永遠の責め苦
ざまぁ回の様な話です。
R15にしたので、グロ展開を試してみました。
そうとう残酷な表現があるので、苦手な方はこの話は読み飛ばしてください。
読み飛ばしても良い様に、次の話の前書きでこの話のあらすじを載せる予定です。
マーリンは想定していなかった光景に言葉を失っていた。
鮮血に染まる部屋と、転がる屍体。
反抗、抵抗することは不可能と判断した倉戸は迷わずにマーリンの願望を潰す選択肢を選んだのだ。
マーリンの性欲の捌け口として使おうとしていた七海を殺し、そして自らも死を選んだのだ。
沸沸と湧き上がる怒りを、しかしそれをぶつける相手はもう息を引き取っている。
「糞がーーーー!!」
ぶつけどころのない怒りを叫びとして吐き出す。
くそくそくそくそぉ!
一人の生徒によって、計画が大きく狂わされたことの怒りに我を忘れ、すぐ近くで起きていた異変に気づかない。
「う、がぁああぁーー!!」
マーリンの後ろから、獣の様な声とともに何者かが襲い掛かったのだ。
魔法によって封鎖しているこの部屋に更なる侵入者がいるとは思わなかったため、マーリンは慌てて相手に手を突き出して防御する。
ガリッ……
突き出した手に噛み付いた相手を見てマーリンは驚愕する。
それは死んだはずの七海であったのだ。
しかし、その姿は変わり果てていた。
濁った瞳、土色を通り緑色に変色した肌に、腐臭が漂う吐息。
それは死して魔物へと堕ちた姿――まさしくゾンビであった。
まさか、倉戸の使った魔法は、即死魔法ではなくゾンビ化の魔法だったのか!
しかも、命を落としたためか【聖刻】の制約が消滅している。
マーリンの手に噛み付いた七海はその口を離さない。必死に引き離そうとするがーーマーリンの手に更なる激痛が走る。
激痛と共にマーリンから離れた七海。その七海は両手両足を使い獣の様に四つん這いになってベッドに着地し、マーリンの方へ顔を向ける。
「ああ、ああぁ、ああ……」
理性の欠片も無い、正に獣、いや魔獣と化した表情。
呻き声とも笑い声とも受け取れる声を発して口が開くと、激痛の原因――噛みちぎられた右腕の小指と薬指が零れ落ちた。
「ぐおぉっ、儂の、儂の指をっ」
マーリンは激痛の走る右手を押さえながら絶叫を上げる。
しかし、まだ脅威では無い。
指は治癒魔法で繋げることもできるし、最悪は再生魔法で治すこともできる。だが、まずはゾンビ化してしまった七海を始末する必要があるのだ。
「魂を砕かれ変革されてしまった以上、元の人間に戻すことは不可能じゃ。
ならば、光魔法で『浄化』するか、火魔法で『焼き払う』しか無い。くそっ、杖を手放していたのが悔やまれる」
ベッドの端に脱ぎ捨てた外套とともに無造作に置かれている杖を確認する。杖さえあれば詠唱の短略化と効果倍増が望めるのだ。
手の痛みに集中力を欠いているため、杖なしの魔法は不安と七海に警戒しつつ杖への距離を詰める。
「ああ、ああぁああ!「あああああ」」
笑い声とも受け取れる呻き声。その声に途中から別の声が重なる。
「っ!!」
その重なった声に振り返る。
そこには首から下を自らの血に染めた倉戸の姿があった。
倉戸も七海と同じく目が濁り肌を緑に変色させたゾンビ姿であった。その右手には自らの命を絶った仕込み杖の刃が禍々しい光を放っている。
あの刃にもゾンビ化の呪術効果が付与されているのであろう。
「かん、ば、やし……ころ、す……」
倉戸の口から呻き声に混じり、殺意の言葉が混じる。
「ころ、す……」
上半身を揺らしながら、ゆっくりとベッドに近づく。
「くそっ、死んでまでも儂の邪魔するとは!」
マーリンは忌々しげに言葉を吐き出し、一気に駆ける。そして、ベッドの端においた杖に手を伸ばす。
杖さえ手にすれば二体のゾンビを浄化できる。
愚鈍なゾンビがマーリンの動きに追いつくことはできない。
五指が無事な左腕を伸ばす。
トスッ
「なっ――」
杖を手にする寸前、その手首に仕込み杖の刃が突き刺さった。
なんとゾンビ化した倉戸が投擲したのだ。
「ぐ、ぐぁあーーっ!!」
マーリンの口から絶叫が漏れる。
掴めなかった杖がベッドから落ちて、床を転がる。
そして、刃の刺さった部分から肌が緑色に変色していく。
「ま、まさか、ゾンビ化の呪いっ」
驚愕する。指を食いちぎられた右手に視線を向けると、そちらも傷の部分から肌が緑色に変色していた。
な、なんとかゾンビ化を止めなければ!
