。あれ、壁ドンっての? 最近流行ってるらしいし、やってみたら? お前結構かっこいいんだしよ?」
自分でいうのもなんだけど、自分の見た目はちょっと自信がある。
「こー、萌えるシーンっての? 夕方とかに呼び出して?」
俺はとうとう高木の悪魔のささやきに耳を傾けてしまった。
というか、高木が勝手に呼び出しのラブレターを相川さんの靴箱に忍ばせたのを後から知った。
そんなことされたら、後に引けないじゃないか!
糞っ高木め!
バクバクと高鳴るを気持ちをおさえながら、オレンジ色の夕日が差し込む校舎の裏に足を向けた。
そしてそこには……相川さんがもじもじしながら待っていた。
足が震える、肩があがる、俺がもし汗っかきなら多分汗だくだ。
俺は相川さんの前に立つ。
顔を上げた相川さんと目が合う。
心なしか、照れているように、みえなくもない。
夕日で赤く染まった顔がとてもきれいだ。
よ、よし、壁ドンだな!
勢いだな!?
ドンッ!
その勢いで、俺の目玉が零れ落ちた。
相川さんは気絶して倒れた。
あ……。
俺はその日、教訓を得た。
『ゾンビは壁ドンをしてはならない』