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本性

いままでのライトな展開を覆す胸糞回です。

読み飛ばしてもいいように、次回の前書きに今回のあらすじを書きたいたいと思うので、前書き見てダメだなと思ったら読み飛ばしてください。

折角R15にしたので、胸糞エロ展開をチャレンジしてみた回です(ちゃんと数話でライトな感じに戻る予定です)


※ ギリギリを攻めたつもりでしたが、やはり運営から警告が来てしまったので、接触シーンを大幅にカットしました(2020/04/28改稿)

 間林は手に持った杖を床にトンと突く。


 すると、部屋が魔力に包まれる。


『結界』と呼ばれるものだろうか……


(結界を張る必要があるような危険なスキルは持っていないはずなのに、もしかして私が認識していないだけで、部屋の外に影響を及ぼす危険可能性があるスキルがあるのかな……)


「先生、確認したいスキルって、何、ですか?」

 不安になりながら目の前の先生に訊く。


 そんな七海の言葉に、間林はニコリと笑う。その顔は温和なものであったが、七海の感じた不安は増すばかりであった。


「ほっほっほ。

 実を言うとスキル確認っていうのは建前で、桜庭に個人的な話があって、残ってもらったんじゃ」

 一歩、間林が七海に近づく。


 嫌な予感がじわりと心の中に広がっていく。体を硬り、無意識に半歩後ろに後ずさる。


「儂は入学してからずっとお主を見てきた。

 最初は健康的な見た目に惹かれていただけじゃった。だが、お主の姿を目で追いかけ、気丈な態度の中に見え隠れする繊細な気配りと優しさに気付いた時、儂はお主に心奪われていた。

