大召喚
何もない、真っ白な世界。
身体の感覚はなく、フワフワとした浮遊感のみが感じられる――まるで夢の中にいる様な、しかし意識だけはやたらハッキリとしている不思議な状態である。
『並行世界・ファンデルフォルムからの干渉がありました。
世界・アースティアの特定座標の人物に対して「大召喚」にて「世界渡航」の要請があります。
要請に応えて並行世界・ファンデルフォルムへ「世界渡航」を行いますか?』
世界の言葉が心に直接問いかけてきた。
春人は苛立ちの声を上げようとしたが、この世界では発声することができない様で何も起きなかった。
春人には確信があった。
この世界の言葉が示す並行世界とやらは、子供の頃に夢に出てきた剣と魔法の世界であることを。
自らが魔王として君臨し、忌み嫌い破壊しようと思った世界であることを。
憤怒と忌避感で心が塗りつぶされそうになるが、ゆっくりと深呼吸するかの様に心を落ち着かせる。
『要請に応えて並行世界・ファンデルフォルムへ「世界渡航」を行いますか?』
世界の言葉が再度問いかけてくる。
ちぃっ! と春人は心の中で舌打ちをして、「ノー!」と念じる。
『否認を受け付けました。回答が出揃うまで、暫しお待ちください。
現在、肯定 1/否定1/未回答 34』
しかし、その後に返された世界の言葉に、春人は「はぁ?!」と問い返した。
多数決、だと!?
想定外の展開であった。
ふざけんな。くそ!
対象が全体で36名。クラスが35名だから、ウィズ先生も含まれているのか。
てことは、最初の肯定1はウィズ先生か。
春人は冷静に分析をする。
クラスのみんな、頼む、要請を断ってくれ!
春人は必死に願う。しかし
『回答を受け付けました。
現在、肯定 2/否定1/未回答 33』
願い届かず、肯定に票が入ってしまう。
すると
『回答を受け付けました。
回答を受け付けました。
回答を受け付けました。
回答を受け付けました。
現在、肯定 6/否定1/未回答 29』
立て続けに肯定に票が入る。
そして
『回答を受け付けました。
現在、肯定 19/否定2/未回答 15
肯定が過半数に達したため、並行世界・ファンデルフォルムへの「世界渡航」を実施します』
くそぉぉぉぉぉっ!
齢15の高校1年生には、世界転移という未知の世界の好奇心に勝てなかったのだ。
真実を知る春人の心の絶叫と共に真っ白な世界が暗転し、世界は黒に塗りつぶされた。