慌てるマーリンに追い討ちする様に鈍い衝撃に体勢を崩す。
襲いかかったのは七海。
本来、女性からベッドに押し倒されるのは嬉しい事だが、今はそれどころでは無い。
「ぐああっ! やめろ、やめろ」
仕込み杖の刺さった左腕の上腕部に噛みつき肉を食いちぎる。
指3本しかなくなった右手では七海を払い退けられない。
「くそっ、くそおおおおっ! やめろぉーー!」
絶叫する。
左腕が食いちぎられていく、最初は激痛であったが、鈍い痛みとなり、食い破られる感覚が伝わってくる。
食いちぎられる度に緑色に変色した部分が広がっていく。ゾンビ化が進行する度に痛みの感覚が鈍くなるが、その分、痛みによって遮断されていたその他の感覚が明確に伝わってくる。今だと腕に食らいつく歯の感覚や、千切られる筋繊維の感覚までもが知覚出来ていた。
「あああああ……」
近くから声がする。それはベッドに登り近距離まで迫った倉戸の声であった。
この状態だとゾンビ2体の攻撃を防げない……
マーリンの全身から嫌な汗が吹き出る。
倉戸は七海が食い付いている左腕に突き刺さっていた仕込み杖の刃を引き抜く。左腕は完璧にゾンビ化しているためか、血が出ない。
!!
見上げたマーリンの視線が、濁った倉戸の目が合う。
すると、ゾンビ化して理性がないはずの倉戸の口があたかも笑ったかの様に開く。
「ころ、す」
倉戸の口から言葉が漏れ、逆手に持った刃を振り上げる。
「やめ、やめろーーーーー!!!」
マーリンは必死に声を上げるが、振り上げた刃が勢いよく振り下ろされる。
ズッ
マーリンの腹に刃が刺さる。
バァーーーーッ!!
刺さった刃を一気に胸元まで掻っ捌く。
吹き出す鮮血と臓物。
「があぁああぁぁぁっ!!!!」
マーリンの悲痛な叫び声。
腕を食い破っていた七海は飛び散った臓物を見ると、そちらに狙いを変えて、堕ちた臓物を拾い口に運んだ。
ごはっ、うぇっ、な、なんだ、これは!
体から離れた臓物のはずなのに、七海が咀嚼する感覚が伝わってくる。
やめろ、やめ、やめ、や――
さらに倉戸が腹の傷に指を突っ込み、押し広げる。
「くくか、かかかかか………」
ゾンビ化した倉戸の唇が笑みの形に歪む。
な、なにをするんじゃ、これ以上は――
思っていると、倉戸はおもむろに広がった傷口に手を差し入れ、臓器を掴むと強引に引き千切り部屋中に投げ捨て出した。
それはまるで子供がおもちゃ箱の底にあるお目当の玩具を慌てて取り出すかの様に、次々と臓物が部屋中にばら撒かれる。
ごはぁ、やべろ゛ぉ゛ーーーっ!!
壁に天井に、そして床ぶつかって潰れる臓物の感覚がどんどん脳に感覚として伝わってくる。
どうして、こんな、こんな苦しみを……
なぜ、死ねない。
こんな苦しみを味わい続けるくらいならいっそ殺してくれ
「ああ、あああ……」
倉戸が嬉しそうにマーリンの目の前に臓物を差し出す。
ドクドクと動くそれは今取り出したばかりのマーリンの心臓であった。
「かん、ばやし…… おまえ、は、ゾンビと、なって、永遠に、苦しみ続けろ……」
ゾンビにしては、やけに明快な言葉がマーリンに掛けられる。
そうか、儂は呪いでゾンビになったのか。だから、死ねないのか
きゅっと胸が締め付けられる苦しみ。
それは目の前で心臓を握る動作に連動していた。
苦しい、苦しい…… もう、やめ――
グシャァ
心臓が握り潰される。
苦しみと激痛が脳内で暴れまくる。
それでも意識は飛ばず、死ねない。狂うこともできない。
助けて、くれ。
殺して、くれ。
こうして、マーリンは今まで知ることのなかった永遠の責め苦を味わい続ける事となったのだった。
テンプレ厨二病展開の、心臓握り潰しブシャーをやってみたかった(^^)