 儂はこの世界では大賢者と呼ばれ、地位も名誉も手の中にある。お主を幸せにすることが出来る。どうじゃ、儂のものになってくれぬか? 七海」

 間林が想いを告げる。


 七海にとっては、二回目となる相手からの告白。


 一度目は春人からの告白だった。

 嬉しさに涙が溢れた。


 しかし、二度目の告白は、鳥肌が立った。

 寒気、忌避感――相手が嫌いなわけではなかった。それでも、直感とも言えるべき本能が拒否する。


 そもそも、七海には春人という彼氏がいるのだ、この告白は受け入れることは出来ない。


 さらに一歩近づく間林に視線を向け、息を飲み込む。


 相手は良い返事が来ると思ったのか笑みを深くする。しかし、七海の反応はその思いと逆のものであった。


 七海は首を横に振る。


 間林はその行動の意味が分からなかったのが、表情が訝しげに歪む。


「ごめんなさい。私は先生の申し出に応えることができません」

 真っ直ぐに相手を見て、キッパリと拒絶する。


 間林の目が見開かれる。

 信じられない、といった表情だ。


「な、何故じゃ! 儂は地位も名声も持ち合わせておる。この世界で儂以上に主を幸せに出来るものはおらぬぞ!」

 間林は狼狽えつつ疑問の言葉をぶつけてくる。


「ごめなさい。私には別に好きな人がいるので……」

 七海が断りの言葉を紡ぐが、それを言い終わる前に間林が言葉を重ねる。

「好きな人が居るから何じゃ! こちらの世界にはもうその相手はいないじゃろ!」

 捲し立てるように言い、はっと気付いた顔になる。

「ま、まさか、召喚したクラスメイトにその好きな相手がいるのか」

 その結論に行き着き、間林の顔が怒りの色に染まる。


 それを見て、七海は戦慄する。もし、七海が好きな相手が春人だと知られたら、この世界で絶対的な力を持っている間林に春人が何をされるか分からない。

 春人に危害が向かうのは絶対に避けなければならない、と七海は唇をひき結んだ。


「ふん。なら仕方ないな。折角、気を遣い、最初は甘い恋愛を経験させてやろうと思ったのじゃが、プランBだ」

 先ほどまでの興奮した声と打って変わった冷たい声が間林の唇から溢れた。


 その顔には笑みが浮かんだままであったが、その性質が大きく変わっている。温和であったものから、嗜虐的なものへと。


 急な間林の変化に、七海はもう一歩後ずさる。


「[物質召喚]!」


 間林は一歩近づきながら、杖で床を叩く。

 すると間林の背後の魔法陣が輝き、大きなベッドが現れる。それは豪奢な天蓋がついたキングサイズのベッドであった。


「この部屋の魔法陣は魔物だけでなく、指定した物質も召喚出来るんじゃ」

 笑みを不気味に歪めながら間林が説明する。


「せ、先生……?」

 七海の口から不安な言葉が漏れる。


「くふふ、そういえば先程、何のスキルを確認するか聞いたよな。本当のことを教えてやるよ。これから確認するスキルは【自己再生】じゃ」

 間林はそう言葉を続けながら、杖を七海に向ける。


 ゾクリと全身に悪寒が走る。


「【自己再生】が治せるのは外傷だけじゃないのじゃ。身体の内部、そう女の()()()()()も再生可能なのじゃ。今からそれを証明しようじゃないか」

 ひひひ、と嗤い、舌舐めずりをする。


 その間林の言葉と態度に、七海は「逃げ」を選択する。


 七海は恐怖に萎縮などしない。

 弱かった自分は、子供の頃に置いてきた。

 危険を感じ取る力は昔から持っていた。今もスキル【危険察知】という形で習得している。


 七海の行動に間林は虚を突かれたのか、追ってくる気配がない。


 このまま、この部屋を脱出して、外に控えている人達に助けを求めれば、最悪の展開は免れるはず。そう思い、部屋の扉の取手に手をかけるが――


 !?


 その取手がまるで石を削り出した飾りのように全く動かない。鍵がかかっていたとしても、少しぐらいは動くはずなのに、不自然なほど動かないのだ。


「すみません! 開けてください‼︎」

 ならばと、扉を叩いて外の人に呼びかける。が、扉を叩いてもまったく音がせず、声も届いてる様子もない。

 冷静でいれさえすればどんな危機も乗り越えられる、と思っていた心が揺らぐ。

 しかし、ここで諦めてはダメだと七海は息を飲み込む。


「くふふ…… 無駄じゃよ。この部屋は儂の魔法で封鎖されておる。観念するが良い」

 後ろから間林の声がした。


 振り返ると、予想よりも早く間林がすぐそこまで迫っていた。


「せ、先生、や、やめて下さい」

 一縷の望みをかけて言うが、間林は止まる気配はない。


「ひひひ、怖がることはない。生娘では味わえなかった極上の快楽を与えてやるぞ」

 目の前まで迫った間林は、七海に向かって手を伸ばす。


「先生、ごめんなさい!」

 その言葉と共に七海は掌打を繰り出す。


 間林の顎部を下から突き上げるような一撃。どんな人間であろうと頭に衝撃を受ければ、脳が揺れ、脳震盪で意識を失う。間林が手を伸ばし七海を捕らえようと視界が狭まった瞬間を狙ったのだ。


 無防備な間林はその一撃をまともに喰らう……かに思われた、が


 全身、頭の先から足の先まで、耐え難い激痛が七海を襲う。


「あああああぁぁあぁああっ‼︎」


 雷に撃たれたような激痛に、七海は絶叫を上げる。

 数秒の衝撃の後、七海は膝から崩れ落ち、座り込む格好となった。


「おやおや、もしかしたら儂に危害を加えようとしたのかな?

 ダメじゃぞ。【聖刻】の加護を持つ者が、こちらの世界の人間に危害を加えようとすると【懲罰】が発動し、全身を激痛が走るからの」

 間林がそう説明するが、突然の激痛に放心状態の七海にはその言葉は届かない。


 そんな七海は浮遊感に放心状態から抜け出す。間林がお姫様抱っこで七海を持ち上げたのだ。


「嫌っ! 嫌ぁぁぁっ‼︎」


 七海は必死に抵抗するが、間林の腕から逃れられない。


「くふふ。そんなに抵抗したらまた【懲罰】が発動してしまうぞ。七海には生活魔法の[感度向上]が掛かっておるからな、懲罰の痛みも倍増してるはずじゃ」

 説明しつつ、間林は七海を召喚したベッドの前まで運ぶ。


「くふふふふ……」

 ベッドの前まで来ると、間林は七海を見下ろす。お姫様抱っこしてるだけでも伝わってくる若く張りのある肌とその温もり。もうすぐその全てが自分のものになると思うと興奮が抑えきれない。その口から欲望を孕んだ熱い吐息が溢れる。


「それ!」


「きゃあっ!」

 七海は急な浮遊感に悲鳴を上げた。間林によって七海の身体がベッドの上に放り投げられたのだ。


「風よ!」

 乱暴にベッドへ墜落するかと思われたが、間林の魔法によって風が七海を包み込み、ゆっくりと着地する。


「くふふ、さぁ、お楽しみの時間だ……」

 間林は身につけていた外套と杖をベッドの脇に放り投げると、履いていたブーツを脱ぎベッドへと登った。

 ベッドが間林の重みで沈み、七海の体勢が崩れる。


「また、スカートの中を見せて、誘っておるのか? くふふ、もう辛抱たまらん!」

 間林は抑えきれない欲望と共に、七海に襲い掛かった。

 七海に覆い被さるように襲い掛かった間林は、両手首を掴み拘束し、反対の手で胸元を覆っていた革の鎧を剥ぎ取った。

 先ほど風魔法で七海の落下を軽減した際に、真空の刃で鎧の留め具を破壊していたのだ。

 革の鎧の下から、見慣れたブレザーの学生服が現れる。

 間林は笑みを深めながら、その胸元に手を伸ばす。


「いや、いやぁ!

 あああああぁぁあぁああっ‼︎」


 抵抗し、咄嗟に股間を膝で蹴り上げた。

 しかし、そのダメージは七海に跳ね返り、さらに発動した【懲罰】によって更に激痛が全身を走る。


 全身をのけぞらせ、絶叫する七海。


 激痛に意識が飛びかけるが、寸前のところで激痛が治まった。


「くふふ、困った娘じゃのう。このまま抵抗を続け、【懲罰】が何度も発動すれば激痛に意識を失ってしまうかもしれんな。意識がない女を抱くのはつまらんからの。仕方ない、【聖刻】のもう一つの権能を発動させるか」

 間林は七海の顔を真っ直ぐ自分の方へ向けさせる。

 七海と間林の目が合う。


「『絶対命令』発動ーー「抵抗するな」」

 間林のその言葉と共に、七海の全身から力が抜けていく。


「くくく、これで抵抗されて【懲罰】が発動することも無くなった。ほれ、抵抗してみるが良い」

 ゆっくりと間林の顔が近づいてくる。

 顔を背けようとするが力が入らず抵抗できない。そしてーー


「んんっ!」

 唇が奪われる……


 未だ春人とすらしていなかった接吻。


 大切に取ってあった唇が最低の男に奪われたことに七海は大粒の涙をこぼした。


 ごめん、春人。私、汚されちゃった……


 涙ながらに七海は最愛の相手を思い浮かべる。七海の心を罪悪感と絶望感が満たす。


「くふふふふ、初めてのキスじゃったかの? じゃが、大人の時間はまだまだこれからじゃぞ」

 間林の手が伸びてくる。


「い、いや!」

 七海は身を捩り、何とか逃げようと必死に試みるが、身体に上手く力が入らない。

 両手両足を使いもがく様に距離を取ろうとするが、足首を掴まれ引きずり寄せられてしまう。


「たす、けて」


 心が折れそうになるのをギリギリで耐えながら言葉を零す。

 そんな涙で霞む七海の視界に、薄らと黒が滲んだ。それは春人から貰ったミサンガであった。


――万が一、身の危険が迫ったなら、それを千切ってくれ。その時はどこにいても俺が駆けつけるから――


 春人の言葉を思い出す。


 この部屋は間林の魔法によって隔離されている。もしここに助けに来れたとしてもこの世界で大賢者とまで言われた相手だ。そんな相手から七海を助け出すなんて普通に考えて不可能である。


 それでもーー


 七海には頼れるものは他になかった。


 右手のミサンガを口元に運び、グッと噛み込む。


(たすけて、春人)


 七海は右手の闇色のミサンガを引きちぎった。

読者様へお願い


運営からR18表現があると警告いだだきました。

該当と思われる箇所は全て改稿したつもりですが、

ここがまだ表現がキツいよ、こうした方がいいよ等ありましたら

感想の一言、もしくはメッセージでご指摘いただければありがたいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] やはりほのぼの茶番劇とはならず…。 主人公がちゃんとかっこいいとこを見せてくれることに期待。 2人で駆け落ち逃避行なのかな? 今後の憂いも考えてアレのアレはちょんぎっておくべき。
